帰宅、姉
一年近く何してたかっていうのは無しで。
本日の外出。その目的はほぼ達成され、その他の成果も手に入り結果オーライ……望み通りの形では無かったが、アルバイト先には何とかありつけた。運の良い事に友達と再会して連絡先も交換した。概ね順調と言っても過言では無かろう。
左右を貯水池と線路、そしてそれらへの侵入を阻む柵に囲まれた線路沿いの殺風景な道。私鉄が建てたマンションで日照さえ妨げられている。日中でも人通りの少ない不気味な其処に在っても、彼は鼻歌混じりに帰れる位に気が楽になっていた。
道を行く事暫くすると住宅街の奥に建つ古いクリーム色に塗られた建物が見えてくる。駐車場を突っ切って、外壁に纏わり付く赤茶色に錆びついている階段をのろのろ上がった。通路に規則正しく並ぶ扉に振られた番号から目当てのものを探して一つずつ、背中に吹き付ける冷たい風に尻を叩かれながら確認する。
己が住処の二〇八号室に帰って来た要は部屋を出る際に消した筈の明かりが点けられている事に気付いた。どうやら先客が居る様だ。年月の経過に抗えず床板は軋みささくれ立ち、居間と風呂場・便所を繋ぐ扉のノブは本来の取り付け位置からずれにずれ、時にその役割を放棄する。蛇口から湯を出そうとしても冷水が肌を打つ事など日常茶飯事のこのおんぼろ部屋に態々愚弟の面倒を見に来る奇特な人物など一人しかいない。
「鈴乃さん」
敷物の上、実家から運び込まれたお古の炬燵(炬燵布団は貰えなかったので、年中リビングテーブルとして使われている)に座って何か分厚い本を捲っていた少女が、俯いていた顔を上げて要を見上げる。
「お帰り。帰って来ないから上がっちゃった」
少年の顔を認識するとすぐに柔らかい笑みを浮かべた彼女の名は『神崎 鈴乃』。現在別居中の、神崎要の姉にあたる人物だった。
「今日は鈴乃さんも始業式でしたっけ?」
上着をハンガーに掛けながら彼は鈴乃に聞く。かなりの頻度で此処へやって来る姉との会話を、部屋に閉じ籠った生活で手に入る余りにも少ない話題で持たせられる自信は無かった。だからこそ分かり切った事でも質問として口に出すしかない。
「うん。午前で終わったからお昼済ませた後は本屋さん行って、で一旦家に帰った後にこっちに戻って来た感じ」
「そうですか。本は何を買ったんで?」
「小説。ハードカバーのやつって高いけど買いたくなるもんだよねぇ」
「そんなもんですか。僕は文庫本の方が好きですけど」
「………ふーん、そう」
上着を掛け終わる。備え付けのクローゼットにハンガーを仕舞う。クローゼットを閉じる。鞄はその辺に放ってしまう。緩慢に行われた一連の動作が終わるまでに、空っぽの頭の中にくたりと浮かんで来た話題はたちまち使い尽くされてしまった。同時に一つのミスに気付く。しまった。要は視線をふらふら揺れる明かりの紐や、小汚い錆まみれのカーテンレールに走らせながら話の種を、浅い脳みその皺から穿り出そうと必死で試みた。
「そうだ、始業式は、どんな―」
「カナメ」
辛うじて絞り出した言葉が搔き消される。肩肘を突いて、少年の顔を見上げる姉の帯びる空気は、穏やかさが消え失せていった。
「敬語なんだね。ヤメテって言ったの覚えてないかな」
「ご、御免なさい」
「お正月とか、そういう時に帰って来るでしょ。お母さんに見られたりしたらどうするのかな。あの女カナメの事は嫌いだけど、世間体は気にするからね」
もうお互い、誰それの癖が治らないって親に泣きつく時期じゃないでしょう。鈴乃は軽く溜息を吐き、畳んだ小説の表紙を指でコツコツと叩く。実際、『母』のご機嫌一つで神崎要の生活への締め上げが厳しくなった例は枚挙に暇がなく、そうなるのは大抵母が彼を見咎めた時よりも、彼の態度に姉が腹を立てた時の場合が大抵なのだ。
神崎要は姉に対し敬語を使う癖が身に付いていた。卑屈な悪癖だが、これは自分よりも優秀で、常に他者が彼を評価する為の比較対象・理想の物差しとなる存在への劣等感のみから引き起こされたものであった。度々再発する治らないこのクセは何時も彼女を不機嫌にするのだ。未だ機嫌が悪い程度の内に止めておかなければ。
