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いつかトべるモノ  作者: N.aro
11/15

何かを映すモノ 10.


 そんな中、戦局を変えたのは水樹だった。

 水樹が目で何かを訴えている。

 それを読み取ろうした瞬間、水樹の足が動いた。

 彼女は両足で上野の足首を蹴ったのだ。教壇を支えにした蹴りはかなりの威力を持っていた上に、不意打ちということも合って、上野は簡単にバランスを崩し倒れたてしまった。

 その瞬間、水樹の意図を察した僕はすかさず上野に走って上野の飛び掛り、そのまま手を押さえつけた。

 暴れられては困るので、胸に一発突きを入れておく。

 すると上野は咳き込み、抵抗は弱くなった。

 念には念を入れて、もう一発胸に突きを入れる。

 手加減はしたが、若干可愛そうな気もする。とりあえずしばらく抵抗はないだろうし、あっても水樹さえ助ければ逃げるだけで良いので、とりあえず水樹を開放することにする。

「大丈夫?」

 声をかけると、いまだ不安げな顔で小さく頷いた。

 両手は縄で縛られていた。それは自分では無理でも、他人であればすぐ解けるものだった。

 10秒ほどで縄を解く。

「立てる?」

「うん」

 ここで手など差し伸べたらカッコいいのだが、恥ずかしくてそれが出来ない。

 僕意外とヘタレだな……。

 立ち上がった水樹と再度目が合い、何だか気まずくなる。

「ええっと、まぁ、なんだ、無事でよかった」

「君崎君……」

 あー流れで抱きしめたりしちゃダメだろうか。いや、さすがにダメだよな……。

 そんな風に葛藤していると、上野が立ち上がるのが見えた。

「上野君! もう止めてよ!」

 水樹はが上野に懇願する。上野はただこちらを睨みつけてきた。

「お前、一体何が目的なんだ」

 そう聞くと彼は震える声で答える。

「目的? んなの知らねぇよ! ただ、俺はあった頃からずっと水樹さんのことが好きだったんだ!」

 それを聞いて、なんとなく分かった気がする。

 つまりコイツは、水樹に告白して振られ、そこに突然変な男(僕)が現れ、どうしようもなくなって、早まった行動に移ってしまった。別に明確な目的が在るわけではなく、ただ、突発的に僕に復讐したくなっただけ。

 そういうことなのだろう。

「なるほど」

 なんか納得した。

 ようは失恋したショックで冷静さを失った。それだけのことか。

「お前、水樹が好きなんだよね」

「そうだよ! この一年間ずっと水樹さんのことだけ考えたんだ!」

 一年間。長いな。

「そうか」

 そう呼びかけると、上野が手を振り上げた。

 炎弾を打つ気だ──。

 そう思う前に僕は飛び掛った。

 撃たせる間もなく、みぞおちに突きを食らわせる。

 今度は一切遠慮のない本気の突き。小学校六年間で鍛えた中段突きは、上野の意識をフライ・アウェイしてした。

「馬鹿やろー。好きだった期間なら俺のほうが長ーんだよ! 俺は中三の春から好きだったんだ! 」

 …………などとは、恥ずかしくて口が裂けても言えないので、心の中で叫んでおく。

 ついでに中三の頃からと言っても、その時は春期講習のときたまたま見て可愛いと思っただけで、実際その頃は恋してたわけじゃないけどな!

 誰に話してるんだ僕。

 とりあえず上野は意識ないみたいだし、もう大丈夫だろう。

 っていうか、死んでないよな。

 まぁ、一応悪者だし、放っておいてもバチは当たらないだろう。

 僕はとりあえず水樹のほうに振り返った。

「傷、大丈夫?」

 水樹は心配そうな顔で聞いてくる。

 そういえばさっき少し斬られたっけ。まぁ、かすった程度だし、もう血も止まっている。

「あ、うん。全然大丈夫」

 そう言う水樹は先ほどに比べれば安心しているように見える。

「そっか。よかった」

「……まぁ、積もる話はあるけど……とりあえず帰ろうか?」

 そう提案すると、彼女はようやく笑みを浮べて頷いた。


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