4層目 中級ゴーレム
目が覚めると……何も変わっていなかった。
体調は良くなっている。
どれくらい寝たのかは分からない。
そして寝て起きたままの姿勢で色々考える。
以前考えた時は冷静さが足りていなかった。
今は寝て、ある程度冷静になっている。
まずはここはどこなのかということだ。
神様は最初、「魔王を倒すのです!」と言って送り出してきた。
しかしこのダンジョンに魔王がいるとも思えないしいてもすぐに魔王城に行かせるだろうか。
イメージというか昔見たオタク知識でしかないが俺の知っている召喚された者たちはだいたい最初は王城などに飛ばされ色々準備をしていた。
常識的に考えると魔王城スタートはないだろう。
そうなると神側のミスかあるいはなにか目的や策略があり利用なりなんなりさせられているのだろうか。
神側のミスは……あの神様なら間違えていても合点が行くな……。
目的や策略の類だとすると何が目的だ?
俺に戦わせて何かを得るとかこの中のモンスターを倒すとか行動パターンの研究とかだろうか。
充分有り得なくはないのか……?
そんなことを考えていると……お腹がすいたな。
ここに来てからどれくらい経ったか分からないがしばらく運動もしてなかった。だからだろう、こんな戦いをして、体力はもうない。何か食べないと。
……!自分は今空腹を感じている?!
それはそうか、異世界とはいえ世界だ。お腹はすくし眠くもなる。暗い室内で世界を見ていないから勘違いしていた。ここに飲食店なんかは……あるわけない。
野菜も果物もそもそも自然がない。川もない。あるのは……魔物のみ。魔物を食べなければならないのか……。
肉は焼かないといけないよな。どうやって焼くか…。
魔法が使えれば火属性の魔法で焼けるのだろうか……困ったな。
敵が魔法を使ってくればこの世界で魔法はどのような存在なのかとかかなり大きな情報になるのだが……。
次に戦うやつが食べれるとは限らない。たしかにさっきのキマイラも食べれない可能性もあるが狼や虎だ。どっかの国では食べてそうな食材だ。ただ調理の手段が取れないのでとりあえずキマイラの死体で割と大きく肉がありそうな部位を鞄に入れる。ついでにしっかり、オオカミに指した包丁も抜く。
そうすると、鞄の表示には(狼の肉)(虎の肉)(蛇の肉)(コカトリスの羽)と表示されていた。
なるほどキマイラの肉ではないのか。
科学的に合成されたと仮定するとそれぞれが生きていてその肉という判定になるのか。
充分に休んだ。早い内に魔法を使えるようにならないと餓死してしまう。
――先に進もう。
すると同じように部屋に入ると明るくなりその正体が見える。
この明るくなるのはどういう仕組みなのだろうか。
化学が発達してるのか魔法の応用なのかこの建物の仕様なのか分からないが……気にしなくていいか。
4階層の敵は……巨大な人型ゴーレム?のようなやつだ。
身長は6、7mはあるだろうか。
かなり大きく見た目的には硬そうだ。
ゴーレムはこちらに気付くとゆっくりと力強く歩いてくる。
間合いに入ると腕を振り上げてきた。
盾では防ぎきれないと思い全力で前に進む。
腕が届かない足の間まで行くと腕は振り落とされ地面を強く叩いた。
音が鳴り響きその威力を物語る。
……これは1発もくらってはいけない。
俺はゴーレムの後ろ側の方向に走る。
するとゴーレムはゆっくり振り返りながら魔法陣を形成し、振り返りきる頃には完成していた。魔法陣から放たれるそれは所謂、炎魔法。それもかなりの大きさだ。俺は突然の火の球に対応したが避けきることは出来ず熱が伝わってきた。
これはかなりの大発見だ。魔法の唱え方、炎の魔法の存在。はじめの一歩にして最大の進歩だ。
今度は勉強するためにさっきと同じ状況を作る。足の間を走り抜け、裏をとる。
すると同じように魔法を打とうとしている。
魔法陣を見るために魔法陣の元まで動く。魔法陣には模様が沢山あり、知っている言語ではないが何やら言葉のような物が描かれている。その言葉はその魔法を表す言葉だろうか。するとみるみるうちに魔法陣に文字、模様が書き足されていく。魔法陣の隙間に文字が詰まると炎を出した。
さすがに2回目で観察していたので容易に避け、余波は盾で防いだ。
