少女が悪魔になった時
ジュンコの運転するミニバンが下山川沿いの道路を、下流に向かって走る。助手席にはツグミが座り、後部座席が折りたたまれ広くなったスペースにはアカネがしゃがんで待機している。アカネはもう一度、防水バッグに入っている装備を確認した。
「よし!対向車は見えなくなった!もういいだろう!」
ジュンコが後ろに向かって叫ぶと、アカネはミニバン側面のスライドドアを開き、防水バッグを川に向かって放り投げた。そして、自身もまたミニバンから飛び出し、川に向かって落下する。
「変身!!」
アカネの全身が赤い炎に包まれた。炎は間もなく収まり、真紅のドレスと、それとは不釣り合いな無骨な籠手を装着した、閃光少女グレンバーンとして姿が現れる。グレンは体を翻して川に着地した。水深は10センチ程度で、川底の石が透けて見える。戦う場所としては申し分ない。先に落下していた防水バッグを掴むと、グレンは一番近い山林へと突入していった。
その様子を見届けたツグミが無線機に叫ぶ。
「サナエさん!グレンちゃんは無事に山に入りました!」
「見えていましたよ!了解です!では、作戦通りに行きましょう!」
ミニバンから100メートルほど距離を開けて追走していたサナエが、スーパーバイク、マサムネリベリオンのアクセルを吹かし、ミニバンを追い越していった。しばらくして、サナエから通信が入る。
「こちらパトロールワン!合流地点の安全を確認しました!どうぞ!」
「もしもし、サナエ君?了解した。今からツグミ君をそこへ連れて行くよ」
そうジュンコが応答する。
やがて下山川沿いのとあるポイントで、ツグミはミニバンから降りた。そこには堤防に階段がついており、ツグミでも必要があれば河川敷に降りることができる。ツグミは背負っていたリュックサックから、双眼鏡を取り出した。
「ではツグミ君、君の役割を確認しておこう。君の仕事はグレン君の誘導だ。グレン君は君の発信機を頼りに山中からこの河川敷まで敵を誘導する。必ずしもここに直接出てこられるとは限らない。双眼鏡で周りをよく見張ってくれ。そして、グレンバーンとヒスイローズが河川敷に出てきたら、すぐにサナエ君に連絡するんだ。グレンバーンとスイギンスパーダのコンビで敵を叩く。それまで、サナエ君はこの周りを巡回しているから、危なくなったらすぐに呼ぶように」
「わかりました!」
まもなくジュンコのミニバンが去っていった。彼女はこれから電波の良い場所へ陣取るのだ。ツグミは無線機でグレンの位置を確認する。険しい山道も閃光少女にとって問題にはならないらしく、光点はどんどん山中へと進んで行くのだった。
山林を突っ切って急峻な斜面を一気に駆け上がったグレンは、そこで防水バッグを開封した。そこにはメカの塊のようなゴーグルが入っている。グレンは、ダークグレー色に統一された、ほとんど目隠しのようにも見えるそれを顔に装着した。事前に教えられた通りにスイッチを入れると、ゴーグルのカメラ越しの映像がグレンの瞳に投影される。無骨な見た目のわりには、視界は悪くなかった。ダイヤルをひねり、通信を開始する。
「こちらグレンバーン。ハカセ、聞こえる?」
「通信は良好そうだ、グレン君」
グレンのゴーグルからハカセことジュンコの声が返ってきた。
「待たせたわね。下山に潜入したわ」
「ああ。では、君が装備しているゴーグルについて、もう一度説明しておこう」
ジュンコが事前に説明していたことを繰り返す。現場でこれから初めて使うのだから、おさらいをしておいた方がいいだろう。
「そのゴーグルは米軍が使っているサーマルゴーグルを私が改造したものだ。ボタン一つで通常の視界と、熱分布画像とを切り替えることができる」
グレンがゴーグルのボタンを押すと『スキャンモードを起動します』という電子音声とともに、視界が一変した。
「切り替えてみたけど、視界が全部青いわよ?」
「そりゃ昨晩までずっと雨が降っていたのだから森は冷えているよ。だからこそ何かが潜んでいればすぐにわかるはずだ。おっと、あまり君自身を見ないでくれよ。カメラが焼きついてしまうからね」
