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あかね参戦

 外に飛び出した犬江たちが大猿相手に大技を繰り出している様子を横目に見ながら、俺を取り囲む伊香の里の忍びたちの動きに全神経を集中させる。

 俺を取り囲む忍びたちのさらに外では八犬士たちと忍びたちの戦いが繰り広げられている。

 そして、俺の視線の先では姫と佐助が刃を激しく交えている。

 とりあえず一人ずつ斬っていくしかない。

 諸刃の剣を振りかざし、目の前の敵を斬っていく。

 一人、二人、三人。

 そんな時だった。


「緋村、浜路姫。

 そこまでだ」


 声がした方向に目を向けると、松姫の首筋に刃が突きつけられていた。


「止めて!」


 その横で声を上げたのは梓だ。

 梓には刃は向けられていなければ、取り押さえようとする者の姿も辺りには見えない。

 伊香の里は葉芝秀吉と組んでおり、秀吉の義妹である梓には手出しする気はないらしい。


「動けばこの女の……」


 松姫の首筋に刃を突きつけていた男はそのまま瞼を閉じて崩れ落ちた。

 梓が眠らせたのだ。


「でかした。梓!」

「緋村様に刃を向けるな!」


 次に梓がそう叫んだ時、俺を取り囲んでいた忍びたちの多くも、さっきの忍びと同様に崩れ落ちた。

 敵と識別できれば、梓の力でその者たちを眠りにつかす事ができる。そう言うことだ。

 が、俺を取り囲んでいた者たちの内、長老を始めとした何人かはすでに姿を隠していた。

 そして、一旦梓の術の発動が止まったと認識すると、再び多くの忍びたちがどこからともなく現れた。

 そこには一度姿をくらました長老と佐助の姿もあった。


「梓姫よ。

 倒す相手を間違えておろう。

 我らと共に浜路姫を倒すのじゃ。

 それこそが猿族の悲願、兄の大猿日吉の願いであったはず」


 長老が言った。


「私は猿族の悲願などどうでもよい。

 義兄など知らぬわ。

 私は緋村様を害そうとする奴らは許さない」


 梓が言った。梓を信じる俺を失いたくない。その思い、俺は確かに受け取った。

 諸刃の剣を握る手に力がこもった。

 目の前の忍びたちを一気に切り裂くと、その先に姫の姿があった。

 姫はと言うと、佐助とまだ刃を交えている。

 大猿の事も気になるが、この忍びとの決着を付けなければ大猿を相手にする余裕は無い。

 そんな時だった。新たな忍びたちが現れた。


「浜路姫様。

 遅れて申し訳ありません。

 こやつら忍びの者は我ら忍びの者にて、相手させていただきます。

 姫様はあの大猿を倒してください」


 その声の主はあかねだった。

 封魔の里が来たらしい。

 あかねはそう言い終えると、佐助に襲い掛かった。

 あかねの第一撃をかわした佐助は、姫を狙うのを諦めて、あかねに襲い掛かった。

 佐助の刀はじき返すとあかねはそのまま佐助に刀を振り下ろした。


「緋村。

 大猿を相手にするよ」


 あかねと佐助の戦いは互角。つまり、あかねが必ず負けると言うものではない。姫はそうふんだらしい。


「はい」


 忍びたちの乱戦の中、刃にふれる伊香者を斬り倒しながら、俺達は外に出た。


「全然効かないの?」


 八犬士たちに姫がたずねた。


「あの大猿を包む体毛は炎も雷も風も通じません」

「刀とかは?」

「風の術でも斬れませんので、刀も通さないかと」


 犬村が言った。


「うーん。

 時間が無いし」


 姫はそう言うと腕組みをして、しばらく目を閉じていたが、目を見開くと、突然俺たちに指示を出した。


「みんな、槍を貸して」


 近くでなす術を失っている猿飼の兵たちに姫が言った。

 槍を持つ者たちが姫の前に駆け寄り、槍を置いて行き始めると、山のように槍が積みあがった。

 姫は何か策を考えたらしいが、大猿を槍で倒せるのか?

 俺の素朴な疑問だ。

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