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暗闇姉妹が動く時

 夜が明けた。ジュンコの工場は二階部分が彼女の自宅ともなっている。彼女は浴室でシャワーを浴びながら昨夜の事を思い出していた。グレンバーンのことである。


(彼女は大丈夫なのだろうか?)


 ジュンコの工場へ集まった少女4人が暗闇姉妹として動くことが決まったのは良かった。仕事の打ち合わせも無事に済んだ。しかし、その報酬のことで意見が割れたのである。ジュンコは当然ながら、仕事料を支払うつもりでいた。というより、天罰代行依頼により依頼人から金銭等を受けとっている。それを実際に仕掛ける姉妹たちに分配するのは当然だろう。だが、それをグレンバーンは拒否したのだ。


「え、なんでですか?」


 サナエは報酬を受け取るのが当然だと思っていた。そもそもだが、オーシャン/オトハたちが彼女を探偵として雇うのにも金銭を支払っているのだから、今後もそれが当然だと考えている。


「そんなこと、お金をもらってやるもんじゃないわ!アタシたちが正しいと思うからやるのよ!だいたい、依頼人からお金をとるのも気に入らないわ。今さらやめろとは言わないけれど、それって人の弱みにつけこんでいるんじゃない!?」

「否定はしない」


 ジュンコは困ってしまった。もしかしたら報酬の割合で揉めることはありうると思っていたが、報酬自体の是非が問題になるとは予想外だったのだ。


「まーまー、ちょっと落ち着きなよ」


 若くして老獪なアケボノオーシャンは折衷案を挙げる。


「依頼人だってこちらが報酬を受け取らないと、頼みを聞いてくれるのか不安になっちゃうよ。とりあえず私たちはお金に困っているわけでもないし、どうしてもの時のために、一時ジュンコさんに預かってもらったらいいんじゃないかな?」


 グレンはそれでも不満そうだったが、不承不承もう何も言わないことにしたようだ。ツグミも同様である。というより、みんなに遠慮しているようだ。


「私、あんまり役に立てそうにないから……」


 そう一言だけつぶやいたがジュンコはそれを否定する。


「いいや。命をまとにして仕事をする以上、君も私たちと同じ危険に身を晒すことになる。そこに差別はないよ」

「では、仕事料は必要経費を差し引いた後に山分けでいいですね?」


 オーシャンがすかさずそう切り込む。ジュンコからすればもとより異存は無いにしろ、オーシャンの抜け目のなさに舌を巻いた。


「いいだろう」


 話はこれで一応まとまった。後は実際に仕事にとりかかるだけだ。


 そして現在。シャワーの水を止めたジュンコは、自身の長い髪からしたたり落ちる水滴を眺めながら思う。


(グレンバーン君が高潔なのはよくわかる。しかし、この仕事はいずれ正論では割り切れない問題にぶつかるはずだ。遅かれ、早かれ、ね。その時に、彼女の心が折れてしまわなければいいのだが……)


 ベッドに寝ていたツグミが目を覚ました。


(あれ?ここは……)


 アカネのアパートではない。しばし混乱するが、昨夜のことを思い出した。


「あ、そっか。ジュンコさんの部屋だ」


 それは昨夜の打ち合わせで決まったことだ。今回の仕事は2チームに分かれて行う。いわゆるグレンチームとハカセチームに分かれたのは、作戦の都合もあるが、二人の不仲を懸念したオーシャンなりの采配でもある。そして、ツグミはハカセチームに含まれていた。そこで、ツグミはそのままハカセことジュンコの部屋に泊まることにしたのである。グレンは反対したが、結局その方が合理的だったことと、何よりツグミがジュンコのことをもっと知りたいと思ったので、そうなった。

