ラストバトル2
「驚いていますね。無理もないですよ。何せこれは数百、数千にも及ぶ種類の種族の血なのですから。」
なんだって?血?沢山の種族の?
それが三メートルを超えるガラスのフラスコのようなものに満タンに入っている。
使う?何をするつもりだ。
身構えていると、もはや赤色とは言えない色の血が煌めきだす。
そしてその容器が割れ、血が溢れる。やば、と思ったが、何か結界のような壁があるのかこちらには来ない。逆に今、俺は攻撃できないということか。
その血は最初こそ意志なく流れていたが、徐々に統括されていき、形を描き始める。それは【魔法陣】だった。
血で……というか何か物理的に魔法陣って描けるのだろうか。
血は時間をかけずに明確な魔法陣になり、それがさらに光る。
光の色は【黒】。
黒は確か、召喚だったはず。
――魔法陣が発動する。
魔法陣から黒い鱗を身につけたとんでもない大きさのものが徐々に這い出てくる。
嘘だろ。入んないんじゃないか?
体が窮屈そうにでくるたびにこの部屋は狭くなっていき、おそらく、腕のようなものが少し出ただけで魔法陣と俺を隔離するための結界が破壊される。
やばい、押し潰される。
魔法陣も洞窟も音を立てて壊れはじめている。
一旦逃げないと。
そう思ってきたところを見ると梯子だったことを思い出す。
洞窟を掘るか。そんな威力の高い技は……鯨状態のカイくんならやれるか。
学校のこととか気になるが、まあいいだろう。
おそらく生徒も帰っただろう。
教員は、まぁしゃーないか。
そう思ってレーザーを出してもらう。
そのレーザーは空気を読まずに洞窟の、俺の真横を通る。
おかげで洞窟には斜めに穴が開き、薄暗かった室内に夕陽が差し込む。
少し、角度はきついが走れるだろう。
潰される前に早く地上へ行ってしまおう。
走り出したはいいものの、距離がすごくある。異世界に行く前では到底無理な距離だが今となってはいけそうだな。にしても、何キロあるんだ。数百はありそうだ。直線と斜めということもあるがこの距離を降りてきたのか。
風魔法を使ってほぼ飛んでいるに近い走りで駆け上がると、学校が半壊していた。
まぁ、俺のせいだけど。
上空にはカイくんが浮かんでおり、周りにはなぜか人が集まっている。耳を立てて話を聞くと「早く自衛隊の人は来ないの?」「何があったの?」「何か大きな音がしたと思ったら学校に大きな穴が開いてるのよ。」 「ちょっと見ろよ!学校壊れてんじゃん!」「てことは明日休み?最高じゃん。ストーリーストーリー。」 「何があったのかわかりませんが危ないので家の中に入ってください!」などという会話がある。そうか、この人たちは当然、カタストロフィやあの召喚されている魔物のことは知らないもんな。自衛隊の人が来たり、ニュースのリポーターらしき人がマイクを持ってカメラに向かって話たりしている。
大きな音がして空を見るとヘリが数体飛んでき、カイくんの周りをうろうろ飛んで……いや、銃撃しているのか!確かに学校をやったのはカイくんで未だ召喚中なのかカタストロフィは見えていない。あれくらいの攻撃でカイくんがやられる未来が見えないが鬱陶しい。ただ、反撃したら余計激しくなるだろう。
そう懸念していると、地面が大きく揺れる。
地震ではない。おそらく、あの化け物があの洞窟に収まりきらなくなって地面を破壊しているのだろう。
そんな異変の直後、地面が大きく隆起して学校のグラウンドの土が割れる。
俺も巻き込まれそうになるが、急いで離れる。
隆起した地面から大きな黒い龍が顕現する。
それはあの施設で出会った黒い龍の何倍もの大きさを持っており、あの蕾よりも大きく、空を飛んでいた鯨とやっと同じサイズ感といったところだ。
爪がある二本の大きな足に人間のような五本の爪がある二本の手。頭部には羊を模した悪魔のような曲がったツノが生えており、全身は黒く、一枚一枚が大きな鱗に覆われている。
その龍の登場に遅れて龍の肩に乗ったカタストロフィが現れる。
「おっほっほ、随分と派手なお出迎えをしてもらっていますね。街のみなさんはお前を悪だと思ってるみたいですが、戦いを今すぐにでもやめて帰りますか?全く、非常な奴らですね。あなたはあなたなりに頑張ってるのに。かわいそうだ。」
全くその通りだ。でも、俺はこの世界を救うためにきたわけじゃない。ミルの世界を救うためだ。それに、俺は俺があいつらに恥じない生き方をするだけだ。どの世界を救おうがこちらの勝手だろう。
この世界のことは気にせず、本気でやろう。
それが俺の最善だ。
まずはもう一度再充填が完了したカイくんにレーザーを頼む。
カイくんのレーザーが後ろからあたろうとした時、
「良くないですね!!!!」
と、カタストロフィが後ろを向いて、あの洞窟に施されていた障壁をレーザーに合わせる。
