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三人の少女

 三人の少女たちがあの旅籠に入って行って飛び出してくるのに、それほど時間は必要ではなかった。


「なんなの、あなたたち」

「自分たちから泊まりにきたんだろうが」

「勝手に取りやめるっつうんなら、今日の宿泊の代金を置いて行ってもらおうじゃねぇか」

「何を訳の分からない事を言っているのよ。

 何も食べていないどころか部屋にも入っていないのに、そんなお金を払う訳ないでしょ」

「代金払うんが嫌なら、泊っていけ」


 そう言いながら、店の男が髪の長い少女の腕を掴んだ瞬間、横にいた一人の少女の掌が男の顎の下から天に向かって突き上げた。

 男は首を直角に向けて、白目を剥いて倒れ込んだ。


「てめえら、何しやがんだ!」


 緋村たちに応援を指示しようかと思った時、何人もの役人らしき者たちが姿を現わした。


「お前たち、この町を騒がしているらしいな」


 役人たちは手にしている長い棒の先を少女たちに向けて、取り囲んだ。

 その木の棒は刃こそ付いてはいないけど、その長さと硬さは十分な武器である。


「あんた誰?」


 役人たちにも少女は怯んだ様子を見せていない。


「お役人様、こいつらとあそこにいる男たちが私の店に因縁を。

 それにほら、この白目を剥いている店の者はそこの女にやられたんです」

「なにっ!

 こいつらをひっ捕らえろ!」


 役人たちは完全に戦闘モード。少女たちはと言うと、二人の少女が髪の長い少女を庇うかのように前に立った。

 緋村が介入する許可を求めるため、私に目を合わせた。

 私が静かに頷くと、緋村と犬塚は役人たちを片しに行った。

 長い棒を手にしていたとしても、これまた瞬殺だった。


「お、お、お前たち。

 このままで済むと思うなよ!」


 ぼろぼろになった役人たちは捨て台詞を吐いて逃げて行くのがやっとだ。




 そして、その旅籠に泊まるのを止めた三人の少女たちは、この宿場にもう一軒しかない私たちが泊まる旅籠を必然的に宿泊先に選んだ。

 そして、彼女たちは女同士と言う事で、私の部屋に転がり込んできた。

 少女たちの名は、長い髪の少女が玉、二人の少女はそれぞれ金、銀と言った。

 玉さんを囲む金、銀って……。


「ところで、三人は旅の途中って雰囲気でもないんだけど」

「りなさん、鋭いわね」

「いやいや、そんな軽装で何も持たずに旅に出れないでしょ」

「緋村だっけ?」

「玉さん、だっけはないですよぅ。 

 あんなカッコいい男、一度見たら名前も忘れないわよ。

 ねぇ、銀」

「そうそう。あの人、りなさんとどんな関係?」

「いやいや、今はそんな話じゃなくて、どうして宿に泊まることになったのかってことですよ」

「だからぁ。強引に宿に連れ込もうとするから」

「その言い方、何かちょっといやらしいんですけど」


 玉さんは私の言葉に気をとめる事もなく、言葉を続けた。


「本当にあの旅籠は酷いのか自分の目で確かめたかったんだよね。

 そしたら、言った通りって感じで、挙句は暴力的だし、役人まで出て来て。

 その役人をあなたの連れたちは力で追っ払うんだもの。

 ちょっと話をしてみたいなって」

「私はどうせなら、緋村さんとかとお近づきになりたいかな」

「それは私もぉ。

 あ、犬塚さんでもいいんだけどぅ」

「はぁ、そうでしたか」


 なんだかよく分からない三人組と私は一夜を明かす事になったのでした。

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