 ベッドから起きて着替えを済ませたツグミは、テーブルに置かれている食事に目を留めた。たぶん、ジュンコが用意していたものだろう。チーズを乗せてオーブンで焼いたトーストとコーヒーが入ったマグカップが置いてある。同様の物が入っていたのであろう皿と空のカップも一組分残されていた。おそらくジュンコはすでに朝食を済ませたのだ。ツグミもまた急いでそれを食べることにした。ジュンコチームが城北地区下山村に出発する予定時間まで、あと30分もない。


「おや?よく眠れたかいツグミ君」

「むぐぅ!?」


 そう言って全裸で部屋に入ってきたジュンコに驚いてツグミは盛大にむせた。


「ふ、服を着てください!」

「はて?私の体は、君たちの体と比べて何か変かい?」

「私たちと同じだから困るんです!」


 ツグミが窓の外を見ると、スクーターに乗ってきたオトハが工場の敷地へ入ってくるのが見えた。閃光少女アケボノオーシャンの姿ではないのは、もう自分の正体をジュンコに開示しているからだ。ツグミは助けを求めるように外に出る。


「おやおや、おはようございますツグミセンパイ。ジュンコさんに食べられそうになったんですか~?」

「誤解だねぇ。不可抗力だねぇ」


 取り急ぎ下着とシャツだけ着たジュンコが顔を出し、からかうオトハにそう言った。


「とりあえず、車にキャンプの道具を詰め込んでおくれよ」


 ジュンコの指示に従い、ツグミとオトハはテントや寝袋といったキャップ用品をミニバンへ詰め込んだ。


「なんだこれ?」


 オトハが既に車載されていた金属製の箱を開いてみると、中には花火が入っていた。


(ハカセのおもちゃかな?遊びに行くわけじゃないんだけど……)


 まもなくスーツの上から白衣を羽織ったジュンコが現れ、無線機や車載用電話、ノートパソコンや各種測定器のチェックを行い、これもまた車に積む。


「これで準備完了だねぇ。早速出発しよう」


 昨夜のごとくジュンコ、オトハ、ツグミを乗せたミニバンが、城北地区下山村へ向けて出発した。ハカセチームは下山川上流にあるキャンプ場を目指すのだ。


「今日からゴールデンウイークだ。高速道路で少し渋滞に巻き込まれるかもしれないが、逆に目立つこともないだろう」


 ゴールデンウイークと今回やる仕事の時期が重なっていたのは好都合だった。被害者家族からの情報を読む限りでは、被害者も含めてこの村で頻発している行方不明者の多くが、下山|(ややこしいが下山村にある山の名前)付近で消息を絶っている。おそらくターゲットは山中に潜んでいると目星はつけているが、広い山中ですんなり見つかるとは限らない。ある程度は仕方がないとしても、オトハたちに学校を休ませるのは、怪しまれるのでなるべく避けたかった。この数日間が勝負だ。


(それにしても、被害者は全て男子中学生か……なぜだろうねぇ?)


 ジュンコにも今のところ理由はわからなかった。


 さて、残るグレンチームは、グレンバーンこと鷲田アカネと、中村サナエのペアである。しかし、この二人はそれぞれ別行動で移動し、現地で合流する予定だ。下山駅で電車を降りたアカネは、数日分の着替え等を詰めたキャリーバッグを引きずってタクシーに乗り込む。


「下山プリンスホテルまでお願いします」


 下山プリンスホテル。そこがアカネとサナエの集合場所であった。下山村にいる間の二人の拠点である。下山村で唯一の観光ホテルであるが、ゴールデンウイークにもかかわらず客はほとんどいない。二年前に下山川が豪雨による増水で堤防が決壊、氾濫したことがあり、以降はもっぱら堤防工事の業者がこのホテルを利用していた。しかし新しい堤防が完成した現在では、彼らすらいない。

