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異空間

「わふ、わふ」


小屋をでてからのディオゲネスだが、特に怯える様子も何かを見たという様子もなく何も変わらない様子で散歩を続けていた。


念のため、俺たちが小屋に入っている間に何か変な物を見ていないかとドロシーはディオゲネスに聞いてみたらしいが。


昼寝をしてました、との返答だったらしい。


まぁもとからあてにしてなかったからいいのだが……呑気なやつである。


「わふ! わふ!」


森の中を案内されるまま進むこと数十分後、丸太の積まれた東屋の前でディオゲネスは足を止めると、あたりの木々の匂いを嗅ぎ始める。


どうやら目的地に到着をしたようだ。



「ここまで何もありませんでしたね……追跡をされた気配も無かったようですが、他の二人のところへ向かったのでしょうか?」


あまりに何事もなく目的地に到着したことにドロシーは不安げに言葉を漏らす。


彼女の言う通り、先ほどの鹿の死体が何かの警告だったとするなら、ずけずけと森の奥に入り込んでいる俺たちに何かアクションを起こしても良いはずなのだが、異変の主は特に何かをする様子もなくすんなりと森への侵入を許している。


「セルゲイたちが心配です……ここで何か正体に繋がるものがあれば良いのですが」



ドロシーの言葉に頷き、ディオゲネスを木の幹に繋いであたりを見回してみる。


この辺りはエルナムだけでなく多くのエルフが作業場として使っているのだろう。


地面は踏み固められ、加えて空を見上げれば薄らとだが陽の光が見える。


森に立ち込めていた霧もこの場所では多少マシになっており、野営後に転がる鍋や木の幹に刺さったまま放置されたノコギリが、この場所で何かがあったことを物語っている。



「何か気配はありますか? アイアス」


ドロシーの言葉に、俺は首を振る。


「いや、今のところなにも……ただ」


「ただ?」


「何もなさすぎる。不自然なほどにな」


目の前に広がるのは一見なんの変哲もない森の風景。


だが、目の前に不自然に放置されたノコギリや斧をみるに、ここで何かがあったことは間違いない。


だと言うのに、争った形跡も逃げ出したような足跡も、血痕すら存在しない。


「精霊種や幽鬼の類の仕業とかですかね?」


「霊体は確かにその存在の痕跡を残さない。だが現実に影響を及ぼすためには実体化が必要だ。呪いも例外じゃない」


「体がすごい小さいとか? ほら、ノームみたいに」


「その可能性もあるが……ドロシー、構えろ」


「⁉︎」


静かに相棒にそう告げ、物音を感じた方角へ視線を向ける。


同時に、近くの茂みが微かに揺れる。


「……………」


そこに何かがいるのは間違いなく、耳を澄ますと……僅かだが息遣いが聞こえてくる。


「ドロシー……」


「わかりました」


二人で頷き合い、俺とドロシーは茂みのそばに近寄ると、ドロシーを盾で隠しながら、慎重に茂みをどかす。


と。


「ひいいぃ⁉︎」


茂みの奥から小さな悲鳴が上がる。

見るとそこにはボロボロの服に泥だらけの姿の男が身を隠すように膝を抱えていた。


「人?」


遭難者だろうか、その男の髪は薄汚れ顔は髭だらけ……靴に至っては片方は履き潰されて裸足も同然となっている。


と、男は俺たちの方を見ると驚いたように目を見開く。


「ドロシー……それに、銅等級……無事だったのかい?」


「え……その声……貴方もしかして、セルゲイですか?」


そこには、つい数十分ほど前に別れたばかりの、セルゲイがいた。


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