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暗闇姉妹2号誕生の時!その名はユウヤミサイレンス!

「おらあっ!!」


 ユウヤミサイレンスは再び正拳を突き出した。タソガレがそれを避けたことで、彼女の背後にあった金属棚が吹き飛ばされる。音も無く側面に回りこむタソガレに対して、身を翻しながらユウヤミは、上段後ろ回し蹴りを放つが、これも避けられた。サッと距離を離すタソガレが喋りだす。


「あーダメ!ダメ!ダメ!ダメ!あなた暗闇姉妹ってものがわかってない!そんなハイキックなんて派手な技は使わないんです!ほら、こうやって……」


 タソガレは動きの起こりを見せずにユウヤミに近づき、彼女の足を踏みつけた。そして、その顎に掌底を当てる。大抵の者はこれをされると転ぶのだ。しかも、足を踏まれたまま転ぶと、足首を折ることになる。一般的な格闘技では決して許されないであろう禁じ手だ。


(えっ?)


 だが、ユウヤミは転ばなかった。というより、掌底を当てても、文字通りビクともしていない。そんなものは構わないとばかりに、ユウヤミは手刀を上段に振りかぶっていた。


「たああっ!!」

「ちっ!」


 振り下ろされる手刀を、タソガレは両腕を交差させて受け止める。十分にガードしたにもかかわらず、彼女の前腕の骨にヒビが入った。


(なんですか、この子は!?このパワーは!?)


 体勢を崩すタソガレの袖をユウヤミが有り余るパワーで振り回す。


「おりゃあああっ!!」


 ユウヤミはタソガレを背負投げした……と書いていいのか、筆者にもわからない。筆者が知る背負投げとは、人を床に倒す技だ。人を水平方向へ飛ばす技ではない。


「あがっ!?」


 倉庫の壁に叩きつけられたタソガレが、口から血を吐いた。骨が何本、折れただろうか?だが、それでも、


(私の敵ではありませんね)


 そうタソガレは思っている。


「あ……あれ?あれあれ!?」


 ユウヤミは、まるで顔の左半分に何か付いているのかとばかりに、顔をごしごし擦る。だが、彼女の左目の視界は回復しなかった。


「私は鍵の魔女。私はどんな鍵でも解錠できるし、あらゆるものを施錠できる。例えそれが、人間の視覚であろうとも」


 投げられる時に、すでに彼女の左目に鍵をかけておいたのだ。


 倉庫側から聞こえる喧騒に耳を傾け、トコヤミが叫ぶ。


「早く!ツバメちゃんを助けにいかないと!いくらツバメちゃんが魔法少女になったとしても、あの魔女は人の視覚に鍵をかけることができる!両目が見えなくなったら勝ち目がない!」

「落ち着いてよツグミセンパイ!いや、トコヤミサイレンス!私だってツバメちゃんが心配なんだ。でも、まずは君を治さなくちゃあいけない。君はヒーラーなんだ。君さえ生きていれば、ツバメちゃんを治すこともできる」


 オトハはマシンガンから抜いた弾をそっと指で挟むと、その先端をトコヤミの目の横に押し当てた。まるで焼印を押し付けるように、皮膚が焼けるような音がする。


「うっ……!」

「ちょっとだけ我慢してね。この弾丸には、魔法に対する毒が魔法付与エンチャントされている。それなら、あの魔女の鍵の効果も、これで打ち消せるはずだ」


 目の奥に生じる焼けるような感触に耐えながら、トコヤミは祈った。


(ツバメちゃん……お願い、死なないでね)


「うおおおおおっ!!」


 ユウヤミは文字通り盲打めくらうちの裏拳で金属棚ごと空間を削るが、それに当たるほどタソガレは愚かではなかった。床に物が散乱しているというのに、静かなステップでユウヤミの死角に回りこみ、拳の連打を彼女の顎に集中させる。


