諸国漫遊の旅に
「じゃあさあ、りなさんたちはどこに行くとか言う目的は無いって事でいい?」
「まあ、特にいつまでにどこにって事は決めていない」
私の返事に玉さんたち三人が頷き合っている。
「緋村さんだったっけ」
「だからぁ。玉さん、あんなカッコいい人の名前さくっと憶えなきゃ」
「あの二人、かなりの強者じゃない。
そこを見込んで、お願いがあるの」
「何?」
強者が必要なお願いと言うだけで、嫌な予感しかしない。
「実はさあ。ある人をこの地から逃がして、ある場所に送り届けて欲しいの。
そのために、町の様子を確認しに来ていたところだったの」
「誰を?
どこに?」
「ある地方の豪商の娘?」
「なんで疑問形?」
「ちょっと訳ありでね。
しかも目的地の詳しい事は本人たちに聞いて欲しいんだけど、猿飼の領国だから遠くて、たどり着くまでかなり日数かかるだろうし、女の子だけに心配じゃない。」
「猿飼?
四公との戦いで敗れた?
そこって、今、戦場になってるんじゃないの?」
「戦はさっさと終わっているので、その心配はないんだけど」
「ちょっと、考えさせてくれないかなぁ」
「分かった。
あ、一つ言っておくけど、お金の心配は無用だからね」
お金の問題はともかく、行先を猿飼の地にすると言う事なので、緋村たちの考えを聞かなければ、私一人で決められない。
「と言う訳で、女の子を猿飼の地に連れて行ってくれないかって頼まれてるんだけど」
「行先として、どこにと言う当てもないので、りなさんのお考えに従いますけど」
「りなさんの命は絶対ですので、私もりなさんのお考えにしたがいます」
「猿飼の領国って、どれくらい離れてるのかなぁ」
「そうですね。
寄り道もせずに歩いて行ったとして、ふた月くらいでしょうか」
「うーん、猿飼と関りが無い訳じゃないし、なら行ってみますか」
と言う訳で、玉さんたちに頼まれた猿飼の領国にある豪商の娘を連れて行く事になったのでした。
その少女はこれまた色白の美形で髪の長い 松と言う私と同い年の子だった。
「なんだか、諸国漫遊の旅気分だねぇ。
助さん、格さんまいりましょうか」
「それだれですか?」
「ああ、佐助。例の作戦はうまく行ったのかな?」
「もちろんです。
すでに姫はお亡くなりになりました」
私的にはこれで追手が来なくなると言う点ではいい事なのだけれど、自分が死んだことになると言うのはなんだかなぁなところだった。