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灰色の賢者、聖剣のドロシー・ペリドット

 冒険者ギルドの斜向かいにある酒場【最果ての宴亭】


 昼には定食屋、夕方にはカフェ、夜には酒場と様々な顔を見せるこの町自慢の憩いの場にて、俺とドロシーは再会を祝しぎこちない乾杯をした。


「えと……本当、久しぶりですねアイアス。まさかこんなところで再開するなんて思ってませんでした……二年ぶりでしょうか?」


「最後に二人で魔王軍を返り討ちにしてすぐ後だったから、三年ぶりじゃないか?」


「あぁ、そうでした。もうそんなに経つんですね……時間が経つのは早いものです」


「そうだな。急に魔術の修行とだけ残して行方不明になった時は驚いたぞ……まぁお前のことだからどっかで元気にやってるとは思ってたけどな」


「うぅ、その節はすみませんでした……」


「何で謝る?」


「いや、その……あまりにも急でしたし、えと、婚約も勝手に解消してしまいましたし」


 上目遣いで歯切れ悪くドロシーはその話題に触れるが、俺は苦笑を漏らして首を振る。


「あぁそのことか。それこそ気にする必要ない筈だ。 元々俺たちの婚約は、外交交渉に向けてのパフォーマンス……偽装婚約だ。交渉が終わった後すぐに魔王が暴れだしたせいで忘れてたが、今回みたいに別れたい時に後腐れなく別れられるように、契約(婚姻)関係じゃなくて協力(共犯)関係を選んだんだろ?」


「そうですが……むぅ」


「どした? なんでそこでむくれる?」


「いえ。全くもってその通りなのですが……その、そこまであっさりと言われると、少々複雑な心境になりまして……いやまぁ、偽装婚約を考えたのも持ちかけたのは私ですけどー、そうですけどー」


 ドロシーは複雑そうな表情を見せると、一人拗ねたようにちびちびとエールを飲み始めた。


 灰色の賢者、聖剣のドロシーペリドット。


 この姿からは想像すらできないが、こう見えて魔法使いの最高位、世界に10人しかいない【魔法使い】の称号を僅か5歳で与えられた異例の天才であり、魔術師見習いの教科書にも載っている偉人の一人でもある。


 さらには名工槌を選ばずという言葉のように、その才能は魔法界だけにはとどまらない。


 俺と共にロマリア王国に雇われた際は、宮廷魔術師と軍部の司令官補佐、さらには外交のトップとして任命。


 いくつもの戦争をその口先ひとつで食い止め、最終的には全面戦争間近であったロマリアと妖精達の国、五つ国との間に通商用の巨大な街道と海路まで開通させるという偉業を成し遂げた。


 さらに、彼女は魔術のみならず科学にも造詣がある。


 今ではロマリアの代名詞でもある火山灰と海水を用いた特別なコンクリート、ロマリアンコンクリートを開発したのも彼女だ。


 交易による莫大な利益のみならず、建設された巨大浴場や闘技場はすでに建設から300年以上経過したにもかかわらず、一度の修繕工事もなく建てた当時のままの姿を残している。


 正直こいつの凄さを挙げ連ねればキリがなく、1000年間生きてきた俺から見ても「むしろこいつ何が出来ないんだろう」と首を捻るしかない大天才である。


「? どうしたんですかアイアス、急にぼーっとして……えっちなことでも考えてました?」


 まぁ、このように性格は少し残念だが。それでも彼女の才覚を掠めるには程遠いだろう。


「期待に添えず申し訳ないが……少し昔のことを思い出してただけだ」


「昔のこと? 何です? 今更迷宮に置いてきた忘れ物のことでも思い出しました?」


「100年以上も前の忘れ物なんて思い出したってしょうがないだろ? 出会ってからそれだけ経ってるのに、3年も離れてたのは今回初めてだったなと思っただけだ」


「そう言われればそうですね? ドラゴン退治の後も、迷宮攻略の後も、なんだかんだ腐れ縁で半月くらいで再開してましたし、最長記録です」


「宮廷魔術師を辞めてから3年間、一体何処で何してたんだ?」


「大したことはしてないですよ。私はフリーの魔術師として放浪してましたね、具体的には迷宮攻略の手伝いや、新薬の開発とか魔法学校の特別講師として招かれたりとか……まぁ言うなれば根無草のプータローです」


 色々な方面から怒られそうな表現だな……。


「じゃあこっちに来たのは最近か?」


「知り合いから研究所としてこの近くの研究所を提供されましてね。静かで集中ができるので、大体半年前ぐらいからここで魔法の研究に没頭していました」


「ふぅん……じゃあほとんどこっちに来たのは同じぐらいのタイミングということか。奇妙な偶然ってのはあるもんだな」


「そうですね……それよりも、聞きそびれていましたがアイアスこそなんでここに? あの王様バカと国境の戦線放置してこんな場所でバカンス、てわけでもないのでしょう?」


「ん? あぁ……実はな」


 ジョッキに入ったビールを飲み干し、俺はドロシーにことのあらましを説明した。


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