 ホテルフロントの男性従業員がアカネに話しかける。


「ツインルームをご予約の和田アキコ様ですね」


 アカネは偽名でホテルにチェックインし、まずは荷物を部屋に置くことにした。


「お連れの菅井キン様も到着しております」


 サナエのことだ。はたして予約していたツインルームに入ると、サナエがニコニコしながら待っていた。


「下山村は温泉が有名らしいですね」

「観光に来たわけじゃないのよ、サナエさん。それに、有名と言ったって、温泉の看板なんて見なかったわよ?」

「いいえ、一応村内に一箇所だけ温泉宿があります。残念ながらほとんどの源泉は下山の山中に湧いているそうで。道が険しすぎて誰も山中の温泉には入れないんですよ。お猿さんか熊さんでしょうね、温泉に入るとしたら」

「あるいは、男子中学生だけを狙ってさらう変態の誰かさん、か……」

「惜しいですよね、せっかくのラジウム泉なのに」


 ほぼ同じ頃、ハカセチームもまた下山川上流にあるキャンプ場へと到着していた。到着時刻の目安であった正午までには、まだ時間がある。


「なにやってるんですかハカセ!?」

「なにって?人間は水辺と太陽があれば水着で肌を焼くのだろう?」


 服を脱いで日光浴をしようとするハカセが、キャンプ場の他の客|(特に男性)の目線を集めてしまっているので、慌ててオトハが止める。


「それは夏に、海ですることなんですよ~!目立つからやめてください!」

「オトハちゃーん!」


 今度はツグミが川の中洲から手を振っていた。


「広いからここにテントを立てるね!」

「だめだめツグミセンパイ!今は晴れているからそれほどでもないけど、下山川は雨が降るとすぐに増水するんだから!流されちゃうよ~!」


 二年前にこの川が氾濫したのは前述の通りだ。堤防が決壊して村が水没し、その災害によって生じた死者・行方不明者は少なくない。現在は新しい堤防が築かれ、ちょっとやそっとの増水では氾濫しないが、地理的には依然として危険な川であることに違いはない。


(まずいかも。このチーム、意外と自由フリーダムすぎるメンバーだ……)


 一抹の不安をおぼえるオトハは、ミニバンに積まれた自動車電話の鳴る音に気づいた。この電話にかけてくる人間は一人しかいない。


「アカネちゃん、そっちはホテルに着いた?」

「その名前で呼ばないで。まだアタシはハカセに気を許してないんだから」


 やはりアカネだった。しかしオトハと違って自分の正体をジュンコに開示していないアカネは、グレンバーンと呼びかけるしかなさそうだ。


「じゃあグレン。とりあえず、この電話は問題なく使えそうだね。無線機の方は?」

「今サナエさんがホテルの外でテストするところよ。大丈夫かしら?」


 オトハはジュンコに目配せすると、間もなくジュンコが持つ無線機からサナエの声が響く。


「こちらパトロールワン!HQ!応答願います!」

「もしもし、サナエ君かい?君にエッチだと言われる筋合いは無いねぇ」


 その会話を聞いたオトハがアカネに答える。


「大丈夫、うまく会話ができているよ」

「わかったわ。後でアタシの無線機もチェックしてみるから」


 電話を切った後にアカネはホテルの外に出る。先に外にいたサナエは自分の無線機をしまうところだった。入れ替わるようにアカネは鞄から無線機を取り出す。そのサイズは、携帯電話より少し大きい程度だ。ホテルとキャンプ場間は何キロメートルも離れているが、それでも問題無く通話できる。山中では携帯電話が使えない可能性が高いためジュンコが用意したのだ。おそらく何かしら悪魔の技術が使われているのだろう。


「アタシです」


 ジュンコからの返事が無線機から返ってくる。


「グレン君だね。通話は問題なさそうだ。無線機の液晶画面が見えるかい?」


 小さな液晶画面に、方位と、光る点が表示されている。


「そこに光っている点はチャンネルを合わせている別の無線機の位置を示している。つまり、今は私の位置だ。無線機は5人全員が持っているから、必要ならチャンネルを合わせて位置を確認しておくれ」