「うっ!」


 やがてユウヤミは膝をついた。タソガレのパンチで、脳が揺れすぎたのだ。それでも、残った右半分の視界を頼りに、地面に手をついて何かを探そうとしている。


「これで終わりです」


 タソガレはユウヤミの右目の横に鍵を差し込み、ひねった。それにより、ユウヤミの視界は完全に塞がれる。


「勝負あり、ですね」

「うがー!!」

「なっ!?」


 タソガレの両足がすくわれた。彼女の両足を抱えたユウヤミが、雄叫びをあげながらその体を振り回す。


「まだだー!!まだおわってなーい!!」

「くっ!?」


 ジャイアントスイングで金属棚に投げ飛ばされたタソガレは、そこに陳列された物品もろとも倒れた。だが、彼女は不敵に笑う。たとえどれだけダメージを受けようが、再生魔法があるのだ。時間とともに、折れた骨はつながっていくのだから。


「くくくく……実はですねぇ、私はあなたと、いいお友達になれそうだなって思ってたんですよ。同じトコヤミサイレンスのファンとしてね。でも、まったくダメです。トコヤミサイレンスのことが、まるでわかっちゃいません」

「だまれ!ニセモノ!」


 またそう言ったか!タソガレが怒りの表情を浮かべる。


「偽物はあなたの方ですよ!見た目を真似ただけで、その精神をまるで理解していない!あなたは、ただ力まかせに戦っているだけ。本当のトコヤミサイレンスは違う。静かで、容赦の無い、魔法少女の誰もが恐れる、闇夜の怪物……」

「なに?怪物?」

「そうです!誰であろうと、どこにいようと、一切の痕跡を残さず、殺しを仕掛けて仕損じ無し!もしも暗闇姉妹2号の称号にふさわしい者がいるとしたら、それはこの私です!私こそが、誰もが恐れる、トコヤミサイレンスの継承者となるでしょう!」


 その言葉を聞いたユウヤミは、見えない両目を閉じた。


(ほぅ、見えないならいっそ目を閉じて集中しようというわけですか。しかし、それで気配を探ろうなどとは、素人にできることではありませんね)


 タソガレはそう分析したが、ユウヤミの意図は違う。彼女はただ、思い出そうとしただけだ。


 ナイフを持った男に人質としてトイレに連れ込まれた時。

 オトナたちは誰も、わたしを助けることができなかった。

 何時間も乱暴され、衰弱しきっていたその時、その人は現れた。

 ツグミお姉ちゃんだ。

 お姉ちゃんは食べ物と、飲み物を持ってきてくれた。

 それだけではない。

 お姉ちゃんはわたしが受けた暴力の痕を見て、怒ってくれた。

 男のナイフから、自分をかばってくれた。

 そして、男をやっつけてくれた。

 わたしを自由にしてくれた。

 そして、わたしのお姉ちゃんになってくれた。


「お姉ちゃんは……怪物なんかじゃあない……!」


 ユウヤミが両目を見開く。


「お姉ちゃんは……ヒーローだ!!」

「それは解釈違いというものですね!」


 タソガレはユウヤミの目前に迫っていた。しかし殺意を消して近づける彼女を、両目の見えないユウヤミが察知できるすべはない。タソガレは、すっとユウヤミの心臓に鍵を差し込む。


「あなたはファン失格です。さようなら」


 タソガレはそのまま、鍵をひねろうとした。心臓が止まって生き続けられる魔法少女はこの世にいない。


「あ……えっ?ちょっ!?」


 タソガレは鍵をひねろうとしたが、それがビクとも動かなかった。片手ではなく両手を使って無理やりひねろうとするが、鍵を持つ右手が、ユウヤミの左手に掴まれ、ビクともしないのである。


「あなたの弱点はわかっているんだ。この鍵は、ひねらないと効果がでない。そして、そのあいだは無防備だって」

「ああっ!?」


 タソガレの右手首が切断された。ユウヤミは右手にナイフを握っている。


(あのナイフは!さっき私が捨てたナイフ!右目を施錠する寸前に何かを探すような仕草をしていましたが、これを拾っていたのですか!)

