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ともぐい

「媚薬だと?」


 予想外の代物に俺は思わず聞き返すと、トンドリは恐る恐ると自らの過ちを告白していく。


 ────始まりは酒場でのくだらない戯言がきっかけだったらしい。


「その日はいつもみたいに酒場で飲んだくれてた日の事だったんだ。いつもみたいに今日はどこの女で遊ぼうかって話し合ってた時だったんだけど、仲間の一人が冗談で森の貴婦人を抱こうって言い出して……」


「……【自主規制】」


 トンドリの発言に、ライデルは心底軽蔑したような表情でボソリと吐き捨てるが、俺は聞こえないふりをして話の続きを促す。


「もちろんただの冗談だったさ、相手は守り神だし……見た目はライデルの妹だけど、そもそも抱けるのかも分からない相手さ……あぁ、本当にただの酒の席での冗談だったんだよ……だけど、その願いを叶えてやるって奴が現れたんだ」


「行商人か」


「あ、あぁ……酒場にきてた余所者で、僕たちの話に興味が沸いたって……それで、いいものがあるってこの薬を渡してくれたんだよ。これを、自分の血に混ぜて飲ませれば森の貴婦人を虜にすることができるって……抱くだけじゃなくて、その大きな力を自分のものに出来るって……」


「……そんな胡散臭い話を信じて、森の貴婦人に媚薬を盛ったのか?」


「初めは疑ったさ、だけど行商人は僕を認めてくれたんだ……僕は将来北部総督の地位を受け継ぐ人間……森の貴婦人を従えるに足る人物だって、強大な力を得るためにはリスクも必要だって……だから」


「言われた通りにしたと?」


 俺の質問に、トンドリはこくりと小さく首を縦に振った。


「……愚かさにも限度と言うものがあるぞ」


 よそ者の言葉を信じた挙句、守り神に媚薬を盛って怒りを買う……愚かさもここまでくると怒りを通り越して呆れてしまう。


「ぼ、僕は利用されただけなんだ‼︎ そう、そうだ‼︎ 悪いのはあの行商人だ‼︎ 言葉巧みに僕を操って……僕はただ、ただ、ライデルの妹を抱きたかっただけなん……だっゔほぉおお‼︎」


 最低な懺悔を述べるトンドリに対し、我慢の限界だったのだろう。


 トンドリの顔面にライデルの拳がめり込み、森の中をゴロゴロと転がる。


「……そんなふざけた理由で、あんたはリリアに薬を盛ったの? 村を、危険に晒したの!!?」


「ひっ、ひいいいぃ⁉︎ ごめんなさい! ごめんなさい!!お願いだから、お願いだから殺さないで!!」


「無理な相談ね…....このクズ野郎!!!」


 怒髪天を突くと言う言葉そのままに、ライデルは更にトンドリの腹を殴ろうとするが、俺はライデルの手を掴んで止める。


「それぐらいにしておけ。死んでしまうぞ」


「でも……こいつのせいで村が襲われてるのよ!?」


「あぁ、だがまだ腑に落ちない所がある」


「何がよ。守り神に媚薬盛るなんて、リリアの逆鱗に触れるのもおかしくない話じゃない!」


「ヴィラは温厚な精霊だ。確かに供物に媚薬を盛る阿呆を祟るぐらいはするだろう。だがそもそも薬の類は精霊種には効かない。彼女にとってみればこれは実害のない悪戯だ。お前の言葉を借りるなら、そんな程度のことで堕落するならとっくの昔に堕落してるはずだ」


 俺の言葉に、ライデルは困惑したように言葉を詰まらせる。


「!? いや、だけど現に」


「あぁ。だからこそ大事なのは供物を受け取った後のリリアの様子だ……話せトンドリ、森の貴婦人はお前の供物を受け取った後……どうなった?」


 泣きべそをかくトンドリを俺は睨んでそう問いかけると、トンドリはびくりと体を震わせて話の続きを語る。


「ぎょ、行商人に言われたとおり、薬を僕たちの血に混ぜて銀と一緒に森の貴婦人に渡したんだ」


「一人でか?」


「な、仲間の6人全員とだよ……初めは不思議そうにしてたけど、時期領主から日頃の感謝を込めてって言ったら何も疑わずに受け取ってくれて、僕たちにありがとうって微笑んでその血を舐めたんだ。月に照らされながら血を舐めるリリアの姿は少し恐ろしかったけ。だけどすごい綺麗で、これがもう少しで自分のものになるって興奮してた……だけど……すぐにそんな興奮は消えた」


「何故だ?」


「ち、血を舐めたリリアはすぐにおかしくなったんだ、いきなりケタケタと笑い出したかと思ったら、急に泣きだして、呟いたんだ──よく聞こえなかったけど、えぇと、確か……と、とも? とぐ……あぁそうだ……」




 ────ともぐい。


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