「無線機も組み込んだんでしょ?」
「だから私たちとこうして会話ができる。それに、発信機も改良した。視界の隅に地図が見えるだろう?」
「ええ」
その地図には5つの光点が点滅を繰り返している。それぞれ、ジュンコ、ツグミ、サナエ、オトハの無線機の位置だろう。実際、今度の地図には光点の横にチャンネル番号が付記されている。各機の位置を全て同時に見られるようにジュンコが改良したのだ。しかし、ここには自分の光点は表示されないはずなので、1つ余分にあることになる。
「それは大学の研究チームがいたところだねぇ」
ジュンコの説明によると、昔この山でラジウム鉱石を採掘してみる実験を大学の研究チームがしたそうだ。まったく採算には合わないので研究は中止されたが、その地点はラジウム鉱床が地表付近にあるため、放射線量が高い地域となっている。
「蔦人間をガイガーカウンターで調べたら、わずかだが放射線を測定することができた。地表の養分を吸って成長する植物は、体内に放射性物質を取り込みやすいものだからね。第一の候補として、その地域を調べるのが近道だと思ったのさ」
「それにしても、ずいぶん詳しいのね」
「郷土博物館で見たのさ。なにか下山に関する情報はないかと思ってね。決して遊んでいたわけではないんだよ?」
(遊んでない?それは本当かしら?)
ガイガーカウンターの機能をゴーグルに組み込むことはできなかったが、防水バッグの中に手持ち式の物が入っている。しかし、ジュンコはもっと便利な機能をゴーグルに仕込んだようだ。
「地図に地形も表示されているわね」
「ゴーグルにソナーの機能も組み込んでいる。蝙蝠が超音波の反射を利用して地形を把握するように、そうやって君の周囲を計測しているのさ。音や、動く物には特に敏感に反応するように調節しているから、それで敵の奇襲に備えてくれたまえ」
こうした発明品はハカセの面目躍如であろうか。徹夜で組み立てに付き合わされたサナエにも感謝しなければならない。
「わかったわ、ハカセ。つまり、大学の研究チームがいたところにまずは移動。そこで熱分布画像に切り替えて辺りを探す。それでも見つからなかったら、アタシが大きな声でヒスイローズを遊びに誘う、と」
「ははは。表現はともかく、その通りだ。ツグミ君を含めて私たちはすでに配置についている。私の仕事は君のバックアップだ。君が見ている映像はこちらでもノートパソコンでモニターしている。存分にやってくれたまえ。それと、最後に注意点だ」
ジュンコが言う。
「そのゴーグルの防水性能は完璧だが、精密機械だ。多少は耐えるだろうが、君が本気で炎を出すと、熱で壊れてしまうだろう。あくまでそのゴーグルは山中でのみ使えるものと思ってほしい。まさか森を焼き払うつもりはないんだろう?」
「もちろんそんなつもりはないわ。わかった、作戦を開始する」
山火事は起こさない。それでいてヒスイローズの弱点をつく。その秘策をすでにグレンは蜘蛛の魔女との戦いで身につけていた。
やがてグレンは、かつて大学の研究チームがいたのであろう地点に到着した。簡易なプレハブ小屋が、植物の蔦で覆われている。サーマルゴーグルの熱分布画像を見てそれを確認する。しかし、これはヒスイローズとは関係の無い、自然の植物だったようだ。
「こちらでもモニターを続けていたが、怪しい物体は見つからなかった。しばらく通常の視界で周りを探索してみてくれ。熱分布画像の方はこちらでモニターしているから、何かわかれば君に報告するよ」
「了解」
グレンは言われた通りにする。プレハブ小屋を中心に周囲を探索するが、グレンもジュンコも何も見つけられない。もしやと想いプレハブ小屋の方も調べてみる。
「ハカセ、この小屋、周りは蔦で覆われているけれど、入り口の引き戸は蔦が無いわ。誰かが最近ここを開けたのよ」
「熱分布画像の方では変わった物は見えないが、用心してくれ。もしかしたら熱を欺瞞している可能性もあるからねぇ」
グレンはプレハブ小屋の中に慎重に入ってみるが、要するに、ただの箱だ。隠れられそうな場所はどこにもない。もっとも、透明で、熱を放射しない動物でも潜んでいれば別だが。