「さすがですねぇ……」


 口癖でつい褒めてしまったタソガレであったが、ユウヤミはそれを意に介さず、鍵を目の横に差し込み、視力を回復させた。もっとも、タソガレの方も再生魔法の効果で手首から流れる血は止まっていたが。


「カンネンしろ!ニセモノはホンモノには勝てないのだ!」

「まだ言いますか!」


 武器を失ったタソガレは、死んでいる黒ドレスの隊員からマシンガンを取ろうとした。今見る限りでは、銃弾を防ぐような魔法をユウヤミは使えないはずだ。


「くっ!?なんだ!?」


 タソガレの手がマシンガンに届く前に、何かが手首の切断面を引っ張った。その力は、ユウヤミの方へ向かっている。


「これが……お姉ちゃんの力なんだ!」


 ユウヤミが持つタソガレの右手が、光を放っている。その光の正体を、タソガレは知っていた。トコヤミサイレンスのファンの一人として。


「回復魔法!?トコヤミサイレンスと同じ能力!!」

「おらああっ!!」


 傷口が治ろうとする力で引きずられてきたタソガレは、ユウヤミから強烈な頭突きを受けた。吹き飛ばされたタソガレは、意識を朦朧とさせる。だが、攻撃はまだ終わっていない。


「まだまだぁ!!」


 タソガレが吹き飛ばされたせいで、彼女の手首はまだつながっていないのだ。再び回復魔法の力で引きずられてきたタソガレは、ユウヤミから再び頭突きを受ける。


(これは……まずい……!!)


 タソガレは常に再生魔法によって肉体を回復させている。だが、その回復速度よりも早く、彼女の頭蓋骨は限界をむかえようとしていた。


(次に同じように頭突きを受けたら、私の頭は破裂する!そうなれば……死!)


