歌は宇宙戦争も止めちゃう
やがて、私たちは申世界の村の一つにたどり着いた。
ここにたどり着くまでに、川や池は見なかった。地面を見ても、湿気のある土はなく、どうやら全体的に乾燥地帯と言う感じだ。きっと、この申世界をぐるりと取り囲む裂土羅隠の標高が高く、湿気を拭くんだ空気はそこを越える前に外の世界にほとんどの湿気を雨として置いて行っているのだろう。
それを裏付けるかのように、ここまで見た中に水田は無く、穀物として植えられているのは粟のようだった。
この地を併合した里見義実がこの国土に魅力を感じなかったと言うのも、そのとおりっぽい。
「大輔さん、ここのみなさんの主食は粟なんですか?」
「ええ、粟は比較的乾燥を好みますから。
水の無いこの世界では水稲栽培なんて、不可能なんですよ」
「みなさん、食料が行き渡っていない感じですね」
そうなのだ。骨と皮ばかりとまではいかないけど、かなり痩せこけた人が多い。
甲斐族も猿族も文化は違うのだろうけど、外見に違いは見られない。それだけに分かり合うための障壁はかなり低いはずなのだ。
「そうよ。
異星人との宇宙戦争だって、歌で止められるんだから!」
「なんの話ですか?」
「いいの、いいの。
私の歌を聴けってね!」
「歌で戦争を止めれるって話ですか?」
大輔が怪訝そうに言った。
「歌って言うのはね、例えばの話で、本当に言いたいのは文化的に充実した生活をしている人々は誰も戦争なんてしたくなくなるのよ。まあ、強欲な権力者は別だろうけど」
「つまり、りなさんは私たち猿族の者に手を差し伸べてくれるって言っているんですか?」
「そうです。
例えばなんですけど、こちらの世界で水稲栽培ができるようになったら、喜ばれますか?」
「そりゃあ、もちろんですよ」
「なら、そうしましょう。
大輔さん、まずは雨が降らずに困っている場所とかご存じですか?」
「ええ、知っていますが、何をされるんですか?」
「雨ですよ。
これもア○フラシの歌ってものを歌って、雨降らしたりするんですよ」
「りなさん、それ違いますよね?
犬塚さんの力じゃないんですか?」
「まあ、その横で私が歌えばいいじゃない。
あ、著作権の関係でだめかぁ」
「って、また意味不明なんでけど」
「佐助、長いと疲れるから、イミフでいいよ」
「その言葉自身、イミフなんですけど」
なんて、会話をしながら、私たちは雨を求めている地を目指し始めた。