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滅びに向かう村

 しばし森を歩くと暗がりに包まれた森が明るくなり、道幅が広くなるのと同時に村が見えてくる。


 申し訳程度の木の柵に囲まれたその村は、どこが陰鬱とした空気が流れており、おおよそ活気というものが感じられない。


 酒場の看板の下で掃除をする女店主も、鶏の世話をする老婆も、水を運ぶ水売りも……どことなくその表情に影が差し込んでいる。


 この空気の重さはよく知っている。


 村で誰かが死んだ翌日の表情だ。


「ねぇ、あれ」


「しっ、聞かれるよ」


 冒険者に連れられる俺を見て、村人たちはヒソヒソと声を殺して何かを話し合う。


 何を話してるのかは知らないが、きっと碌でもないことだろうということは何となく理解はできた。


 周りを見ると若者よりも老人の比率が多い。


 限界集落という奴だろうなと俺は心の中で思いながら、引きずられるままギルドへ続く道を歩いていると。


「やぁ、ライデル。随分と大きな獲物だね、大男を縛り付けてお散歩とはずいぶん楽しそうだ。まさか君にこんな趣味があったなんてね。正直驚きだよ」


 背後から軽薄そうな声が響き、振り返ると口元をにやけさせた男がふらりと俺たちの前に現れた。


「トンドリ……何のようかしら?」


 どうやらこの男はトンドリ、そして俺を捕らえた冒険者はライデルと言うらしい。


 ライデルの表情から察するにあまり仲は良くなさそうだ。


「いやいや、真面目に頑張る冒険者さんを労いに来たのさ……無駄な努力ご苦労様ってね」


 揶揄うように笑うトンドリと言う男に、ライデルは苛立たしげに舌打ちをする。


「喧嘩を売りたいなら後にしてくれる? どうしてもと言うなら相手してあげてもいいけど」


「おっと、ごめん被るよ。僕は頭脳労働が得意なタイプだからね……そう怖い顔するなよ、ちょっとからかっただけだろ?」


「はぁ……また酔ってるみたいね。どうしようもないくらいに」


「そりゃあこんなどうしようもない状況だ。飲まなきゃやってられないさ……この森は、ひっく、森の貴婦人に見捨てられた、もう滅ぶしかない。 なら、楽しく遊んで、飲んで、最後の時を楽しまなきゃ」


「まだ見捨てられたと決まったわけじゃないわ。それに、犯人なら逮捕した。もう村は安全よ」


 俺を指差してがなるライデルに、トンドリは俺を一瞥すると口元を緩めてライデルの肩をなでる。


「へぇ、そしたら今日はもう仕事は終わりだねライデル。へへへ、そしたらどうだい? 大きな仕事を終えたんだ。たまにはうちの屋敷で遊んでけよ、君だけなんだぜ?俺の誘いを断り続けてるのはさぁ?」


 ねっとりとした声で話すトンドリ、しかしライデルは呆れたようにその手を振り払う。


「遊びなら十分事足りてるでしょ? 私は忙しいの、あと酒臭い男はごめんなのよ」


「ちぇ、相変わらずガードが硬いんだから……まぁ良いや、今日は一日家にいるからさ、気が向いたら来てよ。門番には話を通しておくからさ、じゃあね」


 そういうと、トンドリは鼻歌混じりに村の奥へと消えていく。


「ったく……領主の息子じゃなけりゃぶった斬ってやるのに。徘徊老人に馬鹿男。問題だらけよまったく」


 ぶつぶつと額に青筋を浮かべるライデルに、俺はふとロマリアでジェルマンや王の相手をしていた時のことを思い出す。


「大変だな」


「うるさい……さっさと来い!」


 どうやら労いの言葉は火に油を注ぐ結果になってしまったようで、俺は乱暴に鎖を引かれながら村の中央にある大きな集会所に連れて行かれるのであった。


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