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5. 可愛い友達ができました

 今日は初めての部活。

 だけど……生憎の雨。

 嬉しくないといえば、嘘になってしまうけれど、せっかく入部したのだからやりたかったな。


 そう思いながら横目でスカイを見る。

 スカイは今日を楽しみにしていたから、しょげてるだろうなあ……


「今日は中止かあ」と残念そうにする先輩たちにスカイが声をかけた。


「俺に任せてください!」


 しょげてるだろうと思っていたがスカイは胸を張ってそう言った。

 不思議そうに頷く先輩たち同様に私もスカイを見守る。

 スカイは一歩歩み出て、手を合わせると目を瞑った。


 すると、厚く空を覆っていた雲が少しずつはけていく。

 雨もピタリと止んで、お日さまが顔を出した。


 みんな目を丸くしてスカイを見つめる。スカイはあっけらかんと笑うと、


「俺の異能は天候を操ることなんだ。祈れば晴れにも出来るし、雨にも出来る。だけど、3時間ぐらいしか効果はもたないんだ」


 と、説明した。すると先輩たちも「じゃあ、早く行かないと」と歩き出した。



「スカイ、すごいね」


 私はスカイと並んで歩いている。結局1年生は私とスカイしか入らなかったらしい。


「そんなことないってー」


 わかりやすく照れながらスカイが言う。

 天候を思うままにできるなんて、私の異能よりよっぽど万能なのでは、と思う。

 私の異能は特殊だけれど、体に触れる機会さえ減らせば対してすごくはないし……


 と言いつつ、足元が不安定な山道では並んで歩いているとしょっちゅうぶつかってしまう。私は運動音痴だから尚更だ。

 その度にスカイの心の声が聞こえてくる。

 でも裏表のない光属性の彼は私がよろけても邪険に思うことはないらしい。


「そーだ、シオン。もうリーフと話した?」


 私はぎくっとして「まだ」と答える。同じクラスなのにいまだに話せてないとか恥ずかしい。

 リーフはスカイの彼女らしい。リーフちゃんいい人捕まえたね! と思いつつもどんな子かずっと気になっていた。

 おそらくスカイはこの性格だからモテること間違いなしだが、きっと彼女もすごいのだろうな。

 こうやって部活で話していることが知れていじめられでもしたら……と想像して少し身震いする。



 そんなこんなでリーフちゃんを勝手に想像しながらも今日の目的地にたどり着いた。


 わあっと声が上がった。

 そこには美しい花畑が広がっていた。ピンクに紫に、青に……デートで連れられでもしたら一瞬で惚れてしまうだろう。


「すっごく綺麗だなー!」


 スカイがはしゃいで辺りを見回す。私もその姿を見ていたら楽しくなってきて、一緒にわあわあと花畑を満喫した。




「いやあ、すごいよかったなぁ」


 そう花畑に思いを馳せながら呟く。

 ゲームでは感じられない感動を味わえたなあとホクホクしつつ下山する。


 学園に戻ってきて、手や頬に泥が付いていることに気がついた。さすがに女子としてこれはまずいと急いで近くの水道へと走る。

 ようやく見つけた水道にはホースが取り付けられていた。勝手に外してしまうのはいけないと、ホースの先を確認することにした。


 ホースを辿り、着いたのは植物園だ。

 珍しい植物たちを眺めながら、歩いていくと、水を使う音が聞こえた。


 透き通る緑色のボブヘアーの少女がホースを使って何やら花壇に水をあげているようだ。

 ふわふわした雰囲気に見惚れていると、驚きの光景が目に映る。


 少女が水をかけた植物がリズムに乗って咲き出していくのだ。

 そうしてあっという間に咲き誇った花壇を見て私は思わず声に出してしまった。


「すごい!」


 すると彼女は驚いたように振り向いて少し恥ずかしそうに俯いた。


「ありがとう。……シオンさん、だよね?」


 突然私の名前が出たことに驚いていると、


「同じクラスのリーフ・フィオーレ。スカイから話を聞いていて、話してみたいと思っていたの」


 とリーフは笑った。

 この子があのスカイの彼女のリーフちゃん……!

 想像していたよりもはるかに可愛くてそして溢れ出る天使のオーラ。


「私は、シオン・アリシア。私も話したいと思ってたの」


 すっかり天使オーラにやられてうっとりしながらそう言った。


「見られてたのは少し恥ずかしいんだけど……私の異能は植物を操ることなの。水をかけないといけないから、いつの間にかここをお世話するのが当たり前になっていて」


 リーフは少し照れくさそうに先程の花壇を見せてくれた。聞けば、園芸部らしく、植物の世話をしながらスカイを待っていたそうだ。


「今日はスカイと一緒に花畑を……」


 すっかり可愛さにやられて言いかけて、はっとした。

 私は知っている。女子の恐ろしさを。

 特に好きな男子が絡んだ時の女子は本当に怖い。笑顔でも優しくても内心ドロドロしているものだ。

 リーフもそうなのかな、と若干疑ってしまう。

 すると固まっていた私を見て不思議に思ったのか、じっと眺める。

 なんだろう、と思わず身構えると、リーフはポケットから可愛らしいハンカチを取り出した。


「顔に土がついてるからとってあげる」


 そうリーフの手が私の頬に伸びてくる。

 少しだけ、肌に手が触れた。


『シオンちゃん、可愛いなあ』


 ……はい? 


 私は一瞬思考停止し、聞き間違いだと思うことにした。


『スカイの部活友達がいい人でよかったなあ』


 な、なんて優しいんだ。私はさっきまで疑いの眼差しを少しでもむけていたことに反省する。


『友達、とかなれないかな……』


 私は目を丸くする。


「ぜひ!!」


 気がつけば、そう叫んでいた。リーフはあまりの勢いに驚いたのか、少しとびのいた。

 私はちょっと恥ずかしくなって、ごほんと咳払いをする。


「私と、友達になってくれませんか……?」


 そう勇気を出して言った。

 こんな可愛い子に友達になりたいと思ってもらえるなんて、幸せすぎる。

 リーフは目をパチクリしてから笑顔になる。


「もちろん! よろしくね、シオン!」


「ああ、呼び捨てとかまだ早いよね」と慌てるリーフに、私はぶんぶんと首を横に振った。


「私もリーフって呼んでいいかな?」


 そう言うと、リーフは大きく頷いた。



 しばらく談笑していると、スカイが大きく手を振りながら駆け寄ってきた。


「リーフ! 待たせてごめん!」


 スカイは少し息を荒くしてリーフに謝る。リーフは「大丈夫」と笑う。


「リーフとシオンが仲良くなってくれて嬉しいよ!」


 スカイがそう私とリーフを見てニッコリ笑う。


「じゃあ、また明日ね!」


 リーフが手を振ると、スカイも「またなー!」と大きく手を振った。

 私も嬉しさいっぱいの笑顔で、手を振り返す。


 寮に帰っていく2人を眺めて、私は思った。


 あのカップル……最強に推せる!!


 もう負の感情なんかないんじゃないかってぐらい底抜けに明るいスカイと、容姿はもちろん、中身まで天使のリーフ。

 なんだ、この溢れ出るほんわかさ……


 心が満たされていくのを感じながら、私はスカイと新しくできた友達のリーフを見つめていた。

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