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八犬士探しの旅に

 この国の服は私の元の世界の和服を激しく質素にした感じ。熊を斬ろうと駆け出した時、その走りにくさに気づいた私は服を新たに作ってもらった。私の元の世界の服装だとあまりにも奇抜過ぎるので、飛鳥時代の女性たちが纏っていたスカートに似た裳を参考に私がデザインしたものだ。

 佐助が家事をそつなくこなす能力がある事を知ったため、その服を布から佐助に作ってもらった。


「いやあ、佐助ってすごいね。

 本当、歩きやすいよ」


 佐助の里を出て行く当てもない旅の道、率直な感想だ。


「で、姫様、じゃなかった、りなさん、これからどちらに?」


「姫様」と自分たちから自分たちの身分を明かしてどうする!

と言う事で、私を呼ぶのは”りな”と言う仮初の名にしてもらった。

 この名前は、私の元の世界でぶっ飛んだ会話が得意な抜けたAI女子高生”○○○”から借用したものだ。元の世界で私はぶっ飛んじゃいなかったけど、この世界では○○○みたいな存在だと私が思ったからである。


「そうねぇ。長老は八犬士と出会えば分かるとか言ってたけど、確かに何かを感じる方向ってのはあるんだよね。

 でも、まずは今日の旅籠じゃない?」

「そうですね。そろそろ泊まる場所を決めますか」


 目の前に広がる小さな宿場町の光景を見つめながら、私たちは立ち止まった。

 威勢のいい客引きが旅人を自分の店に誘っている旅籠が一軒。


「この辺の人たちは私が本王寺の近くで見た人たちと違って、小奇麗だし旅の人も多いのね」

「街道沿いの町ですし、この辺りは葉柴の領地ですからね。

 あの者は領民を大切にしていますし」

「そうなんだぁ。さすが佐助はなんでも知ってるんだね。

 食べ物が無くて困窮している人に暴言吐くような人が上じゃあ、反乱も起きちゃうよねぇ」

「りなさん、明地の謀反に納得されてるんですか?」

「うーん。微妙?

 だって、これじゃあ転生の特典なしで、なんだか罰ゲームなんだもん」


と、不満を漏らした時、旅人たちを次々と引き入れている旅籠と道を挟んだ斜め向かいにある寂れた店に目が留まった。


「あれも旅籠だよね?」

「そうみたいですね。

 ですが、かなり寂れていて、あの店はどうかと思います」

「緋村、あなたは知らないの?

 こう言うところはね、悪い役人と組んだ悪い商人がああやって強引な客引きをして、暴利を貪っているものなのよ。きっと、葉芝の役人たちも悪い事をしていて、真っ当な商いをしている旅籠の人たちが食うや食わずの生活に追い込まれているものなのよ」

「そうなんですか?

 どうしてそう思うのですか?」

「それはね、佐助。毎日水戸○門見てたからね」

「りなさんは本当にぶっ飛んでますね。

 相変わらず、意味不明な事を話されます」

「ともかく、行くよ。

 あの寂れた旅籠に。

 きっと、心優しい人たちが経営しているに違いないわ」


 そう言って、私たちは少し寂れた感のある旅籠の暖簾をくぐった。

 手入れが行き届いているとは言えない少し薄汚れた建物の中。

 そして、正面に座るこの宿の主人っぽい男の頬には刀傷。そして、その眼光は鋭く、一般人っぽくなかった。


「客引きもしてねぇのに、自分からうちに来るとは珍しい客人だねぇ。

 まあ、いいや。

 上がりな」


 男の言葉に佐助が言った。


「さすが、りなさん。

 見事に外しましたね」

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