 だが、ユウヤミは容赦する気は無い。再び引き寄せられるタソガレに向かって、ユウヤミは頭を振り上げた。そして、振り下ろす。


「……あれ?」


 その頭突きは空振りに終わった。


「なんとか……なんとか間に合いましたか……私の右手……」


 タソガレは、再生魔法によって新しく生えてきた自分の右手を見て、安堵した。


「これでもう……引き寄せられることはないですね。右手はすでに、回復している。そして……」

「おらっ!!」


 ユウヤミは頭突きのかわりとばかりに正拳突きをお見舞いする。だが、むしろタソガレは、喜んでそれを受けた。


「すごいパワーです!でも、だからこそ私をこうして運んでくれる!」


 吹き飛ばされたタソガレは、床を転がるように着地する。その手には、すぐそばに倒れている黒ドレスの女から取ったマシンガンが握られていた。


「死ね!!」


 マシンガンから、消音器によって生じる独特のくぐもった発砲音が響く。だが、倒れたのはタソガレの方だった。


「な、なにぃーい!?」

「……やれやれ、やっぱりゲームみたいにうまくはいかないなぁ」


 黒いドレスの女が、タソガレを後ろから撃ったのだ。その様子を見て、ユウヤミもまた目をパチクリさせている。


「どうして……ですか!?裏切るのですか!?あなたの……コールサインは……!?」

「閃光少女、アケボノオーシャン」

「!」


 黒いドレスを着たオトハの体が、青い指輪の発光とともに光に包まれ、奇術師の魔法少女の姿に変身した。


「あんたたちがスカウトフォーと呼んでいた女の人から借りたのさ。階段ですれ違ったのだけれど、あんたは気づかなかったみたいだね」

「くっ!」


 タソガレは悔しそうに歯ぎしりをする。


「それに……なんだっけ?ツグミちゃんを怒らせてはいけない……だったかな?だけど、あなたはさっきから、怖~いお姉ちゃんを怒らせていますから。残念!」

「え……トコヤミサイレンスが?……はっ!?」


 オーシャンの後ろから、一人の影が歩いてきた。


「言ったでしょ?暗闇姉妹は一人ではないって」


 そうつぶやくオーシャンの横をトコヤミサイレンスが通り過ぎる。狙う相手は、ただ一人。


「天罰代行、暗闇姉妹」


 そう口にしたトコヤミは、おもむろに短い棒のような物を取り出す。彼女がそれをひねると、端部からダガーのような刃が飛び出した。極端に柄の短い槍のようだ。


「殺された者たちのうらみ、今晴らします」


「ああ、まったく問題はあるまい」


 事務室にいたジュンコが歩いてきた。


「アケボノ君から階下の様子は聞いている。私たちを狙うために、ずいぶんと殺してまわってくれたじゃあないか。我々のルールからしても、君を生かしておく理由はない」

「ふふふ……はははは……」

「おい、何を笑って……」

「気をつけてハカセ!そいつ、何か持っている!」


 ジュンコに警告するオーシャンは、即座に手にしたトランプを投げつけようとした。だが、間に合わなかった。タソガレが手にしたスイッチを押すと、轟音とともに13階の天井が崩落してきた。あらかじめ屋上に設置していた爆弾が一斉に爆発したのである。


「おい!あれ!」

「ああ!行こう!隊長を回収するんだ!」


 ヘリコプターでビルの上空を旋回していた黒ドレスの隊員が、ヘリを崩落したビルの屋上に近づけ、ロープを垂らす。瓦礫の山からタソガレが体を出すと、そのロープを掴んでビルから飛び去った。


「ねぇ!!トコヤミサイレンス!!私はここまでしたんですからね!!きっと憶えていてくださいよ!!私の命を狙ってください!!待っていますからね!!早く私を殺しにきてくださーい!!」


 そんな絶叫だけを残して。


 瓦礫の山はしばし静寂に包まれていたが、やがてその瓦礫がゴトゴトと音をたてると、それぞれが元あった場所を目指して宙に浮いた。トコヤミサイレンスとユウヤミサイレンス。二人のヒーラーが回復魔法を使ったからだ。


「やれやれ、逃げられてしまったか」


 変身を解いたオトハは、見るのも嫌だとばかりに偽装に使った黒ドレスを脱ぎ捨てる。


「聞き覚えのあるエンジン音が近づいてくるねぇ。なるほど、サナエ君たちが到着したらしい」


 スイギンスパーダとグレンバーンの二人を乗せたスーパーバイク、マサムネリベリオンは階段を一気に登り、二人の魔法少女を13階まで届けた。


「うわ~ん!そんな~!トコヤミサイレンスさんが、し、死んじゃってます~!」

「馬鹿ね、スパーダ!その女はよく似た格好をしているけれど、別人だわ!それにほら、他にもたくさん死んでいる。きっとこいつらが敵だったのよ」

「アカネちゃん……」

「ほらみなさい!ここに本物のトコヤミサイレンスが……って、えっ!?」


 倉庫から姿を現したトコヤミにグレンが驚く。


「今……呼んだわよね?アタシの本名を……!?」


 トコヤミがうなずく。


「私は……私は、村雨ツグミなんです」

「「ええっ!?」」


 グレンとスパーダが声を揃えた。そういえば、この二人は過去に、直接トコヤミと共闘したことがある仲である。それでも、魔法少女の服装に込められた認識阻害魔法の影響で、彼女の正体を知らなかったのだ。


「ごめんなさい……ずっと言い出せなくて。自分のこと……殺人鬼だったなんて……どうしても受け入れるのに、時間がかかって……」


 グレンは変身を解除し、スパーダは頭部のマスクだけ外して、いつものサナエの顔に戻った。二人は顔を見合わせ、そしてうなずく。


「殺人鬼だなんて……アタシは一度もそう思ったことはないわ。前に、蜘蛛の魔女を一緒に倒した時……あなたは涙を流していた。人の死に涙を流せるのは、人の心を忘れていない証拠よ」