「焼き払ってみるかい?」
「ダメよ!灯油のポリタンクが置いてあるわ!」
「灯油の?不用心だねぇ、落雷でもあって引火したらどうするんだか」
ジュンコは自分の言葉を棚に上げてそうぼやく。
「でも空っぽみたい」
グレンは部屋の隅に置かれたポリタンクを振ってみた。
「?」
ここで奇妙な事に気づいた。長年放置されていたプレハブ小屋の床には、厚くホコリが積もっている。当然ポリタンクを取ればそこはキレイなのだが、同じようにポリタンクが置かれていた跡がもう1つ分あるのだ。
「どう思う?」
「入り口の蔦の件といい、根城にはしていないにしろ、何かしらこの小屋で用を足しているのだろう。ここでヒスイローズを待ち伏せしてみるかい?」
「いいえ、そんなまどろっこしい事なんてしていられないわ!」
グレンはプレハブ小屋の外に出た。
「ハカセ、ゴーグルのソナーの感度は上げられる?最大まで増やして」
「わかった」
グレンは山林の中でも、なるべく木が密集していない、開けた場所に陣取る。音をなるべく遠くまで届けるためだ。
(シズカちゃんが残してくれたヒント、今こそ活用させてもらうわ!)
「グレン君、準備できたよ」
ジュンコからの報告を聞いたグレンは、まず一つ、深呼吸をした。そして、まずは用心深くつぶやく。
「草笛ミドリ……」
そして辺りと、ソナーの反応を確かめる。何も起きない。
「草笛ミドリ」
今度は普通に喋るが、同様に反応は無い。
「草笛ミドリ!」
反応は無い。グレンは再び深呼吸して、腹に力をこめる。
「草笛ミドリ!!」
「グレン君、北東だ。プレハブ小屋でも反応があったが、そちらは小さいから無視していい」
グレンはその言葉を聞いた瞬間には山中を疾走していた。そして、木々の間から唐突に蔦が伸び、グレンの体に絡みつく。
「そう、これがアンタの弱点なのよ。種のようにばらまかれ、アンタの名前に反応せずにはいられないこの呪いが、アンタを追跡する手がかりになる!誰も巻き込む恐れが無い、山中であればなおさらね!」
「ギミャーー!!」
グレンの体に蔦を伸ばした薔薇は、すでに赤熱しているグレンの体に触れて、沸騰して死んでいく。カラクリさえわかっていれば、グレンとの相性は最悪であった。
「おいおい、ゴーグルを壊さないでくれよ?」
「大丈夫よ。アタシの頭は冷静だわ」
あらかた薔薇の化け物を片付けると、再び草笛ミドリの名前を叫び、そして追跡を繰り返していく。ソナーで検知する薔薇の反応が徐々に大きくなっていくのは、敵を追いつめている証だ。おそらく名前を何度も呼ばれているヒスイローズは気がついていないわけがないだろう。体勢を整えるまえに一気に片をつけてしまいたい。
「待ちたまえ、グレン君!」
突如ジュンコがグレンを制止する。
「今、熱分布画像の方で何か光が見えた。すこし戻って君自身の目で確認してくれ」
「わかった」
グレンは少し道を引き返すと、ゴーグルの視界を熱分布画像に切り替える。見回すと、たしかに遠くの方で、オレンジ色の光が見える。つまり、その部分には熱があるのだ。人体と同じくらいの温度の熱が。木の根に足を取られないよう注意しながら、グレンは慎重に近づいていった。だが、近づけば近づくほど、自分が見ている、おぞましい物の正体がわからなくなってくる。
「何……何なの……これ……!?」
グレンは視界を通常モードに戻した。それは木だ。大木である。大人3人くらいがお互いの手をつないでやっと抱え込めるほどの太さだった。熱分布画像に切り替えて再び観察する。その視界で見ると、複数の人間の体が、オレンジ色の光として浮かび上がる。まるでその木の中に詰め込まれているかのように。
「これって……!?そんな、まさか!?」
グレンはゴーグルのメカ部分を上にスライドさせ、肉眼でしっかりと見た。木の表面にあるうろのような模様は、よく見たら人間の口だ。そして、その口が小さな声で求めているのだ。
「タスケテ……タスケテくれよ……タスケテくれよ、グレンバーン……」
「ひっ!?」
(これって……田口ケンジ君なの……!?)