「嫌なんだからね、それ。家族じゃん」
いいえ、僕の中では僕と貴女は他人です。
喉の奥を突くその一言を必死で抑え込む。これを言ってしまえば終わりだ。何が起こるか分からない。次は無いのだ。
実を言うと二人に血縁上の繋がりは無い。鈴乃は愛した男を亡くした女の、要は愛した女を亡くした男の連れ子だった。男が女の家に二度目の婿入りをした時、共に連れられて来た子供。陳腐な創作物の様な話だが、これが彼の現実だった。
父は遠方で働く身ながらも持ち得る時間を最大限に活用して彼に惜しみなく愛情を注いだし、要自身も齢九つにして初めて出来たきょうだいとも仲良くしていた。新しい母親も彼を初めの内は良く可愛がった。
しかし、どうにも再婚から暫く経つと母の態度が変わっていった。要の容姿は母に似たのだが、その容姿が父の昔の女、つまり要の本来の母を思い起こさせる事、そして家に移り住んできた母方の祖母と、伯父が彼女に何か吹き込んだのが原因だった。要は少しずつ家庭内で軽んじられる様になり、相談すべき相手、つまり父は忙しさからますます会う機会が無くなった。
そうして、何時しか子供の比べっこが始まった。定期テスト、運動会、通知表。事あるごとに母は鈴乃と彼の点数を比べきつい言葉で詰った。真夜中に子供を揺すり起こして、冷たい床の上に立たせた前で同じ様な事を何度も言う母の姿は要の脳裏に深く刻み込まれている。そういう時に決まって傍らでテレビでも見ている祖母が、
「あんたあの子の子供だろう。何でこんなに出来ないのさ。案外、元の女房が他所で作った男の餓鬼だったりするんじゃないのか」
と合の手を入れるのだった。母方の祖母は要の父の事は十分好いていたが、父を遺して先に逝った実の母の事は嫌い抜いていたし、その子供でもある要の事は貰い物の綺麗な花の、裏にくっついた芋虫程度にしか思っていなかった。
そんな事が繰り返し起こると要本人も追い詰められてくる。父との連絡は取れない。相談できる人間はいない。そんな中でも彼ににこやかに接してくるのが姉だった。頼みもしないのに隣に並んで、学校に行く時も何時も一緒。そういう時に彼は自分が、物差しと一緒に並んでいる様な気がしたのだった。比較される事に対する不快感と、新しい家族から愛されもしない悲しみが堪え切れない程度の物になってくると、感情を爆発させずに、少しずつ負の感情を漏出する形で要は正気を保とうとした。要がある時から突然敬語を用い始めた事、その意味を理解した彼女はある日、自室に押し掛けた鈴乃は困惑と失望が綯い交ぜになったその顔のまま弟を詰問した。
「何時からさん付けで呼び合う様な仲になったの」
「何か気に障る様な事があった?あるなら言ってよ。直すよ私」
「私の事が嫌いなの?……私達、姉弟でしょう。悲しいこと言わないで」
いいえ。貴女は悪くありません。僕が勝手に、一方的にそうしたのです。引き合いに出される貴女を僕が憎みつつある事。貴女を妬ましく思う事。それを当の僕自身が認めたくなかったのです。こうまでして比べられる対象が一番近くにいて、僕が背を曲げ目を逸らす程に僕に優しく触れてくれる事をも認めたくなかった。貴女がもっと手の届かぬ所にいたならば、どれ程無感動に母の言葉を受け入れられた事か。そう願うが故に貴女を僕から遠ざけたかった。だから敬語を使って、慇懃に接してみたのです。ご不満でしたか。そうならば嫌ってくれて構いません。もうおかしくなりそうです。
双肩をむんずと掴まれ、鼻先が触れ合う程に顔を近づけ答えを求める姉にそんな事を上手に言える程当時の要は話し上手では無かった。訳を問われども語らず、無理矢理遠ざければ、もう二度と仲良し姉弟に戻りはすまい。そう考えた彼はただ不愛想に拒絶の空気を帯びた言葉を彼女に放ったのだ。その途端肩を握った両の手は滑るように頸に掛けられ、徐々に力が込められた。私は理由を聞いているの。荒い呼吸とは正反対に落ち着き冷え切った声に恐れをなし初めに言い損ねた事を締まる喉から絞り出せば、姉は理由を問うた時の冷たさを保った声色で言った。
