3.最初の選択
私が最初に選んだキャラクターは隣国プラチナレ王国のエメラルダス王子だった。
なぜ彼にしたかというと、ぶっちゃけそんなに推しでもないから情が移らないだろ…ゲフンゲフンという理由は置いておいて、わかりやすい素直な反応をするジュエ伝初心者向けのキャラクターだからだ。よくある優しい幼馴染から恋が始まる感じの。
彼は王子という身分もあり私一人が振ったところで、他にも婚約者候補がいる。つまり心も痛まないだろう、という判断だった。
私はフローライダーから選択肢を提示されるたび、魔法の言葉「お断りします」「忙しいので」「ごめんなさい」を繰り返し、好感度を下げるべくひたすら王子の誘いを断り続けた結果…
『独身エンド』を達成したのだった!おっかしいなぁ!
「ん?私死なずにお話終わっちゃったよ」
「そりゃそうだよ。アンタがやったのは、ただ接触を避けただけ。憎しみを生まなければ何もフラグも立たないし、赤の他人で終わるだけだよな」
反省の牢獄(トゥルーエンド以外はここにたどり着く)でフローライダーはこともなげに言った。
「くー!(こいつやっぱムカつくわぁ。でも仕方ない)じゃ今度は少し好感度を上げてみようかな」
「いいぜ。ここはゲーム世界だから再チャレンジはOKだ。ただし2回同じキャラクターはダメだからな」
「え!そんなぁ…」
とはいえ、何度もチャレンジできるのはありがたい。ゲームって素晴らしいね。
ジュエ伝にそこそこの数のキャラクターもいるし、少しずつ好感度を調整してみよう。
晶さんへの貞操は守りつつ(そうじゃないと元の世界に戻った時申し訳なくて死にたくなるでしょ)比較的やりやすいキャラクターを中心に私は試していった…。
結果はどうだったかというと。
「友人エンド、兄妹エンド、筋肉エンド、喧嘩別れエンド…」
「死亡ルートまであと一歩だなあ」
「ううう」
何故ひと思いに皆殺してくれない!筋肉エンド(一緒に武闘会に出ようという戦友ルート)マジ謎だったし!
しかも主人公補正なのかピンチになると誰かしらキャラクターが現れて、不慮の事故という可能性が無い。
「そりゃ、おめぇさんがイージーモードに設定したままこの世界に来たからさ」
フローライダーが豪快に笑った。イージーモードがある限り、主人公の事故系ルートは避けられる。
先に言えよ、先に。あとなんかもはやですます調使わないなこの妖精。
「設定変えて!今すぐイージーモード解除して!」
「ほいよ」
私の周りにうっすらと白い光がかかっていたのが消えた。なるほど、これがイージーモードの守りの魔力だったのか。そして幾度目かの転生によって、私も気づいた攻略があった。
「多分好感度を上げ上げにして、最後に大きく裏切ることで死亡エンドが作れる、気がする」
「お、鋭いじゃんか」
「あと残るキャラクターは…ラピス様…か」
「何だよ、嫌なのかよ」
「ううん、そういうわけじゃないんだけど」
ちょっとだけ気が進まないだけ。でも元の世界に戻るためにはやるしかない。
最後のキャラクター「宰相ラピスラズロ」のビジュアルは、現実世界の婚約者、晶さんによく似ていた。