表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/156

トランプとフェイク

「いいですかい、客人。

 これは”とらんぷ”と言う異国の札でねぇ。

 “ぽぉおかぁ”と言う賭博では五枚の札で役と言うものを作るんですよ」


 私が選んだ旅籠はやはり真っ当な宿ではなく、夜な夜な賭博が催される危ない宿だった。

 それも、丁半賭博や花札ではなくトランプのポーカーと言う。


「あ、そこは知ってるので。

 ワンペアとか、フラッシュとかね」

「おや、驚きましたねぇ。

 このとらんぷと言う異国の札はまだそれほど広まっちゃいないはずだと言うのに、すでにご存じだったとは。

 客人、見かけによらず賭博に造詣が深そうだねぇ。

 この宿に自ら泊まられたのも、もしやこれが目的で?」

「そうよ。よく分かったわね」


 こんな店と思わず選んだと言いたくないし、話を合わせておこうと私はそう言った。


「では、配りますよ」


 そう言ってポーカーが始まった。しかも、お金をかけた本当の博打。

 少し負けたら、それで終わりにしよう。そう思っていたのだけれど、なぜだか勝ち負けが微妙なバランスで、少しずつお金が増えて行く感じ。

 止めるに止められないまま続けている内、緋村がしびれを切らした。


「りなさん、もうその辺で」

「そうですね」

「おっと、客人。

 勝ち逃げですかい。

 それはいけませんねぇ。

 どうです、全額賭けての一発勝負しませんか?」


 今にも帰りだしそうな私たちに場の親が言った。

 もめ事も嫌だし、ここでの全額を賭けても大したことはない。そう考えた私はその勝負を受けて立つことにした。


「では、全額を賭けての最後の勝負と言う事で」


 場の親はにんまりと微笑んだ後、カードを切り始めた。


 配られるカード。

 エースのペアとクイーンのペア。そして、もう一枚はスペードの5。

 5のカードを捨て、新たに手に入れたのはハートのエース。

 フルハウス。勝った。そう私は確信した。


「では」


 一発勝負。カード1枚ずつの駆け引きは無い。


「フルハウス」


 前のテーブルの上に、5枚のカードを並べる。

 どうよ。そんな顔で親に目を向ける。

 親の前には6のワンペアとクローバーのキングとダイヤの2の4枚。

 残りの1枚のカードを手に、親の口角はあがり不敵な笑みを浮かべている。

 どう考えても、このカードでフルハウスに勝てる役は無い。


「客人、悪いね。

 俺の勝ちだ」

「なんで、そうなるのかなぁ?

 その1枚が何だって、私のフルハウスに勝てる役はできないでしょ」

「これが何か知っているかね?」


 そう言いながら、親が手にしていた1枚のカードをひっくり返して、私たちにそのカードを見せた。


「ジョーカーでしょ。さっきまで見なかったから、入っていたとは知らなかったけど、それでも私の役には勝てないはずよ」

「じょうかぁ?

 これはとらんぷと言う札だよ」

「いや、トランプはこのカード自身で、それはジョーカー。

 でもまあ、呼び方はどうでもいいわ。

 どうして、それで私に勝てるのよ?」

「ふぇいくだ!」

「何の事?」

「お前さん、この札の遊び方を知っていると言っていたが、ふぇいくは知らないのか?

 この札を持っていると、ふぇいくだと宣言できるんだよ。

 ふぇいく宣言されると相手の手は全てが嘘となる。つまり、あんたの役は嘘だと言う事になり、俺のわんぺあが勝ちになる」

「どっかの国の大統領かよ!

 そんなルール有っていい訳ないでしょ」

「あるものは仕方ないだろ。

 そもそもとらんぷと言うこの札は、他の札よりも力があるんだ。

 そんな力のあるやつが出てくれば、黒も白になるもんなのさ。

 それがこの世ってもんだろ?

 えっ、お嬢ちゃんよ」

「力があれば何でも通るなんて、いい訳無いじゃない。

 他の札に代わって、お仕置きよぅ!」


 私がそう言ったので、緋村も佐助も戦闘モードに入り、ここで乱闘? と思った時だった。


「ここに敵国の女間者がいると聞いて来た!」


 扉を開けて、賭博の場に入って来たのは役人たちだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