「わかったわ」

「さて、作戦の内容は憶えているね?」


 グレンチームの役割は情報収集と陽動、そして敵の殲滅だ。村内で聞き込みを行って敵のおおよその位置|(つまり山中のどこか)を掴んだらそこへグレンバーンが単独で突入する。敵を河川敷のキルゾーンまで引き寄せた後に、強化服を着たサナエことスイギンスパーダが川沿いの道路から合流して、二人で目標を叩くのだ。


「相手が何者か知らないけれど、そんなにほいほい誘い出せるのかしら?」

「それは昨夜説明したじゃないか」


 ジュンコとオトハの一致した見解によれば、おそらく山中は敵にとって何かしらの基盤となっていると予想される。別荘があるのか芋の畑でもこしらえているのか知らないが、敵にとってその場所は戦いに有利であると同時に、グレンバーンによって一面を焼き払われるリスクも抱え込むことになる。


「アタシはそんなことしないわよ!」

「もちろん我々はそう信じている。だが、敵からすればそのリスクは捨てきれないだろう?」


 グレンが単独で、つまり彼女の炎に巻き込まれる仲間がいない状態で山中に入るのも、敵にその危険を匂わせるためだ。そうであれば敵にとって多少不利になっても、山の外で戦いたいという両者の思惑が一致することになる。河川敷であれば、グレンバーンが本気で炎の魔法を使っても被害を抑えることができるだろう。ただし、そもそも川が増水しているとそこでは戦えない。


「だから我々が下山川上流のキャンプ場に布陣している。アケボノオーシャン君の結界で下山川の水を堰き止めるのさ。それで河川の水位をコントロールする。いわば即席のダムだよ。問題が起きた時の合図はアケボノ君と事前に相談しているよね?」

「大丈夫よ」


 そのためオトハは現在のキャンプ場、つまりジュンコたちがここで設置する予定のテントから、さらに川下に向かったところでテントを張り、一人でキャンプする段取りになっている。下山川が、オトハが向かうそのポイントで細くなっているのは事前に調査済みだ。グレンたちが敵を殲滅するキルゾーンは自然そこからさらに下流となる。ジュンコはこうして作戦内容を連絡するほか、各種観測により情報面でのバックアップをする予定だ。特に天候はよく調べておきたい。ツグミは……電話番だ。


「では、まずは情報収集だねぇ。君にピッタリの方法を用意してあるのは事前に打ち合わせした通りだ。先方にも連絡はついているから、思いっきりやってくれたまえ。時間には気をつけてくれよ。今が正午を少し過ぎたところだが、最初に君が行く中学校に、我々の協力者が現れるのは14時からだ」


 ジュンコの言葉にアカネは青筋を立てる。


「そうね、よくこんな方法を思いついたわ。たしかにこれなら一気に情報を集められる……」

「不服そうだねぇ」

「あたり前よ!」


 無線機の通話を切ったアカネはサナエと一緒に駐車場へと向かった。そこにはサナエのバイクが停めてある。


「お昼ごはんを一緒に食べに行きましょう。その後、まずは最初の中学校、つまり下山東中学校の傍までアカネさんをワタシが送ります。それから、ワタシは一人で聞き込みをしますから、もう一つの中学校、つまり西中学校までは徒歩で移動してください。そこでワタシと合流しましょう。最後に、今回依頼をもらった田口さんの家に一緒に行きましょう」


 アカネはそれを聞いて、とても大きなため息をついた。


 アカネはマサムネリベリオンのタンデムシートから降りて東中学校までそっと歩いていった。今はゴールデンウイーク中。つまり本来なら中学生たちもいない。教師たちもいない。誰もいないはずだ。しかしアカネの鋭敏な感覚はすでに何者かの存在を察知していた。


(……いるわね)


 ジュンコが事前に手を回して、この学校に情報提供者を集めているはずである。そして、彼らは間違いなくいる。息をそっと潜めて、おそらく自分が来るのを待ち構えている。


(思っていたよりも数が多いわ……!)


