第97話 試合準備
魔術大会、3週間前の放課後。俺たちは大会運営委員会受付を訪れていた。当然、大会に出場するためだ。
「はい……。これで出場手続きは終了です。せいぜいの活躍を期待しております。ユウ様に、エリカ様……」
委員の男は無愛想に皮肉めいていたが、しぶしぶ提出書類を受け取り印を押した。
そして、今この瞬間………。大会管理委員から承諾を得たので、正式に俺とエリカの前座試合への出場届けが受理された。
「よかったぁ〜」
マナは安堵のため息をついた。
「そうね……ここまで苦労した意味がわからないけどね。でも、オリビア先生には感謝しないと……」
「先生とは限らないだろ? 一応、匿名での推薦な訳だし……」
「わかってる、もう詮索はしないわ」
「あぁ、その方がいいんだ、きっと」
念願だった出場券を手に入れたのに、俺達は喜びきれていなかった。
勿論、貴重な出場枠に入れて嬉しいのだが……。嬉しさよりも、安堵の方が大きいため、今ひとつ喜び損ねてしまっていたのだ。
あの日、試合に出ると決めてからすぐに、試合出場願いの提出のために、魔術大会を運営している大会委員会を訪れた。
しかし当初は受付係に、普通科の生徒に参加権はないと、門前払いされたのだ。
いや、分かってはいたんだ。エヴァも言っていたから、そういった差別的な風潮や、参加枠が貴重なことは……。でも、彼らの態度はあからさま過ぎた。
当然、俺たちは書類に記載されてる参加要項を示して、猛烈に反論した。
でも、委員会の下っ端達は、普通科の生徒には無理だの一点張りで。
結局、その日は追い返されることとなった。
それでも、諦めなかった俺たちが大会責任者に直談判する作戦を立てていたのが2日前。
そして昨日、それを実行しようとした直前に朗報が入った。
救いの手が差し伸べられたのだ。どこから耳に入れたのか、なんと俺達の大会参加を後押しする声が、複数あったというのだ。
誰かは明かされなかったが、想像は容易についた。オリビア先生か、クロード先生かもしれない。もしくは、ララ生徒会長の可能性もある。いや、全員かも……。
でも、誰かは特定できなかった。
というか、無理にする必要はないと決めた。気にはなったが……途中で探すのをやめたのだ。
一番可能性があったオリビア先生に聞いても、違うと言ってきたのが決定的で。
それは、つまり表沙汰には言えない事。やはり暗黙の了解で、普通科の生徒が参加することは禁じられていたのかもしれない。
なら推薦者の立場を考えると、無理に詮索するのは、迷惑になるからな。
「まぁ、とにかく出場はできるんだし。今は試合に集中しましょ」
「そうだな……。勝つぞ、エリカ」
「えぇ、目にものみせてやるわ」
出場するまで色々とゴタゴタはあったが、試合まで3週間で俺達は勝つための準備を着々と進めていったのだ。