「蝙蝠の魔女の死体をワタシが斬りつけようとした時、あなたはワタシを止めてくれましたよね。もしもあの時、怒りにまかせて斬っていたら、ワタシは人間の心を失っていたでしょう。かつて、子どものワタシがもっていた光を、あなたのその心に見出したのです。だから、ワタシたちはずっと友だちです」

「あなたが暗闇姉妹であること。もしもそれについて話したくないことがあるなら、それでかまわないわ。でも、アタシたちは、あなたが理由も無く人を殺すような魔法少女だなんて、思っていない。あなたは、ツグミちゃんは、いつだってアタシたちのツグミちゃんよ」

「みんな……」


 涙ぐむトコヤミ。それを見て微笑むアカネ。そしてサナエは、倉庫から出てきたもう一人の魔法少女に気をとられていた。


「ところで、あの子は誰です?なんだかトコヤミさんと似ているようですが」

「うん、実はその子、ツバメちゃんなんだ」


 その後ろから出てきたオトハがそう告げる。その後出てきたジュンコもアカネとサナエに話した。


「どうしようもない状況だったものでね。私と契約をして、ツバメちゃんには魔法少女になってもらったのさ。初めての戦いにしては、すごいパンチだったねぇ」

「アタシが空手を教えてあげたおかげね!」

「えへん!えへん!」


 ユウヤミがそう言って胸を張る。


 ユウヤミはつかつかとトコヤミに歩みよると、ぱっと両腕を広げた。


「えっと……?」

「抱きしめろ、ってことじゃないですか?」


 困惑するトコヤミにサナエがそう説明する。


「でも……私のせいでこんな……すごく、迷惑をかけているのに……ツバメちゃんだって、本当は……」

「抱け!」


 ユウヤミに一喝されたトコヤミは観念し、そっと彼女を抱きしめた。ユウヤミもまたトコヤミの背中を、力いっぱい抱きしめる。


「うふふ。お姉ちゃん、あたたかいね」

「……そうだね」


 トコヤミは目から涙を流していた。周りの4人は、それを微笑ましそうに見ている。


 自分の未来はどうなるかわからない。

 でも、このぬくもりだけは信じたい。


 トコヤミサイレンス/村雨ツグミは、そう思った。


 セーフハウスから遠く離れた場所。

 薄暗い部屋の中でソファーに座る糸井アヤは、テレビに映る映像を凝視していた。


「ほら、よく見てください」


 アヤの隣に座る人物が、彼女に語りかける。フード付の、橙色の法衣を身につけたその魔法少女の名前は、オウゴンサンデー。世に言う『最強の閃光少女』である。

 そのテレビ画面には、どうやって撮影したのか、タソガレバウンサーが率いる暗殺チームが、村雨ツグミ/トコヤミサイレンスによって壊滅させられる様子が映っていた。


『ああああああああああああ!!』

『おい、どうした!?ぐぇっ!?…………っ!!』

『わああああああああっ!?』

『いたぞ!!いたぞおおおおおっ!!』

『あ、ああ……あ……!あぐっ……!?』

『そ、そんなの嫌だ!!死にたくない!!死にたく……!!』


 ある者は感電させられ、ある者は首を吊り、ある者はドリルで頭をえぐられる。闇の中に引きずられた隊員が断末魔をあげたところで、おもわずアヤは目を塞いだ。


「もうやめてよ!!」


 その声に応じて、オウゴンサンデーはビデオの停止ボタンを押す。


「わかっていただけましたか?あなたが知っているツグミさんは、もはやツグミさんではありません。暗闇姉妹、トコヤミサイレンスとして覚醒してしまいました。ですが……」


 サンデーはアヤの耳元でささやく。


「私たちなら、きっと彼女を、元の優しいツグミさんへ戻すことができるでしょう。そのために、私たちに協力していただけませんか?」

「…………」


 アヤはその言葉を聞くと、恐る恐る顔から手を離し、サンデーの顔を見つめた。


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