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22. ウィンターホリデー6日目 語弊がひどすぎます

「はわわ……おいしそう……!」


 私の目の前にはイチゴがたっぷり乗っかったパンケーキがある。私は目を輝かせながらなんとなく写真をLinaにアップした。


「シェアしよーよ!」

「賛成! ね、後で辛いラーメンも食べに行こうね」


 リーフがにこにこと自分のお皿を差し出す。チョコがたっぷりかかったパンケーキを一口頬張る。一方で王道なプレーン味のパンケーキを頬張りながら辛いラーメンを所望したのはアリスだ。正直意外ではある。


 今日は私とリーフとアリスの女子3人で女子会をしている。今日でこちらで過ごすホリデーは終わりのつもりだ。明日からは家に帰る予定だから、今日は女子会を思いっきり満喫しなければ。


 パンケーキをもぐもぐと口一杯に食べていると、ピコンと音が鳴った。

 見ると先ほど上げた写真にたくさんのコメントが来ている。それは主に友人たちからのものだった。


「なんかみんなして誰と行ったのって聞いてくるんだけど……」


 エースやリッカ、アルトやレイまでそんな内容のコメントが並んでいる。みんなこの美味しそうなパンケーキにはノーコメントなんですね……


「ねえ……シオンさ、好きな人とかいないの?」


 少し不機嫌になりながら画面を眺めているとリーフがそう尋ねてきた。この会話はなんだか女子会らしくて良いけれど私には縁のない話だ。


「うーん。特にはいないかな」

「じゃあじゃあ、お兄ちゃんはどう?」

「いや、シオンはエースとの方が仲良いもんね!」


 お互い対抗するように私に言う2人に「ええ、レイ先輩とエース……?」と困ってしまう。


「この前エースはシオンのこと押し倒してたもんね」

「え! いやでもお兄ちゃんもシオンのこと脱がせにかかってたけど!」


 わあわあと謎に言い合いを始めた2人に私はすぐさまツッコミを入れる。


「いや語弊がひどい! そもそもエースのことを押したのはリーフでしょ! それにレイ先輩はファスナー上げてくれてただけ!」


 2人してなんてひどい勘違い、いや、話の盛り方なんだと唖然としているとリーフはてへっと笑って、アリスは「そうだったの!?」と目を丸くしている。アリスの勘違いを正せてよかった……


「でも、アルト先輩も捨てがたいよね。良い先輩って感じするし!」

「確かに! でもリッカもいいんじゃないかな。頭もいいみたいだしね!」


 きゃっきゃと盛り上がる2人に女子トークってこんな感じなのね、と感動してしまう。女子会なんて、いつぶりだろうか。


「私リーフとアリスと仲良くなれて本当に良かった」


 思わず呟いた言葉に2人は一瞬キョトンとしてから笑う。


「私もだよ!」

「2人といると楽しいわ!」


 その言葉がとても嬉しくて、照れを隠すようにパンケーキを頬張った。




 ***




 パンケーキを頬張るシオンを見てリーフとアリスは視線を交錯させる。


 お互いだいたい考えていることは分かっていた。

 シオンがものすごい勢いでモテていること、そして鈍感すぎて全く好意に気付いてないこと……


 シオンは少し自分の評価が低すぎる。何があったかは詳しくは分からないが、おそらくそれがシオンを鈍感無自覚タラシにしてしまっている原因だと思われる。


 リーフとアリスは呆れ気味にため息をつく。


 リーフはエースの慌てっぷりを見てようやくシオンへの気持ちを自覚したんだと気がつき、協力体制を取ることにした。

 しかしながら、エースの焦ったさは黙って見ていられるものではなく、早く進展するように何かイベントを起こすように心がけている。


 一方で兄を応援すると決めたアリスはひたすらに兄の魅力を伝えようとしている。

 あの女性嫌いの兄が好きになった子なんだから、絶対にくっつけさせたいと思っているのだ。


(エースはシオンのいわば幼なじみ。いつも一緒にいるんだし、絶対いいカップルになる!)

(いやいや、そんなことはないわ。お兄ちゃんはずば抜けてかっこいいもの)


 リーフとアリスは目だけで会話する。

 これは言うなれば、応援した方をくっつけたいというプライドの戦いなのである。


 そうふふふと笑い合っていると。


「私、リーフとアリスと仲良くなれて本当によかった」


 ふとそう呟いたシオンは本当に幸せそうに笑っていてリーフとアリスは顔を見合わせた。


 正直……大切な友人が選ぶ相手なら誰だっていい。もちろんそいつが嫌なやつだったら話は変わってくるけれど。


「ね、3人で写真撮らない?」


 リーフがそうスマホを掲げて、シオンとアリスは笑顔で頷く。


(まあ、今は停戦ってことで!)

(そうね。アップして男子に見せ付けなきゃね)


 ふふっと笑って、リーフとアリスは顔を見合わせる。

 そうして撮った写真はみんな素敵な笑顔で写っていた。

 もちろん、男子陣が画像をすぐさま保存したことはシオンは知るよしもないのだった。

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