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9.二つに一つ

★★★

 真里ちゃんが事故に遭った後、僕の記憶は断片的にしか覚えていない。医者から電話をもらい病院に駆け付けた時、真里ちゃんは既に息を引き取っていた。僕は真里ちゃんを抱きしめてひたすら泣いていた。余りの激しさに医者や看護師から一度落ち着こう、と言われ部屋を出された、と思う。

 その後…僕はどう上がったのかわからないけれど、気づけば病院の屋上から飛び降りていた。


「それで目が覚めたら、ジュエ伝のメイドになっていた、ということ?」

「そうだ。僕は真里ちゃんだとすぐ気づいたよ」

「どうして、言ってくれなかったの」

「君は、僕のために死んだから」


 真里ちゃんは僕の誕生日プレゼントを買いに行く途中で死んだ。きっと僕と一緒になっちゃいけなかったんだよ。だからジュエ伝の世界で、せめて幸せになってほしかった。


★★★


「私、で、でも死亡ルートを踏めば元の世界に帰れるって言われたから」

「そんなの本当かどうかなんてわからないだろ!」

「私ドSなラピス様と一緒になっていいの?」

「君がまた死ぬよりはマシだ!それに宰相もそこまで悪い奴じゃない。ハッピーエンドルートは姫と結ばれて性格も少しは丸くなるはずだし」

「でも、あなたはどうするの?」

「シトリーヌとして君の幸せになった姿を見守って、その後は国を出るよ」

「嫌よ。私貴方以外とは絶対に結婚しない!」

「でもここで死んだら君は…」


「あーあ。せっかくうまくいっていたのにね」


 緑の光と黒い影。私はもう彼が誰だか知っていた。


「フローライダー。私を騙していたのね!」

「正解☆君は宰相に殺されたら、元の世界に帰れるよ。ただし、本当に死亡するよ♪」


 可愛い妖精が悪魔の笑みを浮かべる。私は妖精の本当の狙いに思い当たり、背筋が凍った。


「さあどうする?君は宰相の妻になるか死亡ルートを踏んで死ぬかの二択しかない。時間は無いよ。宰相がもうじき控室にやってくるまでの時間で決めるんだ」

「フローライダー貴方はどうして!」

「俺は大っ嫌いなんだよね~リア充が。爆発すればいいって思ったことは無いかい?君もかつてはそうだっただろ」


 違う、とは言えなかった。ジュエ伝をやっていた大学生当時、私は相当荒れていた。片思いだったサークルの先輩に振られて、クリスマスやバレンタインデーを呪っていた。

 街でカップルを見つけた時には大げさにため息をついたり、「リア充ボーン!」という言葉を何度使ったことか。


「人間って都合いいよね。ちょっと立場が変わるとすぐ幸せなお姫様な顔になっちゃってさ」

「私…」

「真里ちゃん」

「全部私のせいだ。私みたいなこじれた女は幸せになっちゃいけなかったんだ」


 頭の中が真っ暗になる。因果応報、人を呪わば穴二つ。そんな言葉が浮かんでは消えた。この罪を償わずして私は幸せになっちゃいけなかったんだ。


「いいねえ、大好物だよ。その表情。幸せを目の前にしたカップルが絶望に堕ちる…ククク。真里が選べる選択肢は宰相と結婚するか死亡するか。制限時間はラピス宰相が控室に来るまで、さあどうする?」


 フローライダーがベロリと舌なめずりをする。


「私浮かれすぎてた。ごめんなさい、晶さん」

「真里ちゃん聞くな。君は幸せになっていいんだよ。人間誰だって間違いを犯すし、汚い感情になる時があるんだから」

「じゃあ私は死亡ルートを選ぶ」

「それは絶対に僕が許さない」

「でも、このままじゃ私は晶さんの前で、晶さんとそっくりな顔の人と結婚するんだよ」


 きっと宰相を見るたびに、晶さんを失ったことは一生忘れられない。そんな生活耐えられない。でも私が死亡ルートを選んだら?主人公を失ったゲームはどうなるんだろう。私は死ぬとして晶さんはどうなってしまうのかわからない。


「時間がないよーお二人さーん」


 妖精が無情にも言い放った。全然考えがまとまらないまま私はシトリーヌ(晶さん)の手を握るだけで精一杯だった。

 冷たい足音が迫り、扉が開いた。


「姫、私を待たせて放置プレイですか?恥ずかしがってしまって、可愛いですね?」

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