これで解放だ!と内心ほくほくであったのに、詰めの甘さが発覚!泣きたい気分な令嬢のお話はいかが?
「俺が面倒だと思うんだろ?けどな、俺が立っているだけで、みんなが俺に挨拶をしてくる。社交性がある俺は、皆に好かれているわけだ。だから、ひっきりなしに声をかけられる。」
自分は正しい。そう言わんばかりの、いや、あからさまにそうであるのだと確信している事を示す態度・口調は、決して珍しい事ではなく、彼の方の場合、常の事。それが何とも腹立たしい。
あの得意げな顔面を何度、地に叩きつけたいと思った事か。といっても、数えるだけ無駄であるから、数えた事もないのだけれども。
たびたび、私に対して偉そうにあれこれ言ってくる彼の方は、実際に偉い立場にある。
だから、より憎たらしく感じてしまう。
彼は、端的に言えば、皇太子。私の婚約者様でもある。昔から、周りにちやほやされ続けたがゆえに、自己肯定感が異様に高い御仁だ。
「俺の何が優れているか、貧相な感性のお前如きでは理解できないのか?俺が面倒だと思うのは、お前の感受性が劣っているからだ。」
面倒な。
常々、そう思っているのだけれども、私は本心を彼の方に言った事はない。私も貴族の一員。腹芸くらいはできる。本心を彼の前で顔に出した事などない。しかし、彼は意味不明な思考回路で結論を出し、こうしていちゃもんをつけてくるのだから、鬱陶しい事この上ない。この時間泥棒がッ!だなんて思ってしまうが、それは仕方のないことだろう。
彼は私が何て言おうと、私の言い分を受け入れる気はない。つまり、話にならない。
意見を聞いてやる。だなんて、自分は寛仁大度な度量のある人間なのだと主張しつつも、その実、聞く耳など持っていないのだから、会話になるはずもない。
だったら、彼と会話をするだけ無駄だ。
いつからだろうか。
私は自分の婚約者様と会話する事に諦め、彼の話を受け流し、適当にやり過ごす事で、彼の傍若無人な言動を対処するようになっていた。改善はとうに諦めていた。いつだって受け流すだけ。
はじめは会話をしようとしていた。好かれようとしていた。それは貴族として生まれ、彼の婚約者に選ばれた私の義務だと思っていたから。しかし、いつからか、その一切を私は諦めてしまった。
ーーそう。それは間違いだった。
私の犯した過ちは会話をやめた事。なすべき事をしなかったからこそ、彼は私を断罪しようなどと思い至ったのだろう。
「ヒナ・ダ・クララック!!俺はお前に婚約破棄を告げる。なぜだか、心当たりがあるだろう!!」
それは突然、婚約者様から私に言い放たれた。それも威圧的に、あからさまに此方が悪人であると言うかの様子。
罪人に今後の処遇を言い渡す閻魔大王かの如き態度はぶん殴りたくなる。顔面をグーで思いっきり殴り、鼻の骨を折ってやりたい。
「お前は皇太子の婚約者という立場にありながらも、恥ずべき行動を繰り返したな!?どうして、そのような事をしたのだ!」
私が無言である事を良い事に、婚約者様は高圧的態度で言い募ってきた。あぁ…鬱陶しいったらありゃしない。まるで、汚物でも見ているかのような気分になる。
婚約者様曰く、私は婚約者様の覚えの良いリリアム様とやらに嫉妬をし、リリアム様とやらを事あるごとにいじめたのだそう。
時にはリリアム様の教科書を破り捨て、時には他の令嬢達を引き連れ多人数で囲い罵り、時にはドレスを引き裂き嘲笑ったのだとか。そこまで構い倒したならば、それは嫌いではなく、むしろ好きなんじゃないかっていうほどに、私はリリアム様とやらを構いまくったのだとか。
んな暇ないんだが。
全くもって望んでないのに。私は一切、望まなかったと言うのに!
