第9話 馴染みの仲間たち③
訓練所に着くと、本人の性格をそのまま表したように元気な赤髪が目立つ『ノア』と、落ち着いた緑髪が特徴の『ルイ』が対峙しているのが見えた。
彼らは丁度、実戦訓練を再開するタイミングのようだ。
たしか……ノアは近接戦闘を得意とし、ルイは遠距離戦闘を得意としていた。
この二人の戦闘、いつもなら……。
「休憩おわり! それじゃあ、はじめっか」
「とっくに準備はできている……かかってこい」
「じゃ遠慮なく、いかせてもらうぜ!」
戦闘開始前の独特な張り詰めた空気の中、先に動いたのは、ノアの方であった。
ノアは、自身の持つ短双剣に炎を宿し、瞬く間に二人の距離を詰め、攻撃モーションに入った。
双剣を振りかぶり、ルイが双剣の間合いに入る前に剣を振る。瞬間、剣が纏っている炎は激しく燃え拡がり、炎刃の間合いを伸ばし斬りつけた。
ルイは炎刃の一撃を後ろに下がりながら、身を捩らせ紙一重でかわすと、手裏剣の様な暗器を数十個ほど取り出し、手首をしならせ投げた。
それはルイが得意とする風魔術と物体操作の二重支配によるもの。暗器は空を変幻自在に飛び、追撃に入っているノアを一斉に襲った。
ノアは火炎を、辺りが火で包まれるほど激しく放出し、噴射を利用したさらなる加速で、放たれた暗器を避け、炎剣による連撃を仕掛けた。
ルイは炎刃による間合いが読みづらい斬撃を、後退と仕込み剣により逸らし、ギリギリ避けると、連撃の一瞬の隙をつき、さらに暗器を投げつけた。
俯瞰的に見るとわかるが……好戦的に前に攻めていたノアは気づいていない、既にルイの罠にはまっていることに。
そして、ノアが気づいた頃には、最初に投擲した暗器も合わせた全方位からの射撃が行なわれていた。ルイは、先程わざと前方に逃げ道を作り、ノアを誘導していたのだ。
咄嗟の出来事で、避けることができなくなっていたノアは、下手したら森を焼き払ってしまう程の、出鱈目な高出力な火炎(中級魔術以上)を全方位に放出し、難を逃れた。
今のノア、素晴らしい反射神経と発動速度だった。でも……どうやら勝負は着いたらしい。
「いや〜、俺のまけだな」
ノアはその場にへたり込み、悔しそうに嘆いた。
「先週も言っただろ、無闇やたらに突撃せず、考える時間を作れと」
決着が着いた理由は、ノアが最後の手が、今の魔力を使い切るほどの物だったためだ。
魔力は魔術の源であり、一部を除いて、地球上に住む、生きとし生きる全ての生物が持っている生命エネルギーだ。
人間が持てる魔力の上限に個人差は殆どない。魔力は使っても、暫くすれば自然回復する。そして、回復速度においても個人差はない、全員同じだ。
しかし上限があるということは、魔力管理が戦闘においては、重要となってくる。
だから、必然的に魔術を使った戦闘においては、魔力消費を補うため、基本的に魔術武器(魔鉱石を装備したもの)を用いる者が多い。未熟な学生である者は特にそうだ……。魔力の消費が激しい広範囲な魔術を避ける傾向がある。 まぁ先生によれば、上級魔術以上は消費が少ない上に高火力らしいが、使えない者からしたら、無縁の話だ。
でも、何度見ても思う……。やはり二人の実力も、また学生の中では群を抜いている。
細かな技術や戦術においては、まだまだかもしれないが、学生の段階で彼らは身体強化魔術と応用初級・中級魔術の『同時演算』を可能としている。
この時点で二人も本番で実力を出せれば、上級科への合格は難しくないだろうと先生が言っていた。
残念ながらオレというか、ユウは魔術の同時演算を苦手としているため、尖った応用中級魔術で受験する訳だが……。
「それより、ユウいるんだろ
もう出てきていいぞ」
なんだ、バレていたのか。隠れている理由もなかったのだが、何となく身を潜めていた。
オレは観念して物陰から出る。
「ちょうど、戦闘前だったから邪魔しちゃ悪いと思ってな」
「そんな変な気をつかわなくて、いいのによ〜。
でっ! どう見た?」
ノアは第三者の率直な意見が欲しいらしい。なら、ハッキリと思ったことを言ってやるか。
「そうだな。オレもルイと同じ意見かな、完全に罠にはまっていたように見えたよ」
「かぁー! やっぱり、そうか〜。『考える』を意識したつもりだったんだけどなぁー」
凹んだ顔で、ノアは天を仰ぐように、寝込んでしまった。
こういった場合は、駄目な所だけを指摘するのはよろしくない。良い所も具体的に押し出した方が、成長に繋がるよな。
「だけど……炎刃での連撃の精度は先週からの反省を活かして磨きがかかっていたんじゃないか」
たしか先週の訓練で、そんな事を話していた記憶があったため、言ってみたが正解だったか?
「へへ、それも意識してたからな。流石ユウ、よく観てるぜ」
どうやら、この反応は嘘ではないし、記憶に間違いもなかったようだ。




