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6層目 欠如した巨人と出会い

 意識が目覚める。

 そんなはずは無い。

 羊の前で倒れたんだ。と思い咄嗟に身を起こす。羊はどうした。どこにいる?と思って周りを見渡すが、いない。あのでかい羊がいない。

 代わりに人影が見える。それも40人程度。とりあえず話しかけてみる。寝ているところを襲われていないということは、敵対はしていないだろう。

 武器を足元にそっと置き、ゆっくりと近づく。

「ぇ、ぇっと…」

 声出して無さすぎて声が出なかった。

「――――――――――――」

 俺が恥ずかしい思いをしていると大勢の人の中からひとりが出てきて俺に何かを言ってきた。

 しかし、俺は何も聞き取れないかった。

 声という音声は聞こえるが中身が何一つ分からない。

 まずいかもしれない。本格的にまずい。初めて人と会って少し期待していた。なのに、言葉が分からない。偏見で言うと中東の方のイメージの言葉だがそんなの分かるはずがない。

 俺はダメ元で

「あの、言葉が分かりません…」

といった。

 ただよく考えるとあっちの言葉が分からないのに工夫もせずに話してしまった。少し反省してジェスチャーを考えていると、前に出てきた人は後ろを振り返り、困惑していた。

 そして、奥の人達は何人かずつで動揺しつつ、前に出てきた人が言った。

「――――――――――」

 バカなのか?と失礼にも思ってしまった。が、こっちの分からないという言葉が通じてないのだからしょうがないか。

 今度はジェスチャーでしてみる。

 相手を指さして話しているような振りをして自分をさして聞こえないような振りをして両手でバツを作る。

 すると前に出てきた人は後ろを振り返り1度頷いた。

 彼女たちがやり取りしている間にお腹がなってしまった。

 それを前に出て来た人が気づき、不思議な視線を送ってきた。やり取りが終わったと思うと、後ろの人達がまず、扉に向かって歩き始めた。それに続いて、前に出てきた人も歩き始めた。

 置いていかれた感じだ。

 そして、最後尾のいる、さっき前に出てきた女性はちらりと後ろを向き、音がならないように石をひとつ置いていった。すぐに前に続くように走っていってしまった。

 1人になった俺はその石を拾う。

 近くで見てみるとぼんやりと赤く光っている。

 俺はなぜだか分からないが床にうちつけてみた。体が勝手にそうするべきだと判断してそうしてしまった。

 すると、石は少し削れ、赤く光り、炎をだす。

 その火は淑やかにそれでいて激しく燃えていた。燃料がないのにも関わらず消える気がしない炎。俺はあの女性に感謝した。察してくれたのだろう。

 俺はその炎で鞄から狼の肉を出し、焼く。少し焼けると我慢できずに食べてしまった。美味しい。上手すぎる。腹の中に肉が落ち、腹が満たされていく。

 あまり食料を食べるのは良くないとは思いつつ、狼の肉を食べきってしまった。思考が落ち着いた俺はハッとする。今使っても良かったのだろうか。ギリギリまで使うべきじゃないはずだ。贅沢をしてしまった…。気が動転してしまい、急いで鞄に石をしまってしまった。一安心したのも束の間、今入れたらリセットみたいなものが起きて火が使えなくなると思いもう一度ハッとする。鞄を開いてみると「魔石:火(2/5)」と表示されていた。あと2回使えるということだろうか。俺が一回使っただけなのに3回使ったと書いてあるということはあの人が使っているおさがり…みたいなものをくれたということか。もしかしたらあの人たちもここに連れてこられて貴重な炎という可能性もある。そう思うと申し訳なくなってきた。俺は肉を食べれて満足出来た事もあり、返そうと思った。先に進めばまだいるだろうか。