不本意ながら、私は皇太子の婚約者なのだ。国王陛下からの命令だから受けたが、婚約者となったがために、王宮でどれほどの教育を詰め込まれている事か。あ、いや、教育を投げ出し、遊びまわっている彼には分からないか。分かる脳があれば、私に婚約破棄を命じるような馬鹿な真似はできやしない。これは失礼した。
リリアム様とやらは男爵家の出身であるが、国で100年に1人くらいしか生まれないとされる"光の魔力"をお持ちになられた、逸材なんだとか。治癒魔法を扱える数少ない御仁であり、国において宝と言うべき存在なんだとか。
まさか、知らないとは思わないが、私も同様に光の魔力を持つ。私の魔力の量は国内でトップなんだが…まぁそれは今はどうでも良いか。
私が無言で彼らを見ていると、彼らは気持ちよさそうに、正義の名の下に様々な話を語る。
実に、つまらない話だ。
これならまだ、王宮で授業やら職務やらをしている方がマシ。あ、あくびが出そう。
眠たくなってきたが、婚約者様は以下のようなことを言いたいらしい。ちゃんと話を聞いてあげるとか、私はなんて寛大なのかと自分を褒めたくなる。感謝しろって奴らに言いたい。言わないけども。
私の行動は未来の国母となる立場において、不適当である。私のやらかした数々は、断罪すべき暴挙に他ならない。
罪深い私には、婚約破棄、国内からの追放、お家取り潰しを命じられるそう。何の権限があってぬかしているのか、問いたい。んな権限、貴方に与えられていないだろうに。
婚約者様のそばには寄り添うようにして、女性が立っている。あの方が、リリアム様とやらか。関わりをもった事はないが、婚約者様のそばで悲劇のヒロインという役柄に浸っている。
いや、せめて、役を演じろよ。
可愛らしい、つい守りたくなるような、ゆるふわな容姿をした女性。しかし、肉食獣のようにギラつく瞳が隠しきれていない。ピクピク緩んでいる唇はだらしない。視線は明らかに私を嘲笑っている。育ちの悪さが滲み出ているのか、動作に品がなく、立ち姿は優美さに欠ける。
役柄を演じるならば、徹底的にやれと言いたくなるお粗末さ。あの程度の力量で、皇太子妃という立場になろうとしているのか。王宮の中だけでも、うさぎのふりをした猛獣達が数多くいるというのに。それをうまくコントロールしつつ、国を守らねばならない。それが此奴らに出来るのか。
答えは否。
できるはずもない。貴族を制するどころか、掌で踊らされて、嘲りを受けて終わるだろう。何者かの操り人形になって使い潰される王妃とか笑えない。それが理解出来ないとは、何とも稚拙な脳であると見える。
あの程度の女性を見抜けぬから、婚約者様は出来の悪い方と陰でバカにされるのだ。まぁ、陰口を叩かれ、見下されている事すら気付けぬのだから、頭の中はお花畑だとか散々言われているわけで。いやはや、なんとも哀れな方だ。
バカだとは言え、長男であるのは彼。国王にしてやりたいと、国王陛下は願い、フォローのために私を婚約者にあてがった。私は道具かっての。勘弁して欲しい。
私が隣にいて、私がほとんどの責務をおって、やっと、皇太子として及第点をもらえているにすぎない。だから、私が王の後継者だと、一部の貴族には言われているのだ。
ある意味はその通り。
私は陛下からも全てを叩き込まれている。私1人で王も王妃もこなせるように。何なら、婚約者様などいなくても、私一人で国も王宮も回せる。
息子のために私にスパルタをかすとか、あの夫婦は鬼だ。私に自分達の全てを叩き込むのではなく、自分のアホ息子をどうにかしやがれっての。
「ロバート様。一方的にそう言い募られてはヒナ様がお可哀想だわ。ヒナ様のお話も聞いて差し上げましょう?」
リリアム様とやらは、まるで慈悲をかけてやる聖母様かのような様子で言う。高貴な貴族であるつもりらしい。施しを与えてやる側の顔つきをしている。
婚約者様の名を呼ぶ事は、婚約者様がリリアム様とやらに許したのかもしれない。しかし、私はいつ、彼女に名を呼ぶ事を許可しただろうか。
"聞いて差し上げる"とは、彼女はどのような立場から口にしていると言うのか。たかが、男爵令嬢ごときが、公爵令嬢相手に何を考えているのやら。
