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25. 気分は魔法少女です

「生徒会!?」


 みんなの声がいっせいに響いてきて私が縮こまりながら頷いた。


 あれからとんとん拍子で話が進み、私は反論する間もないまま、生徒会メンバー入りを果たしてしまったのだった。


「この学園の生徒会は優秀じゃないと入れないと聞いたけれど……」

「だけどすっごいことだよー!」


 アルトがこちらをじっと見て、レイはニコニコと嬉しそうだ。

 アルトの悪気のない一言に打ちのめされながらも「特殊異能を持つ生徒会長の頼みで!」なんて言えるはずもなく、私は苦笑いする。


「確か、1年はまだ誰も入っていないから……」

「シオンが初めてってことか!? すごいなー!」


 リーフとスカイがカップルならではのテンポでそう言う。荷が重い言葉はやめてくれ……


「俺も入りたいなあ……」

「私も入りたいわ! シオンと一緒にお仕事したら楽しそうね……!」


 リッカが羨望の眼差しでこちらを見る。アリスの好奇心は、きっと理系ならではのものな気がしてならない。確かに、問題を起こす予感しかしませんけど……


 盛り上がるみんなをよそに私は大きなため息をついた。





「シオン……大丈夫か? 今からなんだろ?」


 みんなと別れて生徒会室へと重い足取りで向かっていると、エースに声をかけられた。


「うう……不安だよ……だって生徒会とかもう次元が違うっていうか、もう場違いすぎて無理ー!」


 泣き付くようにエースにそう言うと、エースはははっと少し笑う。


「なんかあったら、俺に言えよ? それに……俺ならシオンの異能のことも知ってるし別に驚きもしないし言いふらしたりもしないけど」


 そう詰め寄ったエースの探るような眼差しに思わず目を逸らす。

 バレてる。さすがエース……

「絶対内緒だよ」としつこく言ってから、私は先程あったことを説明し始めた。




「なるほど。シオン以外にもいるんだな……」

「私もびっくりしちゃった」


 全て事細かに、というわけではないけれど、無い語彙力を振り絞って説明しきると、エースはそう呟いた。


「わかった。でも無理すんなよ? それに……」

「それに?」

「いや、なんでもない。会長がイケメンだからって現抜かすなよ!」


「分かってる!」と頬を膨らませると、エースはヘラっと笑って「頑張れ!」と言って去っていった。


「何言おうとしたんだろ……」


 走っていくエースの背を見ながら呟く。エースが私の異能を知っている以上、なんだか触りづらい。

 エースがなんて思っているのか知りたい、と思ってしまうのはきっとエースが私に優しすぎるせいだ。


「全く……これだからイケメンは」


 はあ、とまた大きくため息をついて今度こそ私は生徒会室へと向かう。





「失礼しまーす……」


 音を立てないように入るが、生徒会室にはまだ誰もいないようだった。

 ひとまず端っこの方にある椅子に腰掛ける。


 カンカンカンカン! と荒れ狂うようにゴングがなった。



 スポットライトが私を――というよりかはアラートが赤く点滅している。


『いや、なんで私が生徒会なの!? 協力しやすいとか言っていたけれど……場違いすぎる!!』


 そこまで一呼吸で叫ぶとはっと目を見開いた。


『まさか、オーラの圧で私を殺す気なのか、そうなのか!?』


 はあはあと呼吸を正常に戻しながら、


『でも、生徒会って青春の宝庫って感じがするかも! イケメン会長に、美青年副会長……いや、もうこうなったらこの美形集団を堪能してやるわー!』


 と叫んで拳を突き上げた――




「あの……大丈夫?」


 現実でも拳を突き上げていた私の目の前には、水色の長い髪の美女がいた。心配そうに覗き込む彼女に私は恥ずかしくなって無言で腕を下ろす。


「あ、話は聞いているわよ。新しいメンバーの子よね。私は3年のリラ・スプライト。何かあったらいつでも頼って頂戴ね!」


 一見、クールビューティな印象を受けるリラには見覚えがあった。前にすれ違ったときに私が注目した美女だ。


「あ、私は1年のシオン・アリシアです! 今日からよろしくお願いします」


 緊張気味に頭を下げると、「そんな硬くならなくてもいいのよ」と微笑む。思ったよりも柔らかい印象に胸を撫で下ろしていると。

 リラの肩から提げているポシェットが揺れた。小動物でもいるのかな、と思いながら目を擦っていると。


「この子新しい子ー?」

「ふうん、けっこう可愛いんじゃないー?」


 リラのものとは思えないハイトーンボイスにびっくりして目を開ける。


「ふぇ!? よ、妖精!?」


 リラの周りを赤い髪をお団子にしている女の子と、黄色い髪を2つ縛りにしている女の子が飛び回っている。

 羽も生えてまさしく妖精、といったような風貌だ。


「まあ、学校ではあまり出てきてはダメと言っているでしょう?」


 リラは戯れる妖精たちにうふふと笑いかける。

 もう女神が妖精と戯れてる夢のような絵が出来上がっていて、私は耐えきれず声を上げた。


「可愛いすぎる! 妖精ちゃんたちもリラ先輩も! 目が癒されます、ありがとうございます!」


 そこまで言い切って、ぽかんとしているリラ先輩たちに気がついて一気に恥ずかしさがこみ上げる。


 うわあ、やってしまった……絶対ドン引かれてるよ……


 そう羞恥心でいっぱいになっていると。


「おっもしろーい! ね、リラ私気に入っちゃった!」

「ねーねー、友達になりたーい!」


 そう妖精たちが言い、リラも笑顔で頷く。


「紹介するわね。こっちがアミ、こっちがレミ。2人とも私のお友達よ。私の異能は妖精と意思疎通をすることなのよ。私といると2人の声も聞こえるわ」


 赤い髪の方がアミで黄色い方がレミか。

 ごちゃごちゃになりそうだ、と思っていると、リラが嬉しそうに言う。


「2人が気にいる子なんて珍しいわ。きっとシオンはいい子なのね。これから仲良くしましょうね」

「そうなんですね……! よろしくお願いします! えっと、アミちゃんとレミちゃんもよろしくね」


 妖精ちゃんたちに気に入られたというのがとても嬉しくて、顔が綻んでしまう。

 アミもレミもきゃっきゃと飛び回っていて、まるで魔法少女にでもなったような感覚になる。


 これから始まる生徒会活動の憂鬱さが少し和らいだ気がした。


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