表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
318/355

スマホの時(どうしてスマフォじゃなくてスマホなのかしら?)

 その返事を聞いたグレンが、勢いよく立ち上がった。どう見ても、アンヘルに襲いかかるつもりである。


「グレンバーン!」


 すぐさま諫めたのはオウゴンサンデーだ。


「先ほどの話、忘れたわけではありませんよね?」

「くっ……!」


 グレンはその言葉に奥歯を噛み締める。サンデーは説明した。目の前に座っているアンヘルは、数多いるアンヘルの内の一人でしかない。彼女(?)の命を引き換えに交渉しようとしても、それは無駄に終わるだろう。サンデーが静かに言った。


「まずは座ってください、グレンバーン」

「…………」


 渋々引き下がるグレンを、アンヘルは無表情で見つめる。


「アンヘル、そちらにも事情があることはわかります。ですが、なんとか糸井アヤと会うことは叶いませんか?」

「ダメですね」


 アンヘルには取り付く島もない。すると今度は、オウゴンサンデーがゆっくりと立ち上がった。


(戦うつもりかしら……!)


 そう思ったグレンも身構えるが、オウゴンサンデーの行動は違った。


「お願いします、この通りです……!」


 サンデーは、深々と天使に頭を下げたのだ。グレンは意外に思った。本人も自負する最強の閃光少女であり、魔法少女の国の、事実上の支配者であるサンデーが頭を下げたのだ。カンノンプラチナの顔色を、グレンがうかがう。


(師匠が人に頭を下げた……!?)


 プラチナもまた驚いた様子を隠せていない。やはり、こんな事は滅多にないのだろう。


 天使の方は、無表情のままサンデーの様子を見つめたままだ。しばし間をおいてサンデーが口を開いた。


「それに、糸井アヤとの面会を却下しているのは、あなたの一存ですよね?」

「はい?」

「アンヘル、もう一人のあなたは神の身許にいるはずです。神に尋ねてくれませんか?オウゴンサンデーが、どうしても糸井アヤとの面会を望んでいる、と」


 頭を上げたサンデーは、アンヘルと見つめあった。というより、睨みあったという方が妥当だ。


 やがてアンヘルは椅子から立ち上がると、窓際に行き外を眺めだした。交渉決裂だろうか?グレンが固唾を飲んで見守っていると、アンヘルは微笑を浮かべた顔を、サンデーではなく、グレンへ向けた。


「神は前向きに検討なさるとのことです。しばらく、お待ちください」

「わかりました」


 グレンに代わって返答したのはサンデーだ。


「部屋を用意してあります。食事が終わり次第、案内いたしましょう」


 アンヘルはうなずくと、笑いながら給仕の魔法少女へ言った。


「アジフライ、もっと食べてもいいかな?」


 その後、オウゴンサンデーはアンヘルをVIPルームへと案内した。そんなサンデーを、ずっと廊下で待ち構えていた魔法少女が一人。


「ねぇ、サンデー」


 グレンバーンは腕組みをしながら壁にもたれかかり、サンデーに尋ねる。


「さっき、アンヘルに頭を下げてたわよね?」

「それが、なにか?」

「どうして、そこまで糸井アヤにこだわるの?」

「それは、あなたも同じでしょう」

「そりゃそうよ。アタシとアヤちゃんは友だちなんだから」


 だが、いつの間にかオウゴンサンデーが、アヤと熱い友情を結んだとは考えにくいグレンバーンなのである。しかしサンデーは、返事のかわりに、薄い長方形な物体をグレンに差し出した。


「なによ、これ?」

「我々、魔法少女がお互いに連絡する時に使う道具です。まあ、携帯電話のようなものだと思ってください」


 携帯電話ならグレンも知っている。が、奇妙なことにその物体には、ボタンが一つしかついていなかった。ボタンを押すと、画面に光が灯る。まるで持ち運べる小さなテレビのようであった。そういえば、先ほどキューブで行った戦闘力テストで、サンデーが手にしていた光るパネルは、これの大型版のようだったのをグレンは思いだす。


「従来の携帯電話とは、まるで異なるものです。我々は賢い電話、すなわちスマートフォンと呼称しています。画面は全てタッチパネルになっており……」


 グレンはイライラした様子で尋ねる。


「それで、どういうことなの?電話でないと、アタシに話せないことでもあるの?」

「いいえ。それよりも、そのスマートフォンには動画を再生する機能があります」

「動画?」

「それが、私が糸井アヤにこだわる理由……と言っておきましょうか」


 サンデーは、グレンにスマートフォン内の動画を再生する方法を、簡潔に教えた。グレンは愚鈍ではない。後は直感的に操作方法を悟るだろうと、サンデーは考える。


「わかった。その動画とやらを観てみる」

「その動画を観て、どういう感想を持とうが、あなたの自由です。しかし、これだけは言っておきます」

「なに?」

「どんな事情があれど。村雨ツグミが、魔王と契約した唯一の魔法少女である限り。私は彼女を狙い続けますよ」

「……そう」


 それについては、まったく相容れることができないグレンであった。


 グレンは自分の部屋へ戻ると、すぐに窓辺に向かった。西に傾いた太陽の光が、魔法少女の国を茜色に染めていく。そんな窓の風景を、グレンはカーテンで遮った。一人になりたかったからだ。


「ええと……これを、こうするのよね……?」


 グレンはサンデーから貰ったスマートフォンを操作する。問題の動画には『98ー99ー00ー01』とタイトルがつけられていた。数字の意味は、グレンにはわからない。しかし、知りたいと思う。サンデーがなぜ糸井アヤに執着するのか。グレンはタッチパネルに表示された再生マークにそっと触れた。


「あ、これは……!」


 グレンは思わず顔をほころばせる。画面に表示されたのは、小学生の糸井アヤであった。夏休み。これから父と一緒に、母方の祖母の住む田舎へ遊びに行くのである。


 とここで、誰かがグレンがいる部屋のドアをノックした。


「はい!」


 誰かしら?そう思いながら、グレンはすぐに玄関のドアを開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