あー…コイツらがいる国に未来はない。前の会談で、彼の国の王子から求愛されたし、受けようかしら。この国に一切の情もなければ、やろうと思えば家族と共に逃亡できるわけだしな。
いやはや、陛下がもっと愚かで、何より息子を第一にするようなクズならば思い切りもつくと言うのに。残念だ。
「あぁ、リリィ。君はなんて優れた心を持っているのだろう。あれだけ君を困らせ悲しませた薄汚い女に情けをかけてやるなんて、君の優しさに感動している。」
リリアム様の優れた御心に婚約者様の感極まった様子。リリアム様は婚約者様の様子にご満悦だ。
まだ、婚約破棄が確定せぬうちに、婚約者である私の前で他の女性の愛称を呼ぶとは。
はしたない距離まで近づいて、いやらしくも腰を抱くなんて。それだけにとどまらず、耳から頬にかけて撫でつつ、熱い視線を向けるとは。
ここはパーティーという華やかな場であり、多くの貴族が集まる場。学生だけではないのだ。そんな場の空気をぶち壊し、自身の世界に入り込んでしまうなど、頭がゆるいとしか言いようがない。婚約者様の評価は既に地についている。それをさらに下げようとは酔狂な事だ。
「それで、ヒナ。最後に何か言いたい事でもあるか。天使のような心を持つ、リリィに感謝するんだな!」
あ、これ、私は何かを言わなきゃいけないやつか。面倒な話を振るなっての。何より、こんな茶番劇で私の名を、馴れ馴れしく呼ばないで欲しい。
すっかり、茶番劇の観客として、皆様が織りなすお粗末な劇を眺めてしまっていた。
さて。何を言おうか。本音を言うならば、どうでも良い。だが、それを言うわけにはいかない。
今回の騒動とは、無縁の貴族達が周りにいて、様子を見ているのだから。彼らの目がある以上、一族のためにも私は問題なき貴族であらねばならない。
「それでは、一言、失礼させていただきますわ。ハクラマ様、ご心願の成就、おめでとうございます。」
私はリリアム・ラ・ハクラマ様に向けて、カーテシーを披露して見せた。
顔には微笑を浮かべ、リリアム様を正面から捉える。
我が家は古くより、先祖代々、宰相を務めている。それは血による継承ではなく、実力によるもの。国の情報くらい把握している。当然の話だ。
リリアム様が我が婚約者様に猛烈アピールしていた事も、婚約者様がリリアム様に懸想している事も、すでにお2人がただならぬ関係である事も、何なら、婚約者様にはまだ言ってないようだが、リリアム様が妊娠しているであろうことも。婚約者様の取り巻き様方が私や私の家を貶めようと、リリアム様と共謀している事も。みんな、前々から知っている。
リリアム様は、家柄が良く、顔の造形が整った殿方ならば、誰にでも愛想が良い。つまりは腹の子の父は不明だ。ゆえにであるかは分からないが、女性からは嫌われ放題である。
彼女の家は貴族でこそあれ、裕福ではない。彼女自身、身に付けているものは質素。持ち前の美しさを生かし、自分の惨めな状況から抜け出すのだと、いつも豪語していたらしい。自分の身の丈に合わない壮大な夢を持つとは、向上心が高いのかもしれない。
そんなリリアム様は我が婚約者様ではなく、第二皇子の弟君が本命だった。
婚約者様とは異なり、冷静沈着であり、部下達の人望にも厚い。残念な方と言われる兄君と比較され、神童とされ続けた優秀なお方。
リリアム様は弟君に全く相手にされないからと、婚約者様にシフトチェンジをしたのである。彼女は意外と現実的な方だ。ただのあほらしく、弟君を追っかけ回していたら、ここまで大事にならずにすんだだろうに。
実は私は、彼らの計画を実はすでに知っていた。私も、私の両親も。そして、両陛下もご存知だ。
彼らの所業、計画は既に調べ上げ、その証拠も含めて全て書面にし、陛下に報告申し上げていた。
もし、婚約者様が此度の騒ぎを起こす事なく、心を入れ替え、私へ心をお戻しになられたならば、今回の事は目を瞑る。しかし、事を起こしたならば皇太子という地位から退けるように陛下は約束してくださった。
