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 予想通りそこには地下に続く扉のようなものが現れる。


 しゃがんで扉をみると、取手の部分には血痕のようなものがこびりついていた。


「穏やかじゃない。随分と乱暴にエルナムは押し込まれたようだ」


 呟いて俺は扉を開くと、のどかな村には似つかわしくない湿った石造の階段が姿を現す。


 階段の先は暗く、部屋から差し込む光はぽっかりと口を広げた大穴に飲み込まれ、先まで見通すことはできない。


「……降りるしかないか」


 そう観念をしつつ、腰に下げたランタンに明かりを灯して地下へと降りてみる。


 カツン カツン、と階段に響く靴音は迷宮を歩いている時に近い。


 肌に張り付くペタペタとした感覚は、濃度の濃い魔力が溜まっている証であり、魔力の感覚はこの先に何かおかしな物があると言うことの証左でもある。


 不意に、足元から伝わる感覚が変わる。


 硬い石から柔らかい植物の束のような……。


 足元を照らすと、足元に床一面の藁。


「嫌な予感は的中か」


 ため息と同時に俺はランタンを高く掲げると、部屋の中央に巨大な人形の影がゆらめく。


 森の小屋で見た巨大な藁人形が、堂々とこちらを見下ろしていた。


 周りを見回してみると、そこには不自然な状態で地下だというのに木が生えている。


 ローブや、帽子、鞄などを見に纏っているところを見るに、元々は人間なのだろう。


 床を調べると、足元にはこれ見よがしに松明と火打石が転がっている。


「成る程な……セルゲイの時と同じということか。この暗がりだ。放り込まれた人間が、この松明を見つければ自然と火をつける、そうなった瞬間……」


 儀式が完成し、ここに祀られている何かが牙を向く。


「……念のため、火によらない灯りを用意して正解だったな」


 ほっと息をつき、ランタンの戸口を開ける。


 と、ランタンの中で飼っていた茜蛍が外へと飛び出し、部屋の中をうっすらとした光で満たしてくれる。


「どうやら、木が生えている意外は森の小屋とほとんど…………いや、違うか」


 ほとんど変わらない、そう言いかけたところで部屋の隅にいるそれを見つける。


「……………」


 部屋の隅、藁人形から一番離れた場所に一人のローブ姿の少女が立ち尽くしている。


 見るとそこに立っていたのは、セルゲイのパーティーを離れ先に戻ったはずのリタであった。


 耳を傾けると、何かぶつぶつと呟いている。


「おい……無事か?」


 返事はない。


「聞こえてないのか?」


 ぴくりと指が動くが、以前返事は見られない。


「……セルゲイと同じか」


 ため息をついて俺はリタへと近づき、正気に戻そうと手を伸ばす。


 そこで気がつく。


「罠か」


 リタの手に……火のついていない松明が握られていることに。


「にままのろここみのまさんまーかっいう」


 ぐるりと、首だけを回転させてリタの顔がこちらを向く。

 歪む口元に、狂気に染まった瞳。


「っ顕現せよ!」


 咄嗟に盾を呼び出すものの、リタの手に持たれた松明が火を灯す方が早かった。


「我ラガ神ハ、生ケル炎……」  


 ぐらりと歪む視界、方向感覚を失う最中、何処かでそんな声が聞こえた気がした。


 □


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