思わずのけぞるグレンの耳元でジュンコが叫ぶ。
「グレン君!後ろだ!」
その言葉に、即座に振り返ると、彼女はいた。
ヒスイローズとジュンコたちが命名した閃光少女である。すでに深緑色の修道服のような衣装を身にまとっている。背後から奇襲してくるかと思いきや、腕を組んでグレンを見つめていた。
「ずいぶんと……気安くワタクシの名前を呼んでくださいましたわね」
「……いけなかったかしら?」
グレンが一歩、ローズに近づくと、彼女は優しい微笑みを浮かべる。
「かまいませんわ。あなたとワタクシの仲ではありませんか」
考えてみれば、グレンはイラストやツグミたちの報告でしか彼女の事を知覚していなかった。こうしていざ目の前に現れると、やはり信じられないという気持ちが勝る。
「やっぱり、おかしいわよ!たしかに、アンタは私をかばって!アタシの腕の中で……死んでいったじゃない……!」
自分でもどうしてかわからなかったが、グレンの目に自然と涙が浮かんだ。その時の感触が。徐々に体温を失っていくローズを抱いていた腕の感触が、2年の時を超えて再び蘇る気がする。
「そう……でも、ワタクシは仮死状態の種となって、流れ、流れ、この山に辿りついて……」
「それで、生き返ったというの……?」
「いいえ」
ローズはグレンの言葉に首を横に振る。
「ワタクシは、まだ仮死状態のままですの。なんとかこうして仮初めの体を作ることができるようになりましたが……もっと養分が必要ですわ」
養分。その言葉を聞いて、グレンは背後にある、おぞましい木の正体を悟る。
「そのために子供たちをさらったのね!生かさず、殺さず、生き返るためのエネルギーを吸い取る餌として!!」
「同意の上ですわ」
「誰がこんな事を想像できるのよ!!アンタに何の権利があってこんな……」
「権利ならありますわ!」
ローズが毅然とした態度で言う。
「グレンバーン!あなたもそうでしょう!ワタクシたちは、命がけで悪魔と戦ってまいりました!人間の自由を守るために!でも……その結果、ワタクシたちはどうなったの?」
グレンは口をつぐむ。人類のために戦った閃光少女でさえ例外なく、社会的には何も認められていない。報酬も無い。補償も無い。称賛こそされど、それはあくまで自分たちが被っている仮面に対しての称賛だ。役目を終えた閃光少女は、その仮面を捨てて、犠牲を捧げた自分たちの人生に、ただ虚しく戻るだけなのだ。
「あなたとワタクシは同じ。悪魔によって家族を奪われた者同士。だから、ワタクシとあなたは心から通じ合える友となった。そう!ワタクシはあなたと同じですのよ!家族が死んだ時、悪魔を信じない社会は、保険金の支払いまで拒否した!そして、今度はワタクシ自身の命まで捧げたのです!ワタクシにこのまま死ねと?嫌ですわ!ワタクシが人生を取り戻すために、今度は社会が!ワタクシたちのために恩を返すべきですのよ!」
「そのために、この子たちの人生が亡くなってもかまわないと……?」
グレンは木に取り込まれた子供たちを一瞥する。
「日本の出生数は、毎年100万人を超えていますわ。その内の10人ほどが、この村で消えたからといって、社会には10万分の1の影響しかない。簡単な計算でしょ?」
まるで些細な事のようにローズは言う。
