表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/58

薬の正体

「んーー!! んーー!!」


 中には猿轡をされ、手足を縛られた状態のトンドリがいた。


 よほど怖かったのか、その目には涙が浮かんでいる。


「どうする? 木の幹にでも縛りつける?」


「いや、話を聞くだけならこのままでいいだろう────おい、聞こえるかトンドリ?」


「んーー!! んーーーーー!!!!」


「落ち着け、何も取って食おうってわけじゃない。少し話を聞かせてもらうだけだ。先に断っておくが、騒ぐのは賢明な判断じゃない。分かるな?」


 俺の言葉に顔を青くしてトンドリはこくこくと頷く。

 その様子に俺はよしと頷いて猿轡を解いてやる。


「──っぷはぁ、はぁ、はぁ、な、なんなんだよぉお前。み、身代金か? それとも、親父に何か恨みでもあるの?」


 息を切らしながら怯えるようにトンドリは的外れな言葉を繰り返すが、俺はそれに首を振る。


「少し教えてもらいたいことがあるだけだ、それだけ聞いたら帰してやる」


「なんだよ、親父のほくろの数でも聞きたいのか?」


「それも興味深いが、それよりも大事な事だ。この薬に見覚えはあるな?」


 そう言って俺は死体から発見した皮袋をトンドリに見せると、途端にトンドリの顔が青く染まる。


「そ、それは!?」


「知っているんだな? これは他所から来た行商人から買ったと聞いたが、これはなんだ?」


「あ、えと、た、ただの胃薬だよ。ほら酒ばっかり飲んでるから胃が弱っててね、これがよく効くもんだから常に持ち歩いてるんだよ」


「……そうか、なら安全なものだな」


「へ、へへへ、そうそう、安全なもので……」


 ニヤニヤと笑うトンドリ。


 背後にいるライデルから殺気が迸っているが、俺はそれをやんわりと静止して。


「あぁ、安全なものなら良かったよ」


 薬をトンドリの頭からかける。


「は? え? あ、わ、うわあああああああああああああああああ!!?」


「おいおい大袈裟だな。ただの胃薬なんだろ?」


「うわあああああぁ!? たす、助けて!! あいつが、あいつが僕を殺しにくる!!?」


 忠告も忘れてぎゃあぎゃあと騒ぐトンドリに、俺は呆れながら懐から今度は本物の例の薬を取り出す。


「落ち着けよ、今のは偽物だ。袋を取り替えただけ、中身はただの薬だ、人体に影響はない……泣くほどお薬は苦手だったか、坊主」


「な、あんた、僕を騙して────ひっ!!?」


 顔を赤くしてトンドリはこちらを睨みつけるが、俺は今度は本物の薬をトンドリの目の前に突きつける。


「正直に話せ……この薬はなんだ? そして、これでお前たちは何をしようとした?」


「っ!!!?」


 秋の終わり、寒気すら覚えるこの時期にトンドリの全身から汗が吹き出す。


 しばらくトンドリは俺とライデルを交互に見ながら震えていたが、痺れを切らしたライデルが剣に手をかけたところで、観念したと言う様子で……。


「び、媚薬…………です」


 そう呟いた。


 □


【お願い】更新の励みになりますので、気軽にブクマや評価よろしくお願いします。

皆さんの応援が原動力になるので、たくさんレビューや感想もいただけると嬉しいです! よろしくお願いします〜ノシ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