第16話 ポトル都市
現時刻は12時を過ぎたあたり、帆車の速度は想像よりも早く、ユウたちは順調に目的地に近づいていた。
ポトル都市は、ユウたちが1カ月前まで、在学していた中等魔術学園がある都市であり、ユウ達にとっては、見知った場所であった。
街の周りは高い壁に囲まれており、ユウ達は、都市に入るための手続きを済まして、壁内に入る。
都市内部は石畳の路地が延び、赤いレンガ造りの建物が立ち並び。
また、国の中心部の近くに位置する都市であることから、行商人などが出歩いており、田舎の村との違いが見受けられた。
「いやぁ〜久しぶりだな、ポトル……。もう懐かしく感じるぜ」
「そうだな……。
なぁ腹減ったし、飯食ってから行くか?」
「賛成だ。考えるなろ、腹ごしらえしねぇとな」
オレ達は学生だった頃に、よく食べていた食堂によることした。そこは低価格で、それでいてご飯の量が多いと学生御用たしの食事場である。
「やっぱ飯って言ったら、ここだよな〜! うめぇからな」
「ほんと美味しいんだけど……。オレには、ここの量がちょっと多いんだよな」
オレ達が頼んだ料理を待っていると……。
「なに、文句言ってんだい。お前たちは食べ盛りなんだから、この位の量、少ないぐらいさ」
この食堂の亭主の奥さんのビビアンさんだ。
ビビアンさんと亭主のトムさんは、先のユーフテス国から流れてきた貧しい他国民のためにと、この食堂を始めたらしい。本当に素晴らしい考えを持った人達だと思う。
「ビビアンさん、お久しぶりです」
「二人とも、元気そうでなによりだ。それにしても、お前たち……もうすぐ試験だろ。こんなとこで、道草つぶしてて、いいのかい?」
「もう、バッチシだよ」
「ほんとかい? なら、いいさ。
お前たちの頑張りは知ってるからね。ただ気の抜きすぎは駄目だよ」
「わかってる。大丈夫だって」
ノアの気の抜けた返事を聞いてビビアンは、最初は不安そうな顔したが、すぐに何かを思い出したのか微笑みを取り戻した。
「あんたが、だいじょうぶといって、失敗したことはなかったわね。なら、安心できる」
そういうと、ビビアンはゆっくりと厨房の方に戻っていた。
「ビビアンさんは変わんねぇな……。
それで、この後どうするよ? 結局、ユウは何が知りたいんだ?」
「オレは……ただ昨日の朝、何が起こったのか解ればいいんだ。
いや最悪、そこまでの贅沢は言わない。現場を直接見れたら、もう満足だ」
「なるほど。……今更なんだけどさ、それぐらいなら、ユリ姐に聞けばよかったんじゃないのか?」
「確かに、そう思うだろう。けど……」
「なんだよ。秘密だって、教えてくれなかったのか?」
どうしたものか……。国の調査内容なら、そのうち告知されるだろうし、昨日は口止めされなかった。それに何も起こってなかった訳だ。逆ならまだしも、教えても問題ないだろう。
「いや違う。実は姉さん曰く、音の現場には何かが起こった痕跡もなかったし、何も残されていなかったらしいんだ」
「は〜ん、なるほど。何も起きた形跡がなかったねぇ……。ユリ姐が解らないもんが、俺達に解る筈もないと思うが、興味はあるな。
……だったら、とりあえず街の人に聞き込みしてから見に行くか?」
「それもいいけど、あまり意味はないんじゃないか?」
「まぁ、街から少し離れているしな。けど、聞いてみる価値はあるだろ。
あぁ! まず、ビビアンさん聞いてみようぜ」
「うん? 任せるよ」
「ビビアンさん〜! ちょっといいですか?」
笑顔で手を振り、呼ぶノアに、ビビアンさんは、料理の手を止めて厨房から出てきてくれた。
「はい、はい。料理の追加かい?
なら、接客に言っておくれよ」
ビビアンさんはバイトさんを指していった。
「いや、注文じゃないんだ。聞きたいことがあってさ」
「聞きたいこと? ……いいけど。いまキッチン、私ひとりなんだ、手短に頼むよ」
大抵はご主人と一緒だったが、買い出しにでも行っているのか、ビビアンさんが一人で厨房を回していた。
「ありがとう。実はオレ達、昨日のスゴイ音について調べてるんだ」
「スゴイ音?」
「ホラ、この都市の東の方角からさ」
「……あっ! あ〜あったね、そういえば。
けど、なにも起こってなかったって、市長さんが言っていたよ」
「そうなんですか?」
「あぁね。確かに耳が痛くなるほどの音だったけど、街には実害はなかったから、すっかり忘れていたわ」
「なるほど……。ありがとうございます、参考になりました」
「そうかい、よかった。また何かあったら、いつでも聞いてちょうだいね」
「はい、お願いします」
そそくさと、ビビアンさんは厨房に戻っていった。
「あの感じだと、他の住民も市長からの情報だよりかもな」
「ふ〜ん……なら、やっぱり他の人に聞くにしてもまず、実際の現場を見てからにするか?」
「そうだな」
そう決めたオレたちは、食事を手早く済ませると、代金を払い店を出た。そして、都市の東門から、帆車で全速力で目的地に向かったのであった。