 置いた武器を手に取り、駆け足で次に進む。


 いつもの通りを抜けて既に光のついている部屋に入るとそこはまさに地獄だった。

 炎や水、目に見えている風や次々と形成されていくゴーレム、数匹の蝶から放たれるレーザーのような魔法。そして、宙を舞うたくさんの人。それを腕でなぎ払おうとしている下半身のない巨人。

 それらは今までの俺のように人対魔物ではなく、人対人対魔物だった。左右に別れているのがおそらく、派閥なのだろう。遠目でしか見えないが確実に先程の人達だった。

そして、勝手に俺は石をくれた女性を探していた。しかし、いくら探していても戦っている中にその女性は見当たらなかった。まさか。

 床に倒れている人を探した。

 倒れている人こそまだいなかったが、巨人の体の切断部分に居て隠れていた。

 ホッとしたがその瞬間女性の叫び声が聞こえる。

 その直後、赤い血と共に「ドサッ」と重い音が聞こえる。

 そこからはタガが外れたように次々と倒れて行った。

 巨人の攻撃は1度も当たっていない。人も巨人を攻撃していない。全て彼女らが引き起こしたのだ。

 激しい攻防の末、一人の女性が生き残り、地に足を着けた。

 そして女性は周りを見渡し、杖を自分に向けて杖を光らせる。

 そこで目を逸らしてしまった。しばらくして見てみると先程の女性は……倒れていた。

 巨人が叫ぶ。隠れている女性は腰を抜かしてその場に座り込んでいる。……泣いている。

 俺も部屋の入口に立ち尽くしていたが巨人がこちらを向き、両手を使って近づいてくる。

 それを見た俺は正気に戻り包丁を持ち、女性に被害が及ばないような場所に移動して巨人と対峙する。


 巨人に先手を打たれると力が足りず打ち返せなそうだ。

 なら、俺が先手を打つ。

 包丁を構え、巨人に向かって走る。

 巨人ほ俺を迎え撃とうと腕を振り上げる。

 その大振りな動きはまるで先のキマイラによく似ていたため対処法は知ってる。

 

 相手が攻撃したくなるように1度隙を見せながら近づき、巨人は腕を薙ぐ。予想通りの攻撃は当たるはずがなく、難なく避けて腕を薙ぎ払った腕の付け根を狙って斬る。しかし、刃は思ったよりも通らず少し血が出る程度に収まってしまった。

 それに巨人は怯みもせずにゆっくりと腕を戻し両腕を地面につくと、巨人の足元に2色の魔法陣が、口元に1色の魔法陣ができ始める。

 足元の魔法陣は緑色と黄色、口元のは赤色。

 この前のゴーレムの時に見た緑色と赤色の魔法陣の見た目を詳しく覚えている訳では無いがかなり似ていることは分かる。おそらく、同じような魔法が飛んでくるだろう。

 ただ黄色の魔法陣は初見だ。偏見だが、光のレーザーのようなものが飛んできてもおかしくない。


 俺はとりあえず距離を取り、大盾を構えてみる。

 んすると先に足元の魔法陣が光り、同時に魔法が発動する。

 瞬間、部屋が激しい光に見舞われ、何も見えなくなり、少し遅れて強い風に身を仰がれる。必死に大盾を地面に擦り、しがみつける。しかし、その抵抗も虚しく、大盾が地面から剥がされる。その後、視界に一瞬、赤い光が映ったと思うと、火の玉が目の前に広がる。防ぐ術が無く、燃やされる――と思った。


 しかし、そんな現実は無く。

 いつの間にか閉じていた目を開けると風や光は収まっている。口元の赤い魔法陣、火の玉の根源はまだある。

 そして、視界の奥には先程までなにもしていなかった女性が短い杖を前に、それは巨人ではなく俺に向いている。

 一瞬、俺に攻撃しようとするのかと思ったが女性の表情とさっき助けてくれたからかそれはないな、と思った。

 じゃあ……俺を助けてくれたのか……? 