そんな簡単に防がれたくはなかったが、しょうがない。
なら、カイくんが作った隙を逃すわけにはいかない。
ジャンプして一気に龍を無視してカタストロフィの元に近づく。まぁ、期待値的な話で行動しているが、多分、防がれるだろう。
その予想通り、龍は爪を使って、俺をなぎ払おうとする。そんな行動は予想していたので避けて渋々地面に足をつける。
そんな簡単に倒させてはくれないか。
どっちから攻めればいいのだろうか。やはり龍だろうか。
そんなことを決めあぐねているうちに、カタストロフィが
「やりなさい!『世界を滅ぼす災いの怒り』!!」
と、叫ぶと、龍は少し叫び、口を大きく開け口内が青色の炎で埋め尽くされる。その後、その炎が青色の光球になり、こちらに青色のレーザーとなって放たれる。
うーん、さすがに魔法では防げないかな。走って避けよう。全速力で右方向に走るが、それでも当然、龍が首を動かすスピードの歩が速い。風魔法も使ってようやくだ。そして、長いな!いつまでなんだ。口の中を見てみると、まだたくさん光球が残っているが若干小さくなっている。あれが消えたら終わりか。今は避けに専念……おっと!何だ?空から火の玉が降ってきた。
来た方向を見ると、カタストロフィが不敵な笑みを浮かべていた。
なるほど。そうか、あいつも普通に攻撃してくるか。
攻撃できなくさせるためにはこちらも攻撃して守りに専念してほしいが、こちらとしては避けるのに精一杯で手段は限られてくる。
パッと浮かぶのはカイくんだがまだチャージ中……いや、蕾モードにしていればいいのか。カイくんを少しずつ高度をさげ、ある程度まできたらその場で蕾モードにする。重量で言えば鯨モードよりも重い金属の塊が上空から落ちてくる。その衝撃が衝撃波となって龍を襲い、一瞬反り返り、標的が外れる。その時間を使ってカイくんには遠距離攻撃を命令して、俺はナンバーズカードを使う。出てきたカードは「地の精霊の怒り」。発動すると龍の周りの地面がかなり大きめの岩となって無数に浮かび上がる。こちら側からは見えないが周りを囲むように浮かんでいることからおそらく後ろ側も全部なのだろう。そして、カイくんはあの蜂の攻撃の再現なのか鉄の刃を何百個も生成され、岩より若干高い高度を保っている。それら全てが次々に龍に向かって飛んでいく。カタストロフィは苦虫を噛んだような顔をして攻撃を中断して守ろうとするが、さすがに全方位は守れないのか、時々岩や刃をもらっているが血は少ししか出ておらず、鱗に少し傷ができてるぐらいだった。
そして、いつの間にか標的が完全に外れ、空や地面に撃っている。
じゃあ。俺は立方体を起動していつもよりは少なめに分裂させる。
そしてそれをできるだけ鱗の隙間に配置して隣接させる。そしてそのまま強制的に分裂させて無理くり鱗を剥がす。
それは作戦通りにいき、無理矢理だからか、血が出てる箇所もある。
そしてそれらを一度離し、助走のスピードをつけてもう一度皮膚が見えている箇所に向かって今度はかなり小さくなった立方体をねじ込む。
大体、鱗が硬い敵ってのは内部が弱かったりする。だから、内側から立方体で破壊させてやろうというわけだ。
しかし、そんなに現実は甘くなかった。そもそも二回目の攻撃がカタストロフィに防がれる。そして、鱗に関してだが、剥がして地面に落ちた鱗が光の粒子となって宙に浮かぶとそのまま消え、剥がした鱗の位置に新しく鱗が生成される。
剥がしきれなかく、傷がついた鱗には変化がない。再生はするが回復はしないということだろう。
しかし、攻撃はカタストロフィに防がれ、当たっても鱗に拒まれる。鱗を剥がしてもすぐに再生される。そして相手の攻撃力は段階違い……勝てないだろ……。
今すぐにでも召喚の杖で帰ってしまおうか……。
いやいや、良くないな。この世界はどうでもいいし滅んだところで特にどうとも思わないがカタストロフィを倒せなかったという事実を持って帰ることは俺にはできない。そして俺が喧嘩を売らなければこんなことにはならなく、この世界の人は知らなくていいことを知らないまま平和に暮らせたはず。俺がこのまま帰ってしまうと、その人たちを殺してしまうことになる。それをあいつらはどう思うだろうか。それを思うというまでもなく答えはノーだ。ありえない。
そういう意味でもここで俺は戦い続けるしかないだろう。やるしかないんだ。
こんなネガティブな気持ちになっていては勝てない。気持ちを切り替えよう。俺は勝てる。勝てるに違いない。今までも何とかなってきた。
俺はもう一度、立方体を起動する。さっきと同じサイズで散らす。だが、散らすと言ってもさっきは龍の鱗を剥がすためにやったが今回は違う。
今回はいろんな高度に配置する。地面で接しているものや上空に浮かんでいるもの、カタストロフィを狙ったものなどとにかく、鱗を剥がすのではなく、防御を分散させるのに使うのだ。
