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治った人々

「い、い、今のは何だったんですか?」

「あ、あれが伝説の八房と伏姫なんですか?」


 一緒に八房と伏姫の姿を目の当たりにした二人の兵が、大輔に問いかけている。


「私も初めて見た。

 りなさん、あれが伝説の八房と伏姫なんですね?」


 大輔の問いかけに、私は静かに頷いて見せた。


「りなさん、あれを」


 犬塚がそう言って指さした場所には、さっきまでふらふらだった男が立ち上がっていた。

 そして、男は思いっきり両手を伸ばしたかと思うと、力に溢れた声を上げた。


「なんじゃこりゃあ」



「おお、本当に治ったのですか?」

「そのようですね」


 大輔の問いかけに、私はそう答えた。


「何が起きたんだ?」


 縄の前に立っていた兵たちが男の所に駆け寄って来た。


「お前、さっきまでふらふらであったじゃろうが」

「治りましたぞ。

 ほれ、このとおり」


 男はそう言って、飛び跳ねた見せた。


 きゅるるるる。


「病が治ったら、腹がへってしもうた。

 食い物を貰えんもんじゃろか?」

「残念じゃが、そんなものは無い」


 元気を取り戻した男に兵の一人がそう言った時、縄で封鎖された道の向こうから喚声が沸き起こった。


「うぉぉぉぉ。病が治ったぞい」

「わしもじゃ、わしもじゃ」


 そして、次々に道に飛び出して来たかと思うと、ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜びを体で表している


「これが甲斐族に伝わる伝説の力。

 妙椿を倒し、たまずさを封印した力」


 大輔はそう呟き、呆然としている。


「りなさん、いくつか教えて欲しい事があるんですが」

「何? 佐助」

「八房に言った病の原因のさいきんとかういるすって何ですか?」

「今の君には難しい話だから、それには触れないでおこうね」

「私のいた世界ってなんですか?」

「佐助、それも気にしなくていいから」


「りなさん、この力なら、本当に川を造れるのかも知れません。

 本当に私たちのために、この力を使ってくれるのですか?」

「大輔さん、当たり前じゃない」


「みんなぁ。

 みなの病を治してくださったのは、この方じゃあ」


 八房と伏姫の姿を見た兵の一人が大きな声で叫ぶと、さっきまで隔離されていた人たちが駆け寄って来た。


「ありがたや、ありがたや」

「この方は甲斐族の姫らしい。

 じゃが、我らのためにその伝説の力を使ってくださったのじゃ。

 そして、今、この地に川を造るために、地形を調べておられるそうじゃ」

「甲斐族の姫が、この猿族の地に川をですかい?」

「川があれば水に困らなくてすむではないか」

「本当に甲斐族の姫が我らに力を貸してくださるのですかい?」


 兵が発した言葉に人々は興奮気味だ。


「もちろんです。

 私たちは同じ人間なんです。

 助け合うのは当然じゃないですか」

「甲斐族は我らを滅ぼす事しか考えてないと思っておったが、間違いだったのか?」

「ともかく、私も一生懸命に応援させていただきます。

 今しばらく、この地に留まりいただけませんでしょうか?

 猿族の有力者たちに、今見た事を話して、川を造る協力していただけるよう頼んできます」


 そう言い残すと、大輔は私たちの事をその場にいた兵たちに頼んで、どこかへ消えて行った。

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