 俺は戦いの中にも関わらず咄嗟に


「ありがとう!!」


と言った。共闘したい。協力したい。


「良かったら!協力しよう!」


すると、女性は

「―― ――――――!」

なんて言ってるのかは相変わらず分からないが多分協力してくれる。


「俺が気を引くから、攻撃を与えて欲しい!」


 そんなことが俺に出来るのかは分からないけど、自分が犠牲にならないと女性は協力を辞めてしまうかもしれない。

 そう思い提案する。

「――」

 女性は小さく頷く。重い大盾を頑張って片手で持ち、包丁は利き手で持つ。包丁で攻撃する。それは致命傷を与えようとか倒そうとしたものでは無い。そのため、相手には傷ひとつつかない。ただ、巨人は一切、女性を警戒しておらず、こっちを目掛けて、赤い魔法陣を発動させる。もう一度火の玉が飛んでくる。2回目ということもあるが、今回はしっかりと視界に捉えている。重い武器を2個持っているからか火の玉を避けることは叶わないが、防ぐことは出来ると思った。包丁をしまい、盾を両手で持ち、踏ん張る。火の玉の勢いは思ったよりもなく、当たった時の衝撃と言うよりかはその熱がキツかった。

 そして、大盾で塞がれていた狭い視界が開かれると女性は歪な形の弓を放っていた。それは火の玉の数倍の速さで飛んでいき、巨人の下半身の切れ目に刺さる。俺が1度目に切った時よりも血が多く出ている。

 それを見て俺は

「この人に任せていれば倒せる。なら俺の役目は守ることだ。」

と確信する。

 相当なダメージだったのか、巨人は俺の方から女性の方に振り向いて両手を使って走り出す。

 俺は気を引こうと、槍を取り出し、切れ目に投げる。

 槍は深く突き刺さり、姿は見えなくなる。

 そして巨人はというと、かなりダメージを負ったのか、雄叫びをあげる。そしてその場で大きな紫色の魔法陣を形成する。


 そしてそれはすぐに発動する。

 魔法陣が描かれた床から黒い電撃が迸り、巨人を囲む。そしてその囲んだ電撃の檻のようなものからバスケットボールより少し大きいぐらいの大きさの黒い電撃の玉が10個、いや20個は縦横無尽に放たれる。

 俺は極力当たらないようにしながら当たりそうになったら盾で防ぐということを繰り返していた。

 女性は軽やかな動きで避けながら、当たりそうになると魔法の障壁のようなものを瞬時に複数出して防ぎ切っている。

「これ……さっき気を引かなくても大丈夫だったんじゃないのか……?」

「――――――!」

 あ、声に出てた?

 なんて言ったのかは分からないがおそらく反論している。

 大丈夫じゃなかったみたいだ。

 そんな話をしていると電撃はやみ、魔法陣もゆっくり消える。そして立てていた両手を地面に完全に付け、静かになる。


 力を使い果たしたのだろう。

俺は女性に駆け寄り、

「協力してくれてありがとう」

と言う。

 すると女性は

「――――――――――――」

と言う。

 何回聞いても分からない。

 いつかわかる日が来るのだろうか。

「これからどうする?」

 そう言うと、悩んで扉の方を指さしながら歩き出した。

 何を言っても聞きとってもらえないから諦めて喋るのをやめている。全然いいけど。

 俺は少し走って前にいる女性の隣に行き、歩幅を合わせる。

 振り返ると巨人が倒れている。一瞬、しまって食料にしようと思ったが巨人とはいえ人肉。食べれないだろう。

 女性の名前は分からない。聞いても分からないから聞かない。ただ、名前も喋る言葉も分からない女性は俺にとってすごく大切なものになった。

こんにちは

今回はようやくヒロインが登場した回です。

名前はしばらく出ません。

これからはぎこちない掛け合いがあるので投稿が大変になるーー!

ってことで頑張っていきます!

評価とかコメントよろしくお願いします!

次回もぜひ読んでください!

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