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私の意識が覚醒する以前の浜路姫

 偽の姫たちの一件に関し、見たままの顛末と私の疑問を緋村にぶつけてみた。

 でも、緋村にも分かるはずなく、私はすっきりしないままだった。

 そして、ふと私は私の意識がこの体を支配するまでの浜路姫の事を全く知らない事を思い出した。


「緋村、変な事を聞くけど、いいかな?」

「なんですか?

 どうしたら、胸が大きくなるかですか?」

「なんで、佐助が割って入って来るのよ。

 誰もそんな事聞いてないし」

「ああ、松さんと違い、男装しても便利だから、このままでいいって事ですね」

「いつ私が男装するって言ったのよ。

 佐助、その口、縫ってやろうか?」

「そんなことより、私に聞きたい事って、なんですか?」

「最近、私変わったと思う?」

「そうですねぇ。

 城を出てからご苦労されていますが、体形も変わっていませんし」

「佐助みたいなことは言わなくていいから」

「以前より、元気になられたのではないでしょうか」

「元気でなかった頃の話をしてくれない?

 できたら、生まれた時の話から」

「はい?

 どうしてりなさんご自身の事を私が?」

「いいから、して!」


 そう言って緋村に話させた浜路姫の話は、こんな感じだった。


 浜路姫が生まれた日、里見光太郎の枕元に仙童が立った。

 その者が言うには、今日生まれた姫様こそ、長い間伝説となっていた八犬士たちの上に立つ者 犬王の力を扱える姫様と言う事だった。

 犬王の力を扱える者こそ、犬王の剣の真の力、つまり伏姫と八房を呼び出して、その力を使う事ができるのだ。

 期待を一身に背負った浜路姫はすくすく育ち、仙童が犬王の力が覚醒すると言った16歳になった日より、毎日毎日、父の前で犬王の剣を持たされ、犬王を呼び出し続けさせられたが、一度も犬王を呼び出す事ができず、繰り返される挫折に心が折れた私が意識を支配する前の浜路姫は父を避け、一人閉じ籠るようになった。


 はっきり言って、親が期待し過ぎて、それに応えきれず鬱になった。そんな感じじゃない。だから、食事も父親たちと一緒に食べたくなかった訳だ。

 しかし、浜路姫の事以上に引っかかるものがある。


「ちょっと、待って。

 佐助はそれまで私が犬王を呼び出せなかった事を知ってたんだよね?

 佐助が私に教えた、本王寺で犬王の剣を使って明地の包囲網を突破する案って、成功しない可能性が高かったんじゃないの?」


 緋村の話を聞き終えた後、佐助に大きな疑問をぶつけた。


「そ、そ、そんな事はありませんよ」

「なんでどもるのよ」

「閉じ籠っていた頃より、りなさんは元気になられていたので、きっと使える。

 そして、いざと言う時こそ、力が覚醒する。

 そう考えていたからですよ」

「信じれそうな、信じられなさそうな事を言うわね」

「本当ですよ」


 佐助のその言葉を信じていいのかどうか、私には分からなかった。

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