「おわかりいただけましたか?でしたら、どうかこのまま山を降りてください。ツグミさんにも言いましたが、あなたたちの味方になりたい気持ちは本当です。見逃していただけたら、復活の暁には、きっと一緒にオウゴンサンデーを倒しましょう」
「ふざけんな!!」
「!?」
グレンがローズを大喝する。
「何が10万分の1よ!家族にとって、友だちにとって、その子たちは唯一無二の存在なのよ!何がアタシとアンタが同じですって!?違うわ!あなたは自分の家族を失っていながら、そんな事もわからなかったの!?保険金がでなかったぁ?あんたは家族が大切だったわけじゃない!自分のことしか見ていなかったのよ!」
「自分のことしか見ていない……」
ローズがグレンの言葉を反芻する。
「それは自分が恵まれているからこそ言えるセリフですわね。あなたも色々なものを失えば、ワタクシと同じ考えに至りますわ!」
「その!!考えが!!今!!違うから!!こうなっているんでしょうが!!」
腹の底からそう叫んだグレンは、ローズを見据えた。
「アンタは……今のアンタは……アタシたちが憎み、倒してきた……『悪魔』そのものよ……!」
その瞬間、グレンに向かって5体の蔦人間が襲いかかった。完全にグレンの死角からの不意打ちである。もはや、なりふり構わないつもりか、人間に擬態さえしていない。
(なら、死になさい)
ローズはそう願った。薔薇の呪いと違い、蔦人間は体内の水分が多いため、しばらくはグレンの熱に耐えられる。蔦で絡め取り、首を絞め殺すつもりだった。しかし、その予想は裏切られる。
「おらおらおらおらおらぁっ!!」
体を翻したグレンは5体の蔦人間を即座に殴り倒した。
「気づいていましたの!?」
「気づいてはいないわ。視えていたのよ」
その時には、既にジュンコから「後方から2体、左から3体だ」と耳打ちされていたのだ。
「グレン君、そろそろゴーグルを戻したまえ」
グレンは無線機から聞こえるその言葉に従って、再びゴーグルのメカ部分を目元まで降ろした。その様子をローズが冷ややかに見つめる。
「ふふふ。でも、場所が悪いわね。まさかこの一面を焼き払うつもりではないでしょう?その人形たちをご覧なさい。ただの打撃ではあまりダメージは……えっ!?」
グレンの手元から赤い閃光が走ると、彼女のそばでふらふらと立ち上がろうとしていた蔦人間の首から上が消し飛んだ。グレンは一通り赤い閃光を弄ぶと、それを脇に挟んで構える。それはヌンチャクだった。燃えるように赤熱する二つの棒が、炎の鎖によって連結されている。
「新しい技を身につけたのね」
「2年間も山に引きこもっていたアンタとは違うのよ」
山火事を起こすことなく、ピンポイントに熱を集中させて敵を倒す。この方法であればできるはずだ。少なくとも、河川敷に設定した、キルゾーンへと誘い出すまでは。
『戦闘モードを起動します』
ゴーグルの電子音声がそう告げると、ゴーグルの正面や側面から、緑色に発光するセンサーが新たに露出した。
「君の視界を拡張する。襲ってくる敵は私がマーキングするから、各個撃破してくれ。来るぞ!」
ジュンコがモニターしているセンサーにも、そしてグレンの視界にも、地面から無数に生えてくる蔦人間が映る。ざっと見ても10体以上がグレンの視界から見えた。だが、ジュンコが地図にマーキングした敵は、その倍を超えている。グレンはヌンチャクの柄を両手で握り直した。
「ハカセ!あんたのサポートを信じるわ!さぁ、火蓋をきるわよ!」




