表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/156

世界の○わりに柴犬と風な

「浜路姫よ。

 呼び出すのが速すぎじゃ。

 現れぬつもりであったが、生死にかかわると言うから、やって来たのじゃが、どう生死にかかわるのじゃ?」

「伏姫よ。

 この者は清潔すぎる国におったから、今の状況が耐えられぬのであろう」

「さすが、八房ね。

 私をここに連れて来たんだから、責任取ってよね」

「で、私にどうせよと」

「待て、八房。

 ここは申世界、しかも予期せぬ者を姫は伴っておるぞ」

「ああ、伏姫さん、そんな事は気にしないで」


 姫はそう言うが、三猿の若君なんて、八房や伏姫の感覚から行けば、敵にちがいあるまい。


「まあ、そこは全て浜路姫に任そうではないか。

 して、望みを申せ」

「ここのみんなをお風呂上がりの状態にして、服も洗濯したてにして!

 そうねぇ。私の服はセーラー服にしてくれたらうれしいかな?」

「言っている意味も分からぬが、願いはそもそも一つじゃ」

「伏姫、まあよいではないか。

 私はセーラー服好きだし。

 どんなのがよい?

 北○治風か?

 神○高校風か?」

「そうねぇ。

 ○に代わって、お仕置きよぅ! 風なのもありかな。

 でも、八犬士たちを束ねる私なんだから、世界の○わりに芝犬とって感じはどうかな?

 分かる?」

「分かるぞ。

 我らは柴犬ではないが、いいかも知れぬのう」

「しかし、八房、あんた私の世界で何やってたのよ?

 まあ、それはおいておいて。

 スカート丈は松本先生に怒られないくらいで。

 あと、車輪の大きなキャリーケースも欲しいかな。そこに着替えの下着も詰めてくれないかな」

「承知した」


 八房がそう言い終えた時、俺達は元の場所に立っていた。

 はずなのだが、妙な違和感が俺を包み込む。

 それは俺だけではない。みな自分の手足や着物を眺め、その臭いを嗅いで驚きの表情を浮かべている。

 そんな中、嬉しそうな表情を浮かべているのは姫だ。

 見た事も無い服装で、すらりとした足を出している。

 しかも、その足はさっきまでとは打って変わって、きれいな肌だ。

 顔もきれいになっている。


「なんだか、花の香りが着物からするのですが」

「でしょう。

 みんな綺麗になってよかったね」

「は、はあ。なんだか、落ち着きません」


 大輔の言葉と俺も同感だ。


「それはそうと、姫様、そのお姿は?

 異国の服ですか?

 そう言えば、私の世界って何の事でしょうか?」

「犬飼さん、そこ気にしなくていいから。

 これはセーラー服。似合う?」

「足が出過ぎでしょ」


 俺が割って入った。そうだ。足を見せすぎだ。


「もしかして、足好きなの?

 ムラムラしちゃう?

 でもだめだからね」


 けらけらと明るい姫に戸惑っていると、俺の背後に隠れていた梓が俺の横に並んだ。

 まだ、恐怖が抜け切れていないのか、俺の服の腰辺りをぎゅっと握りしめたままだ。

 その梓に目を向けると、髪は光を反射し黒く輝いている。そして、俺の服を掴む手もきれいな肌色。そして、梓からもほのかに花の香りが漂って来る。


「姫様、こんなにきれいにしていただいて、ありがとうございます」


 違和感があったが、梓を見ていると俺も感謝したくなる。


「いいのよ。

 みんなできれいな方がいいでしょ?」

「はい」

「おっ。梓ちゃん、何か雰囲気変わった?」

「そうですか?」


 姫の視線は俺の服を握りしめる梓の手に向かった。

 そして、にんまりと微笑んだ。


「緋村、そう言うことなんだぁ。

 それはなにより。梓ちゃんの事、頼んだよ」


 その言葉ははっきり言って、俺の事は眼中になしと言う事だ。


「ああ」


 俺のその言葉にも、姫は微笑んでいる。


「ところで、佐助や犬塚さんはどうなっているの?」


 ようやく、そこに来ましたか。この浮かれ姫!

 なんだか、俺としてはそんな気分だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