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8. 白衣の美少女に出会いました

「先生、今日はよろしくお願いします」

「うん、よろしくね。シオンさん」


 そう微笑んだのは私のクラスの担任でもある先生、ジル・トレイン先生。

 ワインレッドの髪に黒い瞳。怖い印象を受ける見た目ではあるけれど、微笑んだ顔は聖母のようだと言われている。

 しかし、私から見ればただのイケメンの微笑みである。


「えっと、シオンさんは確か特殊な異能を持っているんだよね」

「はい、そうです」


 学園長からの手紙には教師は私の異能を知っていると書かれていた。だからジル先生も私の異能をもちろん知っている。


「大変だったね。でも大丈夫。これから頑張れば間違いなく君の大切な力になるよ」


 ジル先生はそう微笑む。

 今から受ける授業は「異能実技」という特別な授業だ。

 マンツーマンで行われるため周囲の生徒に異能がバレることはない。まだ不安定な異能を使いこなせるようにすることを目的としている。

 そして、ジル先生のように異能実技を受け持つことができる先生はあまりいない。危険な異能だってもちろんある。そんな異能を持つ生徒を相手にしてきているのだから、こんな善の塊のようなジル先生でもすごい先生なのだ。


「じゃあ、手を出して」


 言われるがまま手を差し出すと、ジル先生が手を取った。


「あれ、声が……」


 驚いてジル先生を見つめる。声が聞こえない、なんてことは初めてだ。


「俺は様々な異能と触れ合っているからね。でも、気を抜くとすぐに聞かれてしまいそうだね……君の異能はとても強力らしい」

「私の異能は、そんなに強いのですか? 私は自分の異能をすごいと思ったことはあまりなくて……」


 ジル先生はぱっと私から手を離すと、こちらをじっと見る。


「シオンさんは、自分の異能が嫌いなのかな?」

「そんなことは……確かに異能のせいで色々ありましたけど……」


 ここに来てから不便だと感じたことは一度もない。

 昔のように酷い言葉は聞こえないし、エースも、スカイもリーフも、みんな嬉しい声だった。


「じゃあ、大丈夫。自分の異能が好きなら、異能が君に害を与えることはきっとない。だから、これから一緒に頑張ろうね」


 ジル先生はふわっと笑った。その笑顔は聖母みたいで、嘘には思えなかった。


「はい!」


 私はその笑顔につられて笑う。

 たまにしかない授業だけれど、これから頑張って、みんなの役に立てるような異能にしたいな……!




「シオン! お昼食べに行こう!」


 教室から出ると、リーフが笑顔で駆け寄ってきた。


「うん! もうお腹すいちゃったよー」

「今日どんなスイーツあるかなあ」

「私はオムライス食べる!」


 そんな女子っぽい会話をしつつ歩いていると、前からよろよろと歩いてくる人影が見えた。大荷物を抱えていてあまり前が見えていない様子だ。


「大丈夫ですか?」

「荷物持ちますよ」


 私はそう声をかけて荷物をいくつか受け取る。


「本当にありがとう! 助かるわ!」


 積まれていた荷物が少なくなって現れた顔に私は目を見張る。


 絶世の美少女……! 


 はっきりとした顔立ち、くりくりの目。メイクも素敵で、ピンク色のツインテールもおしゃれだ。

 しかし、着ている服は白衣だ。


「ごめんなさい。サイエンス部の部室まで運んでもらいたいんだけど、いいかな?」


 白衣の美少女は申し訳なさげに眉を下げている。

 私とリーフは「わかった」と頷いた。



 サイエンス部の部室にたどり着いて私たちは重たい荷物を下ろす。


「本当に助かったわ!」


 美少女は笑顔でそう言うとお礼だとお茶を準備し始める。


「あなたはサイエンス部なのね」


 リーフがそう尋ねると、美少女は慌てて言った。


「自己紹介もしないでごめんなさい! 私はアリス。1年A組よ」

「1年生!? じゃあ私たちと一緒なんだね!」


 白衣の美少女、アリスは嬉しそうに頷く。

 スタイルが良すぎて先輩だと思ってた……

 アリスは上機嫌のまま、ティーポットを運んでくる。すると。


 何につまずいたのか、アリスは見事に体勢を崩して――紅茶を床にぶちまけた。


「大丈夫!?」


 私とリーフが駆け寄ると、アリスは苦笑いして立ち上がって、


「またやっちゃったわ……私、すっごいドジで」


 アリスはため息をつきながら、床に広がっている紅茶と割れたティーポットをじっと見つめた。そしておもむろに手をかざす。


 すると、割れたティーポットがみるみる元の形に戻っていく。紅茶も塊になってティーポットの中に戻っていく。

 まるで逆再生しているみたいに、ティーポットは見事に復活した。


「すごい……」

「すごくないよ。これ、私の異能なんだけど、物体を数十秒前の状態に戻すことができるの。でもこの通りこの程度の物しか元に戻せない」


 アリスは「綺麗だから、飲んでも問題ないよ」と笑って紅茶を注いでくれた。


「だからね、サイエンス部に入って、科学の力でもっとすごい異能になればいいなって思ってるの! それにジル先生にもビシバシ鍛えてもらうつもり」


 なるほど、だからアリスはサイエンス部に……

 美少女リケジョ。とてもいい。


「ジル先生、とってもいい先生よね!」

「そうそう、それにイケメンだしね」


 リーフに同調する。イケメンで聖母なジル先生は人気だなあ……


「そうねー。ジル先生ほんと素敵よね!」


 みんなジル先生を思い浮かべてうっとりする。



 それから私たちは昼食を食べながら、イケメンたちの話題で盛り上がった。

 好物のオムライスを食べながら、美少女たちと語り合えるのはこの上なく幸せだった。





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