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姫様奪還

 姫奪還の準備は整った。

 約束の二週間までまだ一週間ある。


「では、姫様を取り返しに行く」


 俺のその言葉に反応したのはお金だ。


「緋村殿、あの日からまだ二週間は経っていませんが」

「まずはここで姫様を奪還し、二週間後までに裸婦照に赴き、犬塚殿を奪還する。

 それが俺の作戦だ」

「しかし、それでは姫様が奪われた事で、他の二人がどうなるか。

 それは緋村殿ご自身が仰ったことではありませんか」

「お金殿、それゆえ犬飼殿を連れて来てもらったのではないですか」

「意味が分かりませんが」

「それはこれから分かりますよ。

 では、大輔殿、姫様の下へ案内していただけませんでしょうか?」

「では行きましょう」


 大輔が主野又の砦の入り口に向かい始めた。


「犬飼殿、では」

「承知」


 その力から外れている俺達には分からないが、犬塚の力が及ぶ範囲の者たちには俺たちの姿は見えていない。


「私だ。この門を開けよ」


 砦の入り口で大輔が声を張り上げる。


「これは大輔様」


 門番の者たちにはやはり俺たちの姿は見えていないらしく、何の疑いもなく門を開けた。

 砦の中に入って行く。

 門のすぐ裏は屋根の無い通路だ。そこを進んで行くと、砦の建物に通じる門にたどり着いた。その建物は俺達が利馬主真雲天を抜ける時に通る関所と一体化しているっぽかった。

 平時の砦の中と言う事なんだろう。門番も内側にはおらず、そのまま先に進んで行く。

 建物の中の窓は申世界側にのみあって、甲斐族側の壁は全てが土壁で造られている。

 黙って、大輔の後について行くと、地下に通じる階段にたどり着いた。


「私だ。

 通してもらう」

「はっ!」


 三猿家の若君とあって、階段の両脇に立つ兵たちも横にずれ、階段の入り口を開けた。

 大輔が階段を下りていく。

 所々にろうそくが灯されているが、暗く、空気が澱んだ場所だ。

 階段の先には薄暗い通路があって、片側は土、もう片側には太い木の柱で造られた格子がはめられた牢獄が連なっている。


「うぅぅぅ」

「出してくれぇ」


 大輔の姿を見た者たちが騒ぎ始めた。

 こんなところに姫を閉じ込めていたのか。

 俺の心の中に怒りの炎が燃え盛り始める。


「姫様、助けに参りました。

 出てください」


 大輔はそう言うとすでに用意してあった鍵を使い、一つの牢獄の門を開いた。


「大輔さん、ありがとう。

 マジで助かったわ」


 そう言いながら、姫が姿を現わした。

 薄暗くて、その顔つきはよく見えない。元気そうなのかどうかが気になる。


「早くここを立ち去りましょう」

「ここはどうするのですか?」

「それはあとで犬飼殿が」

「犬飼さんが?」


 どうやら、姫には犬飼や俺の姿は見えていないらしい。


「犬飼殿、では牢獄の中には姫様の幻を、そして本物の姫様の姿は隠して下され」

「心得た」


 大輔の言葉に犬飼が応えた。きっと、これで姫の姿も見えなくなったんだろう。

 俺達は大輔を先頭にして、来た道を引き返していった。

元々、浜路姫の一人称スタイルのお話だったんですけど、途中で緋村視点のお話に切り替えました。

ここで姫が戻って来たので、元の姫視点に戻すのもありなんですけど、このまま話を作り替え終盤まで緋村視点で行かせていただきます。

これからも、読んで下されればうれしいです。

よろしくお願いいたします。

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