7層目 ミミック
次の部屋に2人で進むと、部屋の真ん中には宝箱があった。
「ボーナス部屋みたいな感じか?とりあえず開けてみようよ。」
「―― ――!」
何か言っているが気にしてられない。
俺は興奮しながら宝箱に手をかける。近づく度に、興奮が増してもう何も考えられない。
心の底では「これはまずい。まずい。ただの宝箱にこんなに魅せられることは無いはずだ。宝箱を開けてはならない。危険すぎる。不気味すぎる。」と思う。
そう思っても声に出ないし頭を埋めている興奮に掻き消される。
「――――――!――――?」
女性の声も聞こえるが元々何を言っているか分からないが声がそもそも音としてしか聞こえない。
もうもうと興奮しながら宝箱を開ける。
すると、中から黒いものが飛び出てくる。ただ、避けれない。
「あぁ、なんか来たなぁ」
としか思えなかった。
そして、ぼんやりと死ぬことを思った時頭が鮮明になり黒いものが遠ざかる。
「――――――!」
女性が引っ張ってくれたみたいだ。
そして、小さな杖で青い魔法陣を形成し、その後に滲むように水色になる。それが少し輝くと黒いものが凍る。
しかし、それは一瞬で割れ、自由になる。
跳躍していた黒いものが地面に着地すると少し方向を変え女性に牙を剥く。
女性は魔法陣を形成するが間に合わない。
俺は爪を付けて、黒いものの跳躍を拒むように地面に叩きつける。爪で切り裂いても血は出ず、スライムのようにすぐに形が元に戻る。
距離を取れた女性はまたも、水色の魔法陣を形成する。
それは今度はいくつかのこおりのつぶてを宙に浮かせ、射出する。
2発だけ外れるがそれ以外は当たる。さっきとはちがい当たったところから黒い煙が出る。
なるほど。
物理攻撃は効かないのか。
ということはまたもや俺は女性を守り続けるのが仕事らしい。
女性は続けて水色の魔法陣からこおりのつぶてを出す。
容赦なく、降り注がせるがさっきのと比べると1回の射出ではせいぜい2発程度しか当たらない。
黒いものはぴょんぴょんと魔法を避けながら少しづつ近づいてき、2m程になると激しく跳躍する。それに合わせて俺は先程と同じように爪で迎撃するが、それは上手く形を変形され爪が当たらない。その勢いのまま黒いものは女性に襲いかかる。
女性はこおりのつぶてで押し返そうとするがまたもや変形され、全て避けられる。そしてそのまま胸の当たりに体当たりされる。
瞬間、女性は姿を消す。辺りを瞬時に見渡すと体当たりされた方向の壁に激しく打ち付けられ壁は凹んでいる。
俺はそれを見た時には既に走り出していた。
物理攻撃が効かないことはもう覚えていない。
両手の爪で黒いものと応戦する。攻撃を喰らわないように避けながらやっているが、黒いものは爪の隙間に通るように形を変形され、既にこちらは50は避けているのにこっちの攻撃は1発も当たっていない。
徐々に追いつかなくなり、俺も黒いものの攻撃を喰らう。
その瞬間に壁に打ち付けられる。
体が動かない。目の前ではぴょんぴょんと憎ったらしく可愛くはねている。
それは余裕そうにこちらに近づいてくる。
頭をフル回転させる。
なにか使えるものは無いか。
どうすれば勝てるか。
魔法しか効かなく物理は効かない。
俺は魔法が使えない。
彼女は使える。
彼女の杖……小さかった。
おもちゃのようだった。
彼女の強い威力の魔法はまだ見ていない。
小さいからか……?
俺の武器にはたくさんの魔力を使うであろう武器が沢山ある。
そう思い、鞄から「魔女の杖」を取り出す。
それを彼女に向かって投げる。
それは彼女の足元に転がる。
彼女はそれに気付き、こちらを向いて目を見開く。
急いでそれを拾って杖を前に出す。
……正直杖によって威力が変わるのかは分からない。
あの小さな杖が小さいだけでいい杖なのかもしれない。
ただ、何故か、安心した気持ちがあった。
それはここで死んでも良いやという強者を前にした諦めか、はたまた、彼女はやってくれるという信頼か、今は分からない。
女性が魔法を唱える。
水色の魔法陣。
そこから出るのはこおりのつぶてではなくこおりの風が出てくる。
そして、黒いものの足元にもさらに大きな水色の魔法陣が浮かび上がる。
黒いものはそれを警戒して一旦俺から離れ、避けるために聖域であるのか宙に高く跳ぶ。
それに向かいこおりの風が動き出し襲いかかる。
先程のように凍る。
しかし、それは砕ける気配がない。
力強く凍る音がする。
そこへ向かって地面の魔法陣からこおりの柱とも言える槍が4本突き刺さる。
その小さな黒いものに向かってやりすぎとも言える4本の柱が刺さり、纏ったこおりが砕き、そのまま黒いものはバラバラに飛び散る。黒いものは跳ねることもなく、ピクリとも動かない。
俺と女性は緊張感が解けたのか同時に地面に腰を着く。
そしてお互いに目を合わせて
「「あっははははははは!あはははははは!」」
俺たちはしばらく笑っていた。
彼女の言っていることは未だに分からないが、今、この時間、さっきまでの時間、彼女と共闘して、彼女と笑って、今を生きている。信頼しあった。
まだ先があるのは分かっている。
これから先はもっと強い敵が出てくるのも分かる。
それはすごく怖い。
今ので死にかけたんだからもっと強くなったら今度こそ死ぬと思う。
でも、それでいい。彼女と一生懸命戦ってそれで負けたら、あのクラスメイトたちはきっと俺を責めない。
むしろ、褒めてくれるんじゃないかな。
うん、そうに違いない。
でも。
今の俺に死ぬ気はさらさらない。
やるだけやる。
やってやる。
「俺をここに送ったやつを殺してやる!!」
そう叫んだ。
それはできるかは分からない。
でも、こんなに高い目標を掲げてもなんだかどんどんと勇気が湧いてくる。
「――」
彼女は何かを言ったが幸せそうに賛成してくれたような気がした―――。
こんにちは!
ここら辺はやりたかった場面のひとつなので筆が進む進む笑。
いやぁ強いねぇ笑
全員強いのよ笑。
ってことで言うことありません。
満足です。
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次回もまた読んでください。