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遭遇

「……手が、手の化け物がそこにいたんだ」


「手の化け物……リタが見たと言っていた魔物か」


「魔物なんてものじゃない……あれは怪物だ、関わるべきじゃ無かった。君たちだってそうだろ? もう一ヶ月もここに閉じ込められて……なんでそんなに平気でいられるんだ」


「残念なお知らせですが……我々は貴方と別れてまだ1時間も経っていません」


「は……え? な、何言ってんだよ……冗談はよせ」


「嘘じゃありません……それに、一ヶ月も彷徨っていたなら私たちの身につけているものがこんなに綺麗なわけないでしょう?」


ドロシーの言葉に、セルゲイは頭を抱える。


「嘘だ……嘘だ、僕は認めないぞ……やめてくれ、そんな、それじゃ、まるで、ここの魔物が時間を操るって言ってるようなものじゃないか⁉︎」


「残念ですが、あなたのその様子を見るに間違いはないでしょう……」


セルゲイの身に起こったことを冷静に分析すると、セルゲイは顔を青くしてその場にうずくまる。


「あ、ああぁ……ああああぁぁ……ぁぁああぁあああ、終わりだ……時間を操るなんて、そんなの……勝てるわけがない……死ぬんだ、僕はもう死ぬんだ」


「落ち着け……」


「あああぁ、あ、あ、あ、あはは、あははは、あははははは⁉︎ 死ぬんだ、そうだ死ぬんだ⁉︎ あははははは⁉︎」


限界が来たのか、セルゲイは狂ったように笑い始めると、ふらふらと立ち上がり、東屋の周りをぐるぐると周り始める。


完全に壊れてしまったようだ。


「あれはしばらく元には戻りませんね……」


困ったようなドロシーの言葉に俺は頷く。


「時間を操る魔物なんて、それだけで神霊に片足を突っ込んでる部類だ。銀等級には荷が重い」


「まぁ確かに。我々だって数えるほどしか経験してませんし、難敵であることは変わりありません」


「セルゲイの話から何かわかることはあるか?」


「そうですねぇ。森全体の時間が狂っているのなら、我々と差異がある事は大きなヒントでしょう」


「と言うと?」


「魔術的な考えの話にはなるのですが、この世界に生きる物体に流れる時間と言うのはそれぞれ同じ様に見えて実は異なっていると言う理論があります」


「……好きなやつといる時間はあっという間だが、嫌いな奴といる時間は長く感じるって奴か?」


「んーーー、まぁ似た様な物ですかね? 取り敢えず、時間とはこの世界に流れる大いなる潮流ではなく、実は物体それぞれに流れているもので、そのそれぞれが限りなく同じに近いスピードで流れているから同じに見えているだけ、とでも思ってください。そして、その時間の流れを好きに操る事ができる存在……それが今回の魔物の力かと」


「セルゲイに流れてる時間を、一時的に早めたと?」


「えぇ。恐らく犯人はこの1時間で彼に流れる時間だけを1ヶ月まで加速させた。そして、こうして我々と合流ができていることを考えると、加速させる時間には限度があると考えるべきでしょう」


「成程……森全体の時間じゃなく個人に魔法をかけたと言うことか。となると、俺たちは問題なさそうだな」


「ええ。あなたの盾は【放たれた物】に対する絶対防御。個人に作用する魔法である以上、我々に効果はなさないでしょう。リップヴァンウィンクルの様に、森から出たら数十年後、みたいなことにはならないでしょう」


「まぁ、そうなってたとしても何も困らんがな」


「まぁ確かに。300年経とうが500年経とうが、我々歳とりませんからね」


「まぁな、長期戦で俺たちに勝てる奴は居ないだろうよ」


自嘲気味にそう言うと、ドロシーは肩をすくめるてさてと話を戻す。


「しかしこうなると厄介なのは魔物の見つけ方ですね。今回魔法が切れるまで我々がセルゲイを認識できなかった様に、恐らくこの魔法は時間の流れが変わってる間はお互いを認識出来なくなる様です。つまりは」


「見つけるのは相当困難と言うわけか」


「えぇ。見つけられても、恐らくは時間の流れを変えられて逃げられてしまうでしょうからね。まぁこう言う場合は、喧嘩を売って誘き出すのが定石です……危険ではありますが、呪われること覚悟で森の一部を焼き払えば、流石にたまらず尻尾を出すでしょう」


過激な発言に俺は呆れながら森の奥を見る。


「…………いや、どうやらその必要は無さそうだぞ、ドロシー」


そして、それを指さした。


「────それはどう言う……え?」




鬱蒼と立ち並ぶ木々の先に立つ、樹齢50年は超えるであろう一際大きな杉の木。


その影から白い手が伸び。


────木の幹を握った。


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