第15話 魔道具
オレの家は村外れの湖の縁に立っており、ノアの家は真逆にあるため、行くのに少し時間がかかる。
そして、ノアの親父さんは、魔術式工具や道具、魔術式武具などを作る村の匠人だ。
ノアのあの口ぶりだ。もしかしたら、新たな乗り物を用意していてくれるのかもしれない。
でも、それで新たなボードが出てきたら、終わりだな……もう一度、木片に変えるだけだ。
そんな期待と不安を胸に、ノアの家につくと、家の横にある大きな作業所から物音が聞こてきた。
中を覗くとノアの親父さんは仕事中で、魔術工具の使用テストをしているところだった。
ノアは躊躇なく、そのピリピリとした仕事の現場に押し入る。
「オヤジぃ〜。あれ貸してくれ〜!」
親父さんはオレ達の存在に気づいたのか、持っていた工具を置き、突然の来客を確認した。
「なんだぁ、ノア。もう帰ってきたのか?
ん? 隣のお前さんはもしかして……」
「おじさん、久しぶりです」
「おぉ〜! やっぱり、ユウじゃねぇか。数年ぶりで、一瞬誰だかわからんかったぞ。成長したなぁ〜」
「おやじ、そういうのいいから、オレたち急いでるんだ。アレ出してくれ。あれ!」
「なんだぁさっきから。アレじゃわからんぞ」
「俺も名前が出ないんだよ。あの二人乗りできる車輪がついてるやつだ」
親父さんは少し考えたが、その特徴から閃いたようだ。
「なにぃ!? まさか、帆車のことをいってるのか?」
「そうだ! そう、それ!!」
「別に貸すのはいいがなぁ。あんな、ガラクタ、何に使うんだ」
「いやさ、ユウのボードが壊れちゃって、これから、どうしても行きたいところがあるから、足としてさ」
「ん? だったら新……いや、まぁわかった。ただ、あいつは、かなり年季もんよぉ。整備する必要があるから、ちょっと待ってろ」
「恩に切るぜ、オヤジぃ〜」
「ありがとうございます。お仕事中なのに迷惑かけてしまって」
「いいってことよ〜。だがな、見られてたら集中できねぇから、外出てろ」
そういうと、親父さんは作業場の奥の方に行ってしまった。
「オヤジも、あぁ言ってるし、家の中で待ってようぜ」
そうしてオレたちが、簡単なボードゲームをしながら、家の中で待つこと30分、外から親父さんが完成を伝える声がした。
外に出ると木製で大きな帆と車輪がついた細長い三輪車が準備されていた。
「名前の通りで、まさに帆車ですね……」
「いやぁ〜、流石親父、仕事が早い!」
「うるせぇやい、おめぇに褒められても嬉しくねぇ」
そう言いつつも、少し嬉しそうにしている気がした。二人はいい親子関係だ。
親父さんは一度咳払いし、場をならすと。
「一応な、動作確認は済んでるが、こんな古いもん、いつ壊れてもおかしくねぇからよぉ。どこ行くのか知らんが、気をつけて乗れよ」
「わかってる。最悪、今日もてばいいからさ」
この車も魔術式を元に走るらしいが、古い物なら、 式が劣化していたり、旧式に基づいているかも、魔力の燃費が気になるところだ。
「よっしゃ~、一番乗り!」
オレ達はさっそく乗り込む。座椅子にはクッションがあり、外観の印象よりは頑丈で、案外、乗り心地はよかった。
「操作の仕方、知ってるのか?」
「まぁ、任せろって。昔に何回か乗ったことがある」
数回乗ったことがあるだけで、ノアのこの自信が逆に不安を煽る。
「じゃあ、出発するから、しっかり捕まっとけよ」
「わ、わかった」
魔術式の展開と同時に猛烈な風が帆を膨らまし、車は勢いよく発進した。
先程の不安など消えるほどに。帆車の風に乗り、地を走る爽快感は、まさに最高であった。
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アイナの家の時計は11時半をさしており、勉強会の約束の時間を1時間を越えたところであった。
「今日はノアが遅いね。もしかして、休み?」
アイナは時計の時刻を見て、確信する。
「これは、あれね。ミイラとりがミイラになったようね」
「えっ? アイナ、何の話してるの?」
アイナは持ち合わせている情報から、推理をしていく。
「朝、ノアから連絡があったの。これから、『ユウを迎えに行くから遅れるかも』って。
ユウは休みだって、伝えようと思ったんだけど、さっさと式解いちゃってたから、言えなかったのよ」
「連絡って、通信器で?」
ノアは通信魔術(応用中級魔術程度)を実家で作った魔術道具で行い、アイナは脳内過程魔術(鉱石過程魔術と対)として使用した。
通信魔術はノアの親父さんが発明した魔術であり、幼馴染5人とほか数人しか、その存在をしらない、
「えぇ、そして……その連絡が8時過ぎ。ノアがユウの家に寄ってからこちらに来るだけにしては、時間がかかりすぎているし、もし個人的な練習がユウの目的なら、ノアが残る理由がないでしょう」
捲し立てるようにアイナは続ける。
「まぁ、これらから考えるに、ユウは本当は今日、音の場所に行く予定で、それにノアが便乗したんでしょ」
「えぇ〜! ずるい。私も行きたかったのに……。
そうだ! だったら今から、私たちもいく?」
アミーは名案を閃いたよう、得意げに言った。
「そんな余裕ないでしょ?」
「はい。わかってます〜。言ってみただけで〜す」
そう冷たく、そして軽くあしらわれると、アミーはこれ以上の駄々は意味がないと悟り、ふくれっ面で、静かに勉強を再開した。




