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いつかトべるモノ  作者: N.aro
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何かを映すモノ 3.

3.


 魔術。その言葉に一つ心当たりがあった。言うまでも無く、こないだ発現した〝鏡〟の能力のことだ。

「なるほど……。君崎君はビギナーだったわけか」

「らしいな。それにしても、突然魔術なんてものが使えるようになるとは思っていなかったぜ」

 黒崎雨によれば。さっきのストーカー野郎も魔術師らしい。

「いや、君崎君の場合、魔力を原にはしているけど、魔術ではないと思う」

「ん? そうなのか?」

「君崎君のは魔術じゃない。異能力だよ」

「……それって、なにが違うんだ?」

 大差ないように思える。言い方の違いで、両方超常現象じゃないか。

「魔術は、どんなモノでも基本は一緒。魔力を糧に、原子を操作する力。魔術で出来ることは科学でも出来るとされる。けれど、異能力は違う。この世界にあってはならないモノ。それこそ、何でもアリ。体系も何もない。そう言うなれば──」

 神の力。

 彼女はそう告げた。

「鏡の能力が──神の力?」

 そんな。ただの覗きに使えるだけの能力が神の力だって?

「ええ。そう言うのが正しいわね。特に君崎君のそれは」

 つまり──

「俺は新世界の神になる」

「チェックメイトです、キラ」

「…………」

「…………」

 まさかこのボケに黒崎が乗ってくれるとは思わなかった。

「ええっと、話を続けようか」

「そうね。……ライト君が書いたデスノートは偽……」

「そっちじゃない!」

「…………」

「…………」

 閑話休題。

「君崎君の能力。私は以前にも使う人を見たことがあるわ。彼は能力のことを鏡界結界<ミラーワール>と名づけていた」

「えらく中二だな。まぁカッコいいと思うけど」

「そうね。そいつ中二設定大好きなやつだったわ」

「で、彼の鏡界結界とやらも、見えない鏡を作り出す能力なのか?」

 そう聞くと、黒崎は小さく首を振った。

「それはあくまで出来ることの一つに過ぎない。本質は、全てを写す<リアル・トレース>」

「全てを……写す?」

「そう。この世のありとあらゆる物体・現象をコピーする。まさに鏡の能力」

「つまり。いかなることでも、起きたことならば、再現できる。そういうことか」

「理論上は、ね」

「それってめちゃくちゃすごくないか」

 だって思い浮かべたら、好き──

「好きな人の身体も再現できるわよ」

「…………」

 どういうわけか、コイツはテレパシーが出来るらしい。

 僕の心は既に裸なのだろうか。

「まぁ、必要ないか。あんなに可愛い彼女居るんだし」

「彼女? 一応言っておくけど水樹は彼女でもなんでもないぞ」

「え? そうなの?」

 どうやら。多少勘違いをしているらしいので、一応経緯を説明したほうが良いだろう。

 とりあえず、手早く今までの経緯を説明する。

「ストーカー、ね」

「あいつ魔術師なんだろ?」

 襲撃してきた男。魔術師で、ストーカー。

「そうね。今のあなたでは、水樹さんを守るのはまず無理」

「ですよね……」

 だって、使えることと言えば、こんな風に、

 と、黒崎の足元に鏡を出現させた直後。

 突然平手でどこかを叩かれた音がした。

 それは当然僕の頬で、叩いたのは黒崎──。

「変態」

「ちょ、いきなり何すんだよ!」

「変態! 私には見えるんだからね。今鏡の力でスカートのなか覗こうとしたでしょ!」

「な……鏡は見えないんじゃ……」

 そのはずだ。

 昨日友達の前で作って試したのだから。

「見えないけど、私には魔力の動きが見えるの」

「魔力の動き?」

「そ。一種の共感覚みたいなもの」

「共感覚って言えば、音に色がついて見えたりするって言うアレか?」

 ある刺激に対して、同時にいくつかの感覚が同時に生ずる現象。

「そ。私の場合、魔力を感じる感覚、まぁ本当の意味とは違うけど、第六感を視覚で感じ取れるの。私は魔力の流れを色で認識することが出来る」

 なんだよそれ……反則だろ。

「申し訳ございませんでした。つい下種な下心が出てしまいました。どうかお許しください」

 とりあえず懇切丁寧な言葉で謝ってみる。

「ランチ奢ること」

「…………」

「あーじゃー水樹さん、いやクラスメイトに言っちゃおー」

「……是非。是非奢らせてください」

「ご主人様」

 付け足せ、という意味だろうか。

「……ご主人様」

「キモ」

「…………」

「ま、前の学校じゃ散々覗かれたし、別に良いけどね」

「散々覗かれた!? どんな学校?!」

「ま、色々あったわのよ」

「…………」

 閑話休題。

「さて。あの男だけど、私が懲らしめても良いけど、一応、君崎君も自己防衛くらいできるようになっといたほうが良いと思うわね。だって、ストーカーとしては、ストーキングするくらい好きな水樹さんと、変態、いや男子高校生が一緒に帰宅してるところを見たんだから」

 途中、変態と呼ばれかかったが、迂闊に反論できない。

「そうだな。何か、鏡の使い方を教えてくれるのか?」

「もし望むのであれば」

「助かる。何せ、今出切ることと言えば、スカート覗きが関の山だからな」

「じゃ、明日から昼休みに屋上で特訓、というのでどう?」

  

 

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