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ツンデレ姫?

 結局、松姫は俺達と共に旅する事になった。

 旅籠に泊るとなると、向こうは姫様、松姫、梓と華やかな組み合わせだ。

 一方、俺達はと言うと、犬塚、犬飼、犬田、犬川、犬村と言うむさい組み合わせだ。

 佐助が部屋に姿を見せないと言う事は、きっと姫から禁じられている天井裏に違いない。


「緋村、ちょっといいかな」


 そんな中、部屋の障子を少しだけ開け、姫が俺を呼んだ。なんか、ついこの前にもあったような気がする。期待を裏切られた記憶がよみがえり、返事に力がこもらない。


「なんでしょうか?」

「元気なくない?

 私と話したくないのかな?」

「そんな訳ないですよ」


 とりあえず、そう言って、姫の所に歩み寄る。


「ちょっと緋村、借りるねぇ」


 八犬士たちにそう言うと姫は廊下の少し先を指さした。

 やはり、あの時の記憶がよみがえる。

 そんな俺にお構いなく、姫は廊下を進んで行き、ある部屋の前で立ち止まると、その部屋の障子を開けた。


「べ、べ、別に緋村と二人っきりになりたくて呼び出した訳じゃないんだからねっ!」


 俺を見つめ、姫はそう言った。

 な、な、なんだこの姫の懐かしい態度は?

 姫は蝋燭が灯された部屋に入ると、部屋の奥に座った。


「聞いておきたいことがあったから、呼んだだけなんだからねっ!」

「は、はぁ」


 俺としては戸惑いしかない。


「あ、あ、あのさ」

「はい、姫様」

「松姫との関係はどうなのかな?」

「はい?

 意味が分からないんですが」

「も、も、もしかして、松姫の事も好きなの?

 私がいない間に、松姫と何かあったの?」

「えーっと、何かしたと言う記憶はありません」

「そう。だったら、いいんだけどさ。

 あまり、他の女に優しくして欲しくないのよね」

「それって、どう受け取ればよろしいのでしょうか?」

「そ、そ、そんな事、分からないでどうするのよっ!」

「えっと、一つ、確認させていただいていいでしょうか?」

「別にいいわよ。

 何だって、答えてあげるんだから」

「姫様は、別の世界から来られたと言っておられる姫様ですか?

 それとも、私が知っている姫様ですか?」

「そ、そ、そんな事も緋村は分からないの?

 緋村の知っている姫に決まっているでしょ」

「おお。姫様、よくお戻りになられました。

 あの別の世界から来たと言う姫はどうなされたのですか?」

「ぶっぶぅー。

 二分経ったので、私がこの体取り戻しました」

「はい?」

「いやあ、元の姫様って、こんなキャラだったんだぁ。

 私がこの体を使ったままだと、緋村との関係は悪くなるばかりで、結局自分は選ばれないじゃないかと文句を言うし、松姫との関係が気になると言うから、二分だけ代わってあげるって話をしたの。

 私は緋村と松姫の関係なんて興味ない事を問いただす気なんか、さらさら無いし。

 あ、そうそう。時々これからも代わってあげることにしてるから、緋村も楽しみにしててね。

 二分じゃあ、いやらしい事もできないだろうしね。

 これはこれからも修羅場が楽しみだねぇ。

 あ、梓って色々ありそうだけど、私は梓推しなんで」

「は、はぁ」

「じゃあ、私は自分の部屋に戻るので」


 元の姫でなくなった姫は、俺に何の未練も見せずに、部屋を出て行った。

 ただ、元の姫があの体の中にいて、姫の経験がそのまま元の姫にも伝わっているらしいと言う事が俺を混乱させた。

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