ついでに、愛する2人を引き裂いてはかわいそうだから、リリアム様も婚約者様と運命を共するよう、取り計らってくださると、陛下は約束してくださった。お優しいご配慮、ついウルっと来てしまいそう。まぁそうはいっても、私を彼の婚約者とした事は死ぬまで許さないが。
王家と我が家との婚約を軽々しく扱い、我が家を裏切る行為をしたのは、婚約者様。自身の周りの者達の言動だけを信じ、裏も取らず、たいした証拠もないまま、取り返しのつかない言動をとる浅ましさ。あまりの視野の狭さに思考能力の低さ。彼に王族としての器はない。
王家は彼ではなく、我が家を選んだ──そう、変えがきく皇太子を切り捨てた。
でも、大丈夫。
私を心配して迎えにきて下さったあの方がいる。下手に口出しはせず、場の様子を伺う弟君。彼の方は優秀でいらっしゃるから。貴方様が他国に行く事となって、その後にどのような扱いを受ける事になろうとも、この国はなんら困らない。
貴方様が愚かなおかげで、私は王の後継者などと言う重役から解放される。貴方様は会談やら業務に関わらないのに、私はアホみたく関わらさせられ、責務に追われていた。それは婚約者であり、次期王妃だから。これで解放される。嬉しい。田舎でのんびり過ごしたい。どの地に行こうか。
私は私の言葉にきょとんとする婚約者様、いや、元婚約者様やリリアム・ラ・ハクラマ様に再度、微笑みかける。ありがとうの気持ちをありったけ込めて。
状況が理解できぬとは何とも哀れである。だからといって、懇切丁寧に取り合うつもりはない。その価値も彼らにはないのだから。
「悲しい事に、殿下の御心がすでに私にはない事は承知いたしました。婚約破棄についても、しかと、承りました。……どうぞ、末長くお幸せに。」
先は悲しそうに顔を俯かせ、儚げに痛々しいと思わせるように。少し間を置いてから、弱々しく、それでいて健気に笑ってみせる。周りにいる貴族への印象作りは重要だ。私は哀れな女。演じるならば、完璧に。
「それでは、私は気分が優れませんので、これで失礼させていただきますわね。」
もう2度と相まみえる事はないでしょう。さようなら。せいぜい、この先に幸せがあると良いわね。ないだろうけど。国のつながりのため、彼が婿入りするあの国の女帝はーー…。
笑い出したい気持ちは微塵も出さず、私は最後まで哀れな女を演じる。
私に謝らせ、惨めな姿を見ようと計画していた、元婚約者様やリリアム・ラ・ハクラマ様は早々に帰ろうとする私にギョッとして、何やら呼び止めていたが、それに応じる義理はない。
さ、家に帰りましょ。
奴らに時間を浪費するのは嫌。これで解放なんだ。これ以上、彼らに時間の浪費をする必要はない。それだけが、今日の憂鬱を乗り切るための活力だった。
永きにわたる憂鬱からの解放に、私は思った以上にはしゃいでいたらしい。帰りの馬車で鼻歌を歌ってしまった。
正面に座っていらっしゃる弟君がクスリと笑った事で我に返る。
家に着くまで、演技をし続けなければならないのに。私もまだまだ修行が足りない。精進しなきゃだ。
「よろしかったのですか?」
「何がでしょうか?」
「兄上への今後の対応について、あの場でお話しさせていただく事ができました。今、流行りではありませんか。婚約者を蔑ろにする愚かな男を断罪するお話。」
美しいといった言葉が似合う顔に、優しげな笑みを浮かべる弟君。クスクスと笑い声を上げる姿すら、品があって麗しい。
街で流行りの物であり、密かに貴族令嬢達の間でも流行っている読み物。一般的に貴族社会では低俗とされ、見てはならないと言われる物。
私も、ご友人の方々にすすめられ、いくつか拝読した。見ている分には構わないが、いざ、自分がやるには労力がかかりすぎる。婚約者様にそこまで真摯に向き合うなど面倒だもの。絶望する瞬間を見たいと言うが、そんなやかましく、見苦しい様を見て、一層不快になるだけに決まっている。
そんな事より、気になる事がある。弟君は流行りの書物を読み、かつ、私も読んでいると承知で話しているのだろう。私が読んだ事をなぜ、知っている。
「意外ですわ。あのような話を貴方がお読みになるとは。」