今ので魔法陣の形や大きさは掴んだ。あとは体内でどのようなことが起きているかを確認したい。
詠唱中にゴーレムの体を触れれば良いが……。
そのためにまた同じ状況を作る。
足の間を走り抜け、今度は触るために後ろのすぐそばに立つ。
すると、魔法陣は両腕の先端ではなく、ゴーレムの足元、もとい俺の足元にあった。色は緑色。そんな状況を確認しているうちに魔法陣が光り、俺は吹き飛ばされた。おそらく地面が振動し、体が浮き上がったところを風で飛ばされたのだ。……なるほど、近くにいてはだめらしい。前方で近ければ腕で攻撃、前方以外で近いと緑色の魔法陣、後ろで今の魔法陣の範囲外だと炎ということか。
そして、同様に足の間を走り、さっきの魔法陣が届かない場所まで行くと、予想通り赤色の魔法陣が作られる。それを見てから素早く、ゴーレムの元までいき、できる限り体の中心に触れるが、膝下あたりが限界だ。しかし、熱が流れているような感覚、ゴーレム表面には何も異変はないが手の感覚では胎動している感覚がある。何かを体内で流していてそれが魔法の素なのだろう。
そろそろ魔法が来ると感じ、直ぐに離れる。離れようとすると追うように炎が来る。直接炎には当たらかったが熱風が体に当たる。
おそらく、このゴーレムから取れる情報はもうないだろう。
討伐しないと行けない。
このゴーレムは触った感覚だと金属のようで剣で切れるような素材ではなかった。そう思い槌を握る。
さっきまでの感覚では魔法を打ってからはしばらくクールタイムがある。
そして今魔法を打ったばかりということは今は何も出来ないはず。そう思い、槌を握る力を強くし、近づいて一回転してからその勢いを殺さずゴーレムの左足にぶつける。ゴーレムの左足はその衝撃に耐えれず、体勢を崩す。
今度は支えているもう片方の足を槌で叩く。
すると足で支えられなくなったのか前に倒れる。
がら空きになった背中から人間でいう心臓の当たりに向かってとりあえず槌を振り下ろす。
一撃ではへこむだけでダメージを与えられなくなった。
そこにもう一撃入れるとさっきとは違い若干柔らかい感触かあり、次の瞬間内側で何かがはじける音がした。
するとゴーレムはビクとも動かなくなった。
割と余裕で倒したことので達成感はあまりない。そして、1つ気になることがある。もちろん魔法についてだ。
ゴーレムは道具を使わずに行っていたが俺は杖や聖剣など魔力を使う武器を持っているということはそれらを介す事で魔法が使えるということなのだろう。しかし、あの金属が特殊ということも有り得る。1回ゴーレムの真似をしてみる。
手を前に出し、体の中のものを上の方に集めるイメージで……だめだ。出来そうにない。まず体の中のものとはなんだ。分からない。ただ、生身の人間だから出来ないという可能性も全然ある。そして俺には今魔法専用の道具がある。鞄から魔法に関係のありそうなものを全て出す。まずは表示では「賢者の杖」と書かれていた杖を持つ。その杖を構えて、杖にさっきのイメージで流してみる。……何も起きない。見様見真似では出来ないのかもしれない。ゲーム用語で言うとスキルとか特技みたいな物があり、それがない人は誰かから教えてもらうか、生まれつき才能がないと使えないとかだとほんとに絶望的だ。
魔法が使えないのは今の俺にとって非常にまずい。
なにせ、食べ物がないのだから。一瞬、異世界の獣の肉は生でも食べれる。なんて考えが浮かんだがそんなことは断じてないだろう。忘れていたが、食べ物がない以上に水がない。なんだっけか、水を飲まないと3日で死ぬんだったか……。どれくらい寝たか分からないから明確なリミットも分からなくなってしまった。最低であと2日生きれればなにかこの状況を打破する方法は見つかるだろう。とりあえず進むか。3日生きて水がなくて死ぬ。そうなっても誰も文句は言えないだろう。だってどうしようもないのだから。
仕方ない。
投稿しばらく出来なかった…くやぢぃ
テストがありました。
これからはできるだけ毎日します
平日は無理かもです
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