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元の世界

 ポータルをくぐると数秒、意識がぺりぺりと脳から剥がされる感覚があった。痛みこそはないが脳が壊れそうだった。

 そして意識が戻り、足が地面に着く感覚がある。


 右手には小さな温もりがある。

 おそるおそる、目を開けてみるとそこは俺の元いた世界だった。その地球の中でも1番記憶に新しい場所、高校の校門に立っていた。そこから高校を眺めている。


 時刻は昼のようだ。そこまで暑くは無いが春の温もりがある。

 この世界風に言うと、上着は要らないと言うやつだ。

 そんなことはさておき、彼女を見てみると、目を丸くしてきょろきょろしている。


「ここはどこ?」


 !?

 彼女の声が理解出来る。

 日本語を喋っている。

 驚きから数秒間言葉が出なかった。

 俺はようやくこの子と会話ができるのか!

 まずは名前を聞いて、好きなことを聞いて、友達のことを聞いて、……何があったのか聞いて。勿論、あの世界のことも色々聞きたい。


「この世界はさ、俺の元いた世界だったんだ。……あれ聞いてる?」


 彼女はまたも目を丸くして、口を震わせている。

 なにか異変があったのだろうか。


「聞こえていたら頷いて。聞こえていないなら首を横に振って。」


 聞こえていなかったら首を横に振る指示が聞こえないだろ。

 俺はとりあえず縦に振る。

 喋れるのだからジェスチャーを使わなくても……!?

 もしかして俺の声が分からなくなったのか?


「おーい、聞こえてる?」


と言っても反応がない。

 理解しようとしているのかぴたりと止まってしまった。

 ……まじか。まだ話せないのか。

 世界が変わったから、ということなんだろう。どういう原理か全く分からないが。


「とりあえず、あの建物に行ってみる?」

 彼女がそう提案してくれる。俺も行きたかった。

 俺は頷き、進む。しばらく別の世界にいたからかもしれないが何か違和感がある。元の世界では無いというか…… 

 でもそんなはずがない。今目の前にあるのは俺が通っていた高校で焼け跡もある。とりあえず警戒して進む。

 そしてもうひとつ、この世界に関してではないが体が重い。今、全速力で走れと言われてもあそこで戦っていた時の速さの100分の1も出せない気がする。……それはまるで、元の世界にいた頃のような……。

 学校の中に入ると中も完全に同じだった。ロッカーなど買い替えれるものは綺麗だが壁や床は黒くなっている箇所がある。

 それでも貼り直しているのか所々直っている。

「どこに行くの?」

と聞かれたので

「あー、教室いくか……」

と言ったが聞こえてないんだっけか。

 そう思い、彼女の手を引き、誘導する。

 歩きながら考える。


 俺がここに帰ってきた意味。まさか、異世界に送って何体か敵を倒して襲われて帰る。そんな……なのか?異世界召喚って体験版みたいなことなのか?そこら辺は正直、それが正しいよ、と言われてしまったら「そうなんだ」としか言えない。異世界側がそう言ってるのだからそうなのだろう。

 これ、もう片方を選んでいたらどうなったのだろうか。

 この世界には来なかったのだろうか。この選択は正解だったのか不正解だったのか。

 ただ、あの世界の感じだとただ返すだけだとは思えない。いや、俺を無言で異世界にやったのだから無言で返すこともあるか。

 俺はこの世界に帰ってこれたのだからいいが彼女は良くないだろう。言葉が分からない世界で身寄りが俺だけで。

帰してやらないと。どんな条件でまた、あの女神がいる空間に行けるのか。気まぐれなのか、しっかりとした条件があるのか分からない。とりあえずこの完璧な元の世界を調べないと。

 考えにある程度区切りが着いたところで教室に着く。

教室は相も変わらず俺の机と教壇しかなく、黒板は綺麗だった。

 魔法陣が浮かび上がったところを見てみると少し跡があるような……ないような。

 なにも手がかりがないなぁ。

 ……あの景色を見るか。

 今思い出したがこの学校は1年生の教室から見える景色がいいのだ。昔、クラスメイトと誰が一番綺麗な写真を撮れるかと競っていた。

 インスタでもここからの夕焼けをアイコンにしてる人がいた気がする。

 インスタで思い出したがスマホがあるはずだ。

 机にかかっているカバンの中を漁る。

 スマホが……下の方にあった。

 電源をつける。電源は着く。ロックも開く。アプリもあるが、電波がないと言われた。回線がないみたいだ。

 たしかカメラって回線なくても使えたよな。と思って開く。

 あれ?

 カメラが起動しない。

 メモアプリも起動しない。

 電波が必要ないアプリを片っ端から開くが全部開かない。そんなことあるのか?そもそも、電波がないってなんだ?この学校は普通に街の中にあって届いてないことなんて無いはずだ。

 残念だがカバンにしまう。

 彼女が窓のところから俺を見ている。

 急いで戻る。

 二人で景色を見るのって青春っぽい……よ、な?

 嘘だろ。

 こんなのはこの学校の景色じゃない。

 綺麗な青空にいつもの街並み、俺の家も見える。

 それは良い。ただ、それ以外のものが多すぎる。

 例えるならグリーンバックで合成したみたいな世界だ。

 この世界の青空には緑色の龍がいる。

 人間より一回り大きい狼の人間みたいな奴が甲羅から左右4発ずつミサイルを発射している亀とタイマンしている。

 二本の剣を持った、青年が白髪で髪の長い人間風の男と戦っている。

 槍を持った赤い肌に黒い翼が生えた悪魔が3人で談笑しながら地を闊歩している。

 そんな景色を見て彼女は

「これが君の世界なんだ……。こんな世界で生きてたのに魔力使えないの以外かも。よく生きてられたね」

という。

 違う。違うんだ。俺はあの世界で初めて人外と戦った。人外を見た。武器を持った。殺されかけた。

 俺はこの世界で生きていない。初めて来た。

 ただこの世界が元の世界を完璧に再現しているせいで脳がおかしくなる。目眩がする。俺はこの世界に住んでたっけ。そうだ、家族は!?他の生徒は?先生は?

 ……あれ?居ない。そういえばこの狂った世界に来てから人を見ていない。

 どこかに避難しているのだろうか。

 それとも長い年月がたち、ここに住む人種が変わってしまったのか。それはないな。それだったら建物とか植物とかに大きな変化があるはずだ。

 ということは……?

 殺された?

 皆殺し?

 そういうことなのか?

 不思議とそこまで悲しくない。ははっ。情緒がおかしいな。

「何笑ってるの?」

 俺は自然と笑っていたのか。

「いやさ、現実味が無くてさ、もうおかしくなっちゃったのかな」

 この世界に来て思った。

 何が正しいものなのか。

 全てが俺の夢なんじゃないか。

 火事が起きるところから。それよりもっと前から夢なのかもしれない。現実ではないことが連続で起きて世界は俺に対して説明もなしに「これを認めろ」と圧をかけてくる。

 もうどうでもいいや。

 その瞬間、教室の廊下が見える窓が割れる音がする。振り向くと壁が壊れていた。

新章突入って感じですね!

クトゥルフ神話TRPGのあの絶望感を意識してみたりしました。

再現出来てたかなってことで。

疲れたー、もう書けん!笑

頑張りまーす

ということで読んでくれてありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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