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傲慢な冒険者

「やぁドロシー、こんなところで出会うなんて奇遇だね!」


「げっ」


 村の入り口付近に到着をすると、橋を渡って森から現れるエルフ達に声をかけられる。


 鎧や魔術師のローブを観に纏った4人組は、口ぶりからしてドロシーと顔見知りの冒険者と言った様子だが、見るとドロシーはゲンナリとした表情を見せる。


「知り合いか?」


「えぇ、まぁ」


 歯切れ悪く呟くドロシーとは対照的に、声をかけた男は満面の笑顔。


 その様子に俺はなんとなく二人の関係を察する。


「こんなところで出会うなんて運命を感じずにはいられないねドロシー!」


「ははは、相変わらず大袈裟ですねセルゲイさん。リタさんにマレリアさん、グレッグさんもごきげんよう」


 ドロシーの挨拶に、名前を呼ばれた4人は三者三様の反応を示す。


 一人は言うまでもなく満面の笑みだが、一人は敵意をむけ、一人は無関心にそっぽを向き、一人は気まずそうな表情で軽く会釈を返してきた。


 まとまりのないパーティーだ。


「君も依頼を?」


「えぇまぁ。まさかセルゲイさん達もですか?」


「当然! 僕たちはガエリア唯一の銀等級冒険者だからね、人が木に変わるなんて大事件放っては置けないさ! 少し前から調査に入って、補給のため今ちょうど出てきたところだよ」


 この村唯一、と言うとこいつらリフィルが言っていた採取クエストの期日を守らなかった冒険者達か。


「随分と長い調査だったんだな、リフィルが心配していたぞ? スズメバチの採取クエストの期日になっても連絡がないってな」


「スズメバチの採取? あぁ、あれの期日そんなに短かったんだ。ははは、まぁでもこっちの方が大事件だからね。リフィルだって分かってくれるさ」


「忘れてたのか……」


 クエスト期日1ヶ月もあったのに、なんてズボラな奴らだ。


「それよりも君誰?見たところ冒険者みたいだけど、なんでドロシーと一緒にいるんだい?」


 訝しげにこちらを睨むセルゲイに、ドロシーは仕方ないと言いたげに紹介をしてくれる。


「彼は今回の調査に助っ人として呼んだ親友です」


「……助っ人ぉ?」


「えぇ、親友にして頼れる相棒アイアスです」


「ふーん……」


 ジロジロとこちらを値踏みするようにセルゲイは俺を睨むと。


「君、冒険者等級は?」


 と、不躾に聞いてきた。


「銅等級だ、最近鉄から上がったばかり。この地域では新米だ」


 この地域ではな。


「はっ! 銅等級だって? あぁ、可哀想にドロシー。僕たちが居なかったからこんな素人に毛が生えたような冴えない男を頼らざるをえなかったんだね!? 本当に犯罪的な人材不足だよこのガエリアの地は!」


 大袈裟にジェスチャーを取るセルゲイに、俺はロマリアにいるバカ宰相を思い出す。


「失礼ですよセルゲイ。彼は優秀な冒険者です」


「だとしたら君の不幸は本当の優秀な冒険者を知らないことだよドロシー。僕は銀等級冒険者、こんなでかいだけの男とは違いギルドに認められた選ばれた人間なんだ、これがどう言うことかと言うとだね!」


 何やら自分に酔うようにペラペラと自慢を披露するセルゲイ、そんな様子をまた始まったよと言う目で背後の仲間達は呆れ顔で眺め、俺とドロシーも顔を見合わせる。


「よく銀等級であそこまで威張り散らせるな」


「人材不足もありますが、あれは性格でしょうね」


「どこの地域にもああ言うやつはいるんだな」


 そう呆れていると、どうやらセルゲイは話したいことを終えたようで、再びドロシーに向き治る。


 ──ドロシーはモグラのように頭を引っ込めた。


「────だからね悪いことは言わない。ドロシーは僕のそばに居るべきだ!この森は危険だよ、僕のパーティーにおいでドロシー。何があっても、僕が君を守ってあげるから!」


「申し訳ありませんがお断りします。この世のどこを探しても、アイアスの後ろより安全な場所など存在するはずないですから」


「んな!?」


 渾身のアピールをドロシーは全力で拒絶すると、セルゲイは一瞬驚愕に固まった後ギロリとこちらを睨む。


「っ!? 随分とその男を信頼してるみたいじゃないかドロシー」


「ええ、私の親友ですので。信頼しない方がおかしいでしょう」


 けろりと言い放つドロシー。

 そんな姿にセルゲイは一瞬殺意のようなものをドロシーに向けるが、すぐに落ち着き払って咳払いをする。


「っそうか。まぁいい…….森で少し怖い目に合えば考えも変わるだろう。それよりも、おい銅等級!」


「なんだ?」


「彼女に何かあってみろ? 僕がお前を殺すからな?」


「無論だ。昔からこいつを守るのは俺の仕事だ」


 それこそであってからずっと、そばにいる限り絶対に守り切るとこの盾に誓ったのだ。


 こんな男に今更言われるまでもない。


「はっ、その言葉が口先だけじゃないことを祈るだけだね。……まぁいいや、僕たちはいつでも歓迎だからさ、気が変わったら声をかけてよドロシー、それじゃあまたね!」


 不満げに悪態をつきながら、セルゲイ達は村に戻っていく。


「お前、ああいう手合いにモテるよな」


 小さな声でポツリと溢すと。


 ドロシーはつま先で俺の足を蹴飛ばした。


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