「ふふ。低俗だからと切り捨てるのは愚者のやる事ですよ。多くの人を虜にしているならば、それだけの何かがあるのです。分からぬと切り捨て、思考停止するのは容易いですが、身にはならない。だから身を滅ぼすんです。」
自身の兄を愚者と言い切った。笑顔は天使のように麗しい。虫すら殺せぬ優しい王子と言われ、聖者のような人だとされている。皆様、騙されすぎ。綺麗な顔や、柔らかな物腰は見事に彼の腹黒さを覆い隠している。
「無様な姿をさらさせるのは、プライドの高い兄上には最高の罰となるでしょうに。まぁ、もっとも。かの国では人としても扱われないでしょうから、プライドも何もないでしょうけど。」
本当、詐欺だ。兄の行く末を思い、笑みを浮かべる様は、話している内容さえ分からなければ、綺麗な天使。それだけで信者が出来そう。
しかし、中身は悪魔。もっとも苦しむであろう罰を考えたのもまた、弟君である。
「………目の届かない場所にいなくなって欲しいだけですので。今日はいつになく、お話ししてくださるんですのね。」
「ふふふ。そりゃあ、ね。僕は今、凄く幸せですので。」
「……そう。」
「えぇ。邪魔な兄上を消せる上に、初恋の君にやっと気持ちを伝えられる。嬉しくないはずがないでしょう?」
「近いですわ。……その、私は婚約破棄された傷物です。」
悲しげに俯き、言いにくそうに弱々しげに言葉を紡ぐ。相手が悪いとはいえ、流石に王子に傷物との婚姻は認められないだろう。
優しく優秀。優良物件なのだろうが、私は求めていない。静かな地でのんびり過ごしたいと、父様達には前々から言ってあるんだ。
これから私の時間がはじまる。王子様などお呼びではない。
「なるほど?なるほど、ね。………最初からいなかったことにしましょうか。」
弟君は不敵な笑みを浮かべて、こんなに低い声が出たのかと言うほどに低い声を出した。身に秘めた獣が表に姿を露わにしている。
え?私は言葉選びを失敗したのかしら?問題なく対応できたはずなのだけど。何か間違えた?
「え?そんな、こと…。」
「大丈夫。アレの処分は僕に全ての権限がありますから。」
「いや、そうじゃなくて。」
「ん?心配はいりませんよ。どうとでもなりますから。いろいろ手は回してましたからね。本当、自爆してくれるほどの愚者で良かった。おかげで、手間が減りました。」
本当にやりそうで怖いわ。何らかの方法で可能にしそうだ。
それだけの能力があるから彼は恐ろしい。
「初めてお会いした時よりお慕い申し上げていました。貴女の横に立てるよう、頑張りますから。」
頬を赤く染め、はにかむように笑う姿は、純粋無垢な子が愛を照れくさげに語るが如きであり、胸が高鳴ってしまう。つい守りたくなるような見目麗しき王子様だ。見た目だけは。
私が今、肉食獣を目の前にした気分なのは、気のせいではないだろう。中身を知っているもの。
「大好きですよ、ヒナ嬢。貴女のためなら、国すら堕とせる。大陸を統一するも良しでしょう。必ず、僕に惚れていただきますので、よろしくお願いしますね?」
チュッとリップ音をさせたのはわざとだろう。私の髪を掬い上げ、キスを落とし、上目遣いでこちらを見つめる弟君の瞳には、人を惹き込むような妙な色気がある。瞳に映る私は狼狽えているのが見えた。
頬が熱い。火が出るんじゃないかと言うほどに火照っているのが分かる。
やっと、皇太子の憂鬱から解放されると思ったのに。厄介な方に狙われていた事実に、今の今まで気づけないでいただなんて、不覚だ。
自分の甘さが、何とも憎々しくてならない。
短編にございました^^
いかがでしたか?
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ここから、弟君の猛攻撃が始まるのでしょう
今まで、密かに想っていた弟君
どう猛攻撃をしていくのか…
そして、果たして、ご令嬢は耐えうるのか…っ!
まぁ、すでに包囲網の中なんですけどね^ ^
読んでいただき、ありがとうございました^ ^
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