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動乱の企て

 チ、チ、チ、チチチ。

 鳥のさえずりと、風に揺らめく笹の葉がこすれ合うざわめき。緑広がる里の風景が、開け放された戸の向こうに広がっていた。


「すると、浜路姫様は八犬士を揃えられたのですね」

「うむ。

 その八人目の姿を見てはおらぬようだが、犬王の剣から八犬士の力を呼び覚ます宝玉は全て無くなっているのは確かだ。

 時は今じゃ。例の作戦を始めるとしようぞ」

「ですが、申世界の兵はいかがいたしますか?」

「もはやあてにはできまい。

 大猿勇多は討たれ、申世界の民は浜路姫様を慕い、三猿の若君に至っては浜路姫様の忠犬がごとき懐きようというではないか。

 しかも、猿族の切り札であった知恵者猫も葬られたとなってはな」

「そう言えば、勇多様のご最期は、岩をも砕くと言われる鴆毒ちんどくによるものとうかがいました。

 なにゆえ、勇多様が鴆毒で亡くなられたのでしょうか?」

「その理由に関しては口を閉ざしているようだが、勇多は浜路姫様たちを幽閉するなど、それ以前より我らを裏切っておるゆえ、誅殺したのかも知れぬ。

 いや、それにそもそも勇多の事を恨んでおったかも知れぬしなぁ」

「勇多裏切りの証拠を集めるために送り込んだ者たちも、鴆毒で葬られたのではございませぬか。

 それに関してはなんと?」

「鴆毒を使った件に関しては、全て口をつぐんでおるようじゃ」

「勇多をかばうような素振りを見せたかと思うと、勇多を誅殺ですか。

 全くもって、考えが読めませぬなぁ。

 もしや、我らに敵意を抱いておられると言うような事は?」

「浜路姫様に危うく葬られそうになった知恵者猫を一度は助けておるしなぁ。

 我らに敵意を抱いていると言う事はあるまい」

「さようですか。

 ところで、封魔の里が怪しげな動きをしているようです。

 江華の里を葬ったのはよかったのですが、その背後に我らがいるのではと各地の忍びどもが騒ぎ始めております」

「しばらくは大人しくしておるかのう」

「話しは変わりまするが、溝小を失ってしまいましたが、代わりの者は?」

「明地の家中を意のままに動かしにくくなったと言うのは確かだが、あの者も私利私欲に走っておったゆえ、切るには頃合いであったであろう。

 確かに猿飼を煽り、明地の軍勢を南北に分散させる事は叶わぬかも知れぬが、まあ良いじゃろう。

 もはや明地にも滅んでもらうだけなんじゃから、溝小の代わりなど不要であろう。

 あとは諸侯で潰し合ってくれればな」

「承知いたしました」

「では、植杉をあの世に送ってやってくれぬか」

「承知いたしました」


 そう言うと男は部屋を退出していった。

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