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米が無いのならば、菓子でも食えばよいであろう!

 もうすぐそこに迫っていた私の結婚。その相手の家 猿飼はこの国の外縁部に地盤を持つ四皇なる勢力の抑えの要。四皇が兵を集めていると言う情報に猿飼は国元に戻り、兵を集めて四皇との戦いの準備に入った。

 この国を統べる私の父は猿飼の援軍として、私の従兄のイケメン明智に兵を授け出兵させた。

 庶民たちも不穏な気配を感じ取り、びんびんに張り詰めた空気が町の中、本能寺を目指して歩く。


「ちょっと、この服、臭うんだけど」

「町娘に扮装しているんだから仕方ないでしょ」

「とは言え、ちょっとは洗った服にしてよ!」

「そんな服着た町娘なんていませんよ」

「いや、そこまで真剣に扮装しなくていいでしょ。見た目だけで十分なんじゃないの?」


 通りの真ん中だと言う事も関係なしに佐助に文句を言う。て言うか、言わずにいられない。少し動いただけで、服から臭いが沸き起こり、私の鼻を襲う。


「しかも、よく考えたら、これって他人の服なんだから、この臭いって私のじゃないよねっ!」


 そこに気づくと、今すぐにでも脱ぎ捨てたくなってしまう。

 庶民たちの視線どころではなく、私は生理的な拒否反応に抗う事はできない。


「周りをよく見てください」

「はい?」


 私にむけられる冷たい視線。でも、それ以上に衝撃的だったのはみんなの服装はもっとぼろく、顔も服から覗く腕や足も黒く汚れていて、しかも痩せこけている。それに離れていても臭うし……。

 ここで、臭う事に目を向けると、私の品格が疑われるので、そこは目を瞑って、いや鼻を瞑った気持ちで、冷静を装い、今までの言動を無かった事にして、黙って歩き始める。


 少し進んで行くと、少し先の辻を横断する一団が目に入った。今まで見て来た町の者たちとは違い、庶民の服を纏ってはいるけど、肌も清潔っぽく、体格もよいところから言って、それなりの生活をしている者たちに違いない。


「あんな人たちもいるのね」


 独り言のようにつぶやきながら、その一団を目で追っていると、道端で子供と寄り添うようにして、へたり込んでいたぼさぼさ髪の女性らしき人物がその一団の先頭の男の裾にすがりついた。


「私たちはもう何日も何も食べていないんです。

 せめて、娘にだけでも何か食べ物を」

「ご飯はないのか?」

「ご飯などどこにもありませんよ」

「米が無いのならば、菓子でも食えばよかろう」


 先頭の男はそう言うと女性の手を振り払り、女性に掴まれていたところを汚いものを払い落とすかのように手で払いながら、歩き始めた。


「あちゃぁ。言っちゃったよ。

 あの男。ばかなんじゃないの?」

「は、は、は、はは」

「なに顔を歪めながら、笑ってんのよ」

「いやあ、陛下も姫様にばかと言われちゃいましたかと思いまして」

「ええっ! あれが私の父親だったの?」

「最近、変ですけど、やっぱり頭打ったんじゃないですか」

「いや、ちょっと遠かったからかな。

 てへっ!」


と、軽く自分の頭を右拳でこつくふりをしてみせた。

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