トンドリ誘拐
村の外れにある浮いたロマリア様式の建造物。
他が木造なのに、ここだけレンガ作りのその建物は、絢爛な装飾もあいまりその家主のプライドの高さが窺える。
門の前には、鉄鎧を着込んだ男が二人。
制圧は簡単であろうが、いささかそれは乱暴に過ぎる。
かと言って忍び込もうにも、田舎で見晴らしがよいこの場所では、建物を登ろうにも目立ってしまうだろう。
さてどうしようかと、建物を見上げながら俺は思案していると。
「少し待ってて。引き摺り出してくるから」
そう言ってライデルは鎧と腰の剣を外して俺に渡すと、スタスタと門の前に歩いて行く。
「おいおい、また殴り込みする気か?」
「馬鹿言わないで、忘れたの? 私はもともとここに招待されてるのよ……」
「あぁ」
そう言われてふと思い出す。
そういや確かに、最初に会った時にそんなこと言ってたな。
騒ぎですっかり忘れてた。
「はいこれ、私の装備。 あんた目立つから、これ持って屋敷の裏の森で待ってて」
鎧を預かった俺は、遠目からその様子を眺めていると。
確かにライデルのいうとおり、少し驚いたような門番とライデルは二、三言葉を交わすと、ひらひらと手を振ってトンドリの屋敷の中へと姿を消す。
「ふむ、ここは任せて良さそうだな……こっちはこっちで、薬草の準備でもしておくか」
いずれにせよ、森の異変との戦闘は避けられない。
相手が吸血種であるならば、保険をかけておいて損はないはずだ。
そう決めて、俺は鎧を持ったまま屋敷の裏へと回った。
────それからしばらくして。
言われたとおり屋敷の裏側に広がる森の中で薬の調合をしていると。
「待たせたわね」
何やら大きな木箱を抱えたライデルが声をかけてくる。
木箱の内側から何やらゴンゴンと音がするところを見るに、恐らく中身はトンドリであろう。
「そんなでかい荷物、どうやって怪しまれずに運び出したんだ?」
「悪いけど、協力者の情報は他言無用なの。女癖の悪さゆえの自業自得とだけ言っておくわね……」
ニヤリと悪辣な笑みを浮かべるライデル。
成程、こんなにも簡単に誘拐が成立してしまうほど、トンドリという男は彼女を含め相当な恨みを買っているようだ。
そりゃ、ギルドマスターが代わりに村の運営をするわけだ。
「やれやれ……放蕩息子も大いに結構だが、仮にも領主なら、愚かさの責任はしっかりと取ってもらおうか」
そう呟いて俺は木箱に手をかけると、釘打ちをされている箱の蓋をひっぺがす。
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