表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/156

お堂の中

 そのお堂の中は、特に何かがあると言う訳でもなく、扉がある面を除いた三面が板壁で出来た少し薄暗い空間だった。

 扉から見えるのは、さっきまで私たちがいた平原であって、猿飼の兵たちが集まって来たら、すぐに見通せる位置ではある。


「集まって来てくれますでしょうか?」


 松さんが不安そうに言った。


「大丈夫ですよ。きっと。

 兵が集まったその圧力で、城から明地の兵を追い出して、城を取り戻しましょう。

 ねっ!」

「はい」


 松さんがにこりと笑った。


「しかし、明地って、何を考えているのか、全然分かんない事ないですか?

 松さんと結婚したいと言ってみたり、松さんの城を占拠していたり。

 そもそも、松さんは明地と結婚する気あるんですか?」

「もし兄上とそのような話になっていたのでしたら、私が知らないと言うとわが家の恥となりますので、何も申し上げませんでしたが、明地様がおっしゃっておられた話は正直なところ、私は初耳でした」

「うーん、そうでしたか。

 嘘だったとしても、松さんの兄上が亡くなっているのだから、真相を明らかにすることは難しいわね。

 松さんは明地はどんな人だと思っているんですか?」

「優しくて、いい方だと思います。

 それでいて、剣術にも秀でていて、頼れる方なんだと思います」

「そうですか。確かにそんな感じもするよねぇ。

 それでいて、ばれたとは言え、四公の旗印を使って謀反を起こすなんて、悪知恵もあるみたいだしねぇ。

 あれ?

 あの作戦って、四公と連携していなかったら、出来ない作戦なんじゃないのかなぁ?

 それとも、四公の動きに乗じただけなのかなぁ?

 うーん、なんだかすっきりしないんだよねぇ。

 みんなが誰かに踊らされているような感じがするのは気にせいなのかなぁ」


なんて、答えの出ない疑問に頭を悩ましている内に、目の前に広がる平原の先に数人の姿が現れた。簡易な具足に身を包んでいるところから言って、緋村たちが広めている松姫様帰還の話を聞いて、駆け付けて来た猿渡の兵に違いない。

 何かが起きるのは、変化があってその変化に気を取られた時か、ずっと変化が無くて気が緩んだ時。

 そんな事が脳裏に浮かんだ。


「犬飼さん。

 お願いがあるんだけど」


 そう言って、私は犬飼に一つのお願いをした。

 まぁ、そのために犬飼を指名して残ってもらったのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