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森の貴婦人を継いだもの

 数時間前。


「ヴィラという精霊は特殊でな、霊体を持たず霊核のみで存在する。活動する際は他の生物の霊体に自らの核を宿し、通常霧散するだけの霊体を強制的に精霊化させて現世に留めさせる。共生型の精霊だ」


「……姿形を真似してるだけじゃなかったのね」


「ああ、霊体は本物だから記憶もあるし性格もそのまま。最後に死んだ少女の魂を宿主にするのも、少女の家族を味方に引き入れるためだろう。もちろん、ヴィラとしての意識と混ざり合う形になるから、全く同じというわけにはいかないがな」


「でも、混ざり合ってるならもうリリアは魔物になってしまってるってことじゃ?」


「これが妖精なら手遅れだろう。だが人間は魔物化をしない。もちろん、霊としてヴィラと混ざり合ってる以上放置すればいずれは魔物と化すだろうが」


「!! 完全に魔物になりきる前なら、宿ったヴィラの核を取り除けば!」


「あぁ、リリアは元に戻る。だが、霊体は不安定なもの、代わりの核が無ければすぐに消えてしまう、その為には……」


「私のを使って。私は人間だけど、霊体一つ維持させるぐらいなら問題ないはずよ」


 言葉を詰まらせる俺に、ライデルは迷いなくそう言った。


「いいんだな?」


「あの子が助かるなら何だってする。もう一度あの子の声が聞けて、笑ってる姿が見れるなら安いものよ」


「もう一度言うが人間は生命維持に霊核を用いないが、魔法の源となるものだ。抜き出せばお前は全ての魔法を失うことになる。未来永劫な」


「そんなもの、リリアに比べれば安いものよ。だから、お願い!!」


 ─────現在


「お姉……ちゃん?」


「大、じょうぶ。 リリア、落ち着いて」


 ころりと、俺のナイフに押し出されるように、ライデルの手に青い石が転がる。


 森の貴婦人よりも一回り小さいが、輝きに満ちたライデルの霊核。


 それを、ライデルは微笑みながら穴の空いたリリアの胸へ捧げようとする。


「そん、な。いや、ダメ、ダメだよお姉ちゃん!?」


 慌てて止めようとするリリアだが、消えかかった腕は空を切るのみであり、結局ライデルに渡された霊核が胸に収まると、リリアの消えかかった体はゆっくりとその形を取り戻す。


「良か……た。これで、ずっと一緒」


 血色を、そして形を取り戻したリリアを確認すると、ライデルは安堵したように頬を撫で、力が抜けるようにその場に崩れ落ちる。


 霊核の移植によりリリアは再び精霊としての力を取り戻す。ライデルの望んだリリアの救出は、これで終了した。


「うそ、なんで……なんで……嘘、お姉ちゃん? お姉ちゃん!?」


 倒れたライデルに駆け寄り、必死に呼びかけるリリア。


「リリア、ライデルは」


 そんな少女に俺は声をかけようと手を伸ばす。


 だが、それは迂闊な行動だった。


「っ!!うあああああああああああああああああ!!!」


「ぐあっ!?」


 絶叫と共に放たれる衝撃に、俺は吹き飛ばされ木の幹に体を打ちつけられる。


 吹き飛ばされる、なんてのは何年振りだろう。

 しかも、恐ろしいのはこの衝撃が魔法ですらないことだ。


「ただの絶叫がまるで嵐だな」


 感情の爆発による魔力の暴走は、眷属である森にも影響を及ぼしており、リリアの怒りに呼応をするように森の木々達が荒れ狂き、その身を揺らす。


「お姉ちゃんを、お姉ちゃんをよくも!!!!」


 ライデルを抱き抱えながら殺意を剥き出しにするリリアは、自らの背後に魔法陣を展開する。


「魔法だと……森の貴婦人の魔法を受け継いでいるのか!?」



【潰せ、森の月よ(ジュラ・ゲアラハ)!!】


 止めようと小瓶を手にかけるが、それよりも早くリリアは背後に聳える巨木に魔法をかける。


 瞬間。


 心臓の鼓動のように地鳴りが響き、呼応するように目前の大木、そして周りの木々が爆発的な成長を遂げる。


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