全方位、いろいろな高度にそして、守らせるために見えるように置きぶつける。
カタストロフィはカタストロフィ自身や龍の顔や首など大事な箇所だけを守ることにしたのか他の箇所には結界を張らないようだ。
よし、作戦通りに行っている。そしてその隙に蕾状態のカイくんには無数の金属のしなやかな蔦でカタストロフィのいる肩や龍の顔を狙う。時々、他の守られていない場所も狙わせる。そして俺は左足をめがけて、包丁を振る。
先にカイくんが動いたからかカタストロフィはそちらに意識が向いている。
その証拠に切っても結界は貼られていない。
そして、龍が気づいていないはずの俺の攻撃に反応しないでカイくんを狙っているところを見ると操られて攻撃対象を支持されているのだろう。
いいぞ。いける。
俺はそのまま何回か切ると鱗に切り込みが入っていき、肉が見える。そこで魔力を込める。神眼で見ると包丁の魔力の効果は
「生物の肉が切れやすくなる。」
だった。
俺は魔力の篭った包丁で龍の肉を切る。すると、ブシャッと大量の血が出た。これまでで一番のダメージだ。
そこでようやく、俺に気づいだのか脚に結界を貼り、龍は脚を使って俺を蹴散らそうとする。
しかし、俺に意識が向き注意が薄くなったのか、カイくんの攻撃が通り始めている。
なるほど。攻撃が当たらないよう、一度退こうと思っていたがこのままでいた方がよさそうだ。
俺が攻撃を避けていると突然結界が解除される。上を見るとどうやら攻撃がカタストロフィに当たりそうになったのか、カタストロフィのすぐ横に結界を張っている。
カタストロフィは結界を「食らったらまずい今一番防がなければならない攻撃」で優先度をつけ結界を貼っているようだ。
となると、カイくんが攻撃を与えるためにはカイくんの攻撃よりも優先度が高い攻撃を出さないといけない。脚を傷つけているだけじゃどうにもダメそうだ。うーん。脚の一本切り落としてしまえばこちらに気が向くだろう。
そう思い、脚に攻撃しようとして見てみると既に鱗が再生されていた。それも対策がある。一度、包丁から、槌に持ち替えてそれを鱗、それも同じ箇所に力強く打ち込む。
一発目は凹み、二発目には血が滲み、三発目には叩いていた場所よりも広い範囲で鱗が弾け飛んだ。
そして、
「なぁ、糸を出してくれ。」
そう、声を出す。
すると、
「わかったよ!特に指定とかはないんだね!はい、どうぞ!」
と、この空間には似合わないぬいぐるみが元気そうに糸を渡してくれる。
それを再生してもいいように糸を魔力で操作しながら脚を何回にもまく。……が脚が太すぎる。糸に制限はないから別にいいが少し時間がかかってしまうし、攻撃を避けながらするにはいささか危険だろうか。……これはぬいぐるみに任せられないだろうか。
「これをぐるぐるに巻けばいいんだね!できるよ!えいっ。」
心の声を読み取ったぬいぐるみがそういい、脚の周り、俺が巻こうとしていた箇所が光る。その光はすぐに収まり、……糸が出現する!なるほど、糸の生成場所をそこにしたということか。
よし、これで大幅な時間短縮ができた。そして剥がれて床に転がっている鱗が光の粒子に変わり出す。
しかし、鱗は再生されない。
おそらくだが、本来再生されるはずの位置、皮膚に糸がきつく巻きつかれており、再生できるほどのスペースがないのではないだろうか。
これで時間はかかってしまうが鱗は完封できた、というわけだ。しかも糸で巻いたため、隙間がないように見えるが、糸と同じ向き、つまり横に水平になるように切ればこちらの攻撃は通るということだ。
鱗が剥がれた皮膚に包丁を何度も切り付ける。一撃ごとに二十パーセント程切ることができる。奥になるにつれどんどん切れにくくなるが、考慮しなくてもいいだろう。
そして、残りおよそ二撃になった時、ようやくこちらに結界が貼られる。
そして、カイくんの方をチラリと見て、タイミングを合わせて、俺は結界に、かいくんはカタストロフィを狙い各々渾身の一撃を放つ。俺のは結界に防がれた。ということは。
龍の後ろから大きな音が鳴ったと思うと龍の影から手負いのカタストロフィが歩いてくる。
「なるほど。あなたのパートナーもなかなか強いですね。今までは防御に徹していましたが、これからは俺も戦ってあげます。いきますよ。」
こんにちは。桜坂神楽です!
まず、近況報告なのですが先日、「深夜、公園にて。」という恋愛小説(?)のプロローグと第一話を投稿しました!まだ読んでなくて気になる方は読んでみてください!!毎週土曜日にそっち。こっちは日曜日みたいな感じで投稿するつもりなのでよろしくお願いします!
「人殺し、一人で異世界召喚」と「深夜、公園にて。」のいいねとか感想、レビューお待ちしております!
読んでくださりありがとうございました。桜坂神楽でした!