 見つからないように移動して、中学校を囲むフェンスを軽く飛び越えると、アカネは無言で空手の型をして精神を統一する。


(変身!!)


 誰にも気づかれないようにグレンバーンへと変身したアカネは、そっと校庭の様子をうかがう。


(こちらから先制して仕掛ける他ないわね)


 覚悟を決めたグレンは、大地を蹴って高々と跳躍し、空中で手刀を構える。


「おらあっ!!」


 校庭へと飛び降りたグレンは、そこに積み重ねられていた何十枚もの瓦を、手刀で粉砕した。その途端、割れんばかりの拍手が校庭に響く。


「みなさん、ご覧ください!ここ市立下山東中学校に、閃光少女のグレンバーンさんが来てくれました!どうぞ、みなさん!盛大な拍手でお迎えください!」


 下山村観光委員会の女性職員がマイクでそう呼びかけると、集まっていた小中学生や、その父兄、あるいは近所の高校生や老人ホームの面々までもが、さらなる拍手をグレンバーンに送った。グレンバーンの顔が、違う意味で、真っ赤に燃えた。


(くそっ!たしかに、たくさんの人から話を聞こうと思ったらアタシがこうする他ないけれど……ないんだけれど!あの悪魔!!)


 そう、ジュンコが下山村観光委員会に、グレンバーンが来ることを事前に通達していたのだ。一応名目上は「二年前の下山川氾濫による被災者の慰撫」ということになっているが、これは事実上ヒーローショー|(しかも正真正銘の閃光少女がしている)で人を集める算段である。

 ちなみに、この時の様子を後から知ったジュンコはこう証言している。


「私が観光委員会に電話したのは当日の朝9時だったんだよ?それで14時にそこまで準備されていて、そんなに人が集まったなんてねぇ。よほど娯楽に飢えて……いや、グレンバーン君は人気があるんだねぇ」


 観光委員会の女性職員がマイクを持ってグレンバーンに近づく。


「グレンバーンさんは今でも閃光少女として活躍なさっているんですよね?最近はどんな事件を追っているのでしょうか?」


 グレンは差し出されたマイクを奪うようにして受け取る。


「言っておくけど、アタシは……」


 不機嫌な顔のグレンがそう言いかけると、校門の影からサナエが覗いているのが見えた。自分の顔の口角を指で上に持ち上げている。


(グレンさん!笑顔です!笑顔!)


 そう念を送っているようだ。


(ぐぬぬ……)


 グレンの顔が、無理やりではあるが、ニッコリと笑った。


「実はアタシ、この下山村で最近よく起こっている行方不明事件を追っているんです!子供たちを誘拐するような悪いヤツをやっつけるのが閃光少女であるアタシの使命なの!みんな、何か知っていることがあったらアタシに教えてほしいな~!」


 グレンが手を振りながら愛嬌を振りまく様子を確認したサナエは、安心したかのごとくバイクに乗って去っていった。


「うおおお!グレンバーンって近寄りがたいイメージがあったけれど、間近で見ると意外とかわいいんだな!」


 男子中学生たちの、これくらいの感想ならグレンはなんとか耐えられた。


「うわ!うわ!マジ魔法少女じゃん、ウケるー!写メ写メ!」


 自分と同年代の女子高生からウケる、ならぬ、受けるダメージの方がはるかに深刻だ。

 委員会の女性が再びマイクをもって観衆に呼びかける。


「グレンバーンさんは1時間ほど、こちらでみなさんと一緒に過ごす予定です。トークショーの他にも、握手会、サイン会も予定しておりますので、みなさんどうぞお楽しみください!」


 その言葉を聞いてグレンは空を仰いだ。


(ああ、今日はいい天気ね……今すぐ骨になりたい……)


 グレンバーンにとって、ある意味どんな強敵との戦いよりも過酷な一日が始まった。


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