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三つの悪意  作者: Fa1
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夏合宿プラン

 目の前に広がっている光景が信じられない。映画や小説ではなく現実で、目の前で起きているのだ。その”鬼”は死体の側にいる。すぐにその”鬼”を処理しなければいけないのに足がすくむ。体が完全に硬直している。その”鬼”はこちらの様子を伺いながら首を大きく傾け、目を見開きケタケタと笑い出す。

「おたくらは見えてねぇなあ、本質が。どっちが本当の鬼だかわかっちゃいねぇ。怖い怖い。」

 *

 2019年8月2日。十畳ほどの部室内には4人の男女がいつもの場所に居座っている。そして部室内にはいつも通り怪しい雑誌とお菓子の空き箱が散乱している。ここはオカルト研究サークルと言い、その名の通りU.F.O.やU.M.A.、妖怪や超能力を追い求めることを目的としているサークルである。(実際にはレポート課題を仕上げたり、それぞれの趣味に勤しむ場になっているが...)

窓側でボロボロの椅子に腰をかけて難しそうな本を読んでいるのが部長のDさん。背丈は180cmほどで細いフレームのメガネをかけている。いわゆるところのインテリ系イケメンである。

その隣でさらにボロボロの椅子に体育座りをして退屈そうにスマートフォンを睨んでいるのがC君。髪色は明るくパーマもかかっている。毎日のように合コンに参加する彼は、いわゆるところのチャラ男ないしはパリピと呼ばれる類の者である。しかし性格は人懐こく、実際僕自身も彼とは非常に仲が良く話しやすいと感じる男である。

部室の中央に位置し、室内の大部分を占領している会議用テーブルに備え付けてある椅子に腰をかけているのは、部員のB子ちゃん。セミロングの黒髪で155cmほどの小柄であり、口数も非常に少なく感情表現も豊かとは言えない。ただ、ホラーやスプラッタといったカテゴリの作品をこよなく愛しているようである。意外なことに高校時代は演劇部に所属していたとかなんとか。

この部屋にはまだ来ていないが、B子ちゃんとは真逆の性格で明るく活発なE美さんという女の子もオカルト研究サークルに在籍している。B子ちゃんと幼馴染らしく、そのB子ちゃんが大のオカルト好きであることと、E美さん自身に特に趣味と呼べるものなかったことから、B子ちゃんに合わせる形でこのサークルに入部したようである。ちなみに、C君はE美さんを追っかける形で、D部長はホラー小説家志望という動機があって入部しているようである。残る僕は、単純にオカルト映画(ないしSF映画)好きが動機である。

「A君。ちょっとどいてくれない?部室に入れないんだけど。」

部室のドア前に陣取っていた僕の背後からE美さんの声がする。Aとは僕の名前である。ちなみに僕は普通(より少し根暗)の大学生で、身長も体重も成績も何もかも平均である。

僕はごめんなさいと謝りながらすぐに道を開けた。するとE美さんはそんな僕には返答もせずに、会議用テーブルに両手を叩くように置き興奮気味に皆に向かって話を始めた。

「今年の夏合宿のプランを考えてきたわよ。みんなどうせ明日からの夏休みの予定も特に無いでしょう?」

「日程次第だ。まずはプランとやらを聞かせてもらおうか。」

呆気に取られている他の部員よりも早く返答をしたのはD部長。コホンと小さな咳払いをしてからE美さんが自慢のプランの説明を始める。

「みんなで鬼鳴(おになき)洞窟に行きましょう!オカルト研究サークルだし、知ってる人もいると思うけど、その洞窟にはその名の通り鬼が封印されていると言われているの。孤島の中にあるからあんまり人は近寄ってこないらしいんだけどね、その地元に住んでいる親戚のおじさんに頼んでみたら、そこに連れて行ってくれるって言ってくれたの!明後日から3日間よ!」

変わらずやや興奮気味に話すE美さんにD部長が冷静に返す。

「随分と急だな。日程的に問題は無いが、なぜ急に鬼鳴洞窟なんだ?それに君はお化け屋敷とかそういった類の代物は苦手だっただろう?」

「えぇと、やっぱり私もオカルト研究部員として、それらしい活動がしたくなったんですよ。ほら、来年から就職活動も始まるし、なんかアピールできるものが欲しかったりするんです。」それは就職活動でプラスになるのか?というD部長の問いに対して絵に描いたように狼狽えるE美さん。そこに軽い口調でC君が入る。

「まぁ良いじゃないですか部長。俺はE美ちゃんと旅行にいけるなら理由も場所も問わないですよ。それに心霊スポットに行ければ、部長の執筆活動にも役立つと思いますよ。」

最近あまり進んでいないホラー小説の執筆作業の話題になり部長はムッとした表情になる。続けてB子ちゃん。

「私も特に反対意見はありません。本当にいるのなら鬼も見てみたいと思いますし。」

「じゃあこれで5人中3人はOKってことね。A君も部長も良いですよね?」

部長と僕は一度お互いの顔を見合わせ、E美さんの提案を承諾する。部長は小さくため息をしていた。

 こうして半ば強引に僕たちオカルト研究サークルの夏合宿の予定が決まった。

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