「これから二度と私に敬称を付けないで。謙った物言いも許さないし、遠ざけようなんて以ての外。誰のお腹から出て来たとしても、誰が君を貶しても、私達は姉弟なんだからね。姉弟っていうのはずっと繋がっているモノなんだから」
拒絶は家族としての私達の在り方への冒涜なのだぞ。とでも言うように頸に掛けた手に力を込めながら彼女は瞬きすらせずに言葉を紡ぐ。要が恐怖と息苦しさに身を捩る様子など気にもせずに、未だ本物の『仲良し姉弟』だった頃、弟の不手際を咎め諭していた頃の様に言い聞かせた。
「でもね、如何に親しかろうと君の悪い癖は私が矯正しなければならないよね。敬語敬称は特に不愉快。今回はお互いの認識不足って事にしといたげる。気づけなかった私にも問題があるからね」
「でも次にやったら、私酷い事しちゃうかも」
その時の冷え切った一言を思い出すと、口が裂けても言えない。
「た、確かに変だよね。姉さんと僕の仲なのに」
「言われるまで気付かないのは何時もの事だよね。いい加減に直して欲しいな」
要が謝罪の言葉を口にすれば、一旦は鈴乃の機嫌も直る。彼を射抜いた眼差しに温度が戻り、声にも柔らかさが戻ってきた。
「そうやって壁を設けない方がお互いにいい気分でお話しできるでしょう。始業式は始業式だったよ。何も変わった事は無い、つまらない恒例行事。じゃあ、一先ず口調も矯正出来た所で」
鈴乃は本に栞を挟み、畳んだ。一連の動作に合わせてぱた、ぱた、と音が鳴った。同時に話題も切り替わった。
「バイト見つかった?今月中に見つけときなさいってあの人言ってたでしょ。そんで先ず月二万ずつ徴収するって」
そもそもこの日、完全なる落伍者たる神崎要がビビりにビビりながら外をほっつき歩いていたのはアルバイト探しの為であるが、その原因は例の母親が要約すれば「お前はもう駄目だから、今からアルバイトでもして金を送って少しでも機嫌を取ってみろ」と仰せられたからなのである。まあ唯でさえトラウマのスイッチが多過ぎる上に体力面もボロボロの彼を使おうとするお人好しは居なかったのだが。どうにも無茶振りをして一応の息子をいびる傾向が母にはある。その事は大体予想できたであろう姉は、一つの策を彼に持ち掛けた。
「無理だった?見つからなかったよね。そこで良い事思いついたんだ。私ね、伯父さんからよくお小遣い貰うんだけど、正直使わないんだよね。どうかな。毎月二万円位なら払ってあげられるんだけど、ねぇ、そうしたら君が苦しい思いなんかしなくて済むんじゃない?私に君の安全をあの人から買わせて欲しいんだ」
床の軋むキイという音。長話だろうかと向かい側に座った彼に、「今度こそ守ってあげる」とでも言いたげに、彼女は問い、返答を促した。要は一瞬自身がリスクを負わぬその手に興味を示したが、すぐにこう返した。
「いいや、僕もそろそろ母さんたちの言う通り普通に戻る必要があると思うんだ。もう日中は大分真面で居られるし、やれる事はやった方が良いよ」
根拠のない自信に背中を押された所でお前の前に伸びるのは荊の道。それをお前は裸足で進んでいかなければならない。分かっているのか?私はそんなお前に丈夫な靴を買ってやろうと言うのだ。なぜ拒む?戸惑いと軽い非難の視線を浴びつつも、言葉は紡がれる。
「今日の時点では未だ決定的じゃあないけど、丁度バイトを紹介してもらったんだ。それを確認してからでも遅くは無いんじゃないかなって。何時までも頼り切りでは居られないからね」
ハッキリとそう返された姉はすぐにその答えに疑問を持った。紹介された?極度の人嫌いになりつつある要が誰に?そもそも会話が成立するのか?答えは容易に導き出せる。今自分が会話をしている事こそが根拠の一つ足り得る。
「ソレを誰に紹介されたの?」
弟は他者とのコミュニケーションを取る事にに億劫になったとは言え親密な人間とならばほぼ問題なく会話が出来る。多少の怪しい話を見知らぬ者から持ち掛けられた所でそれには乗らないだろうが、親切そうに知人から話し掛けられればどうだろうか。そもそも本人の交友範囲は広いものでは無く、外出先で話すような人間と言えば嘗ての友人程度ではないか。
「友達だけど」
「それは誰?風見さん?武崎君?」
「……あず」
「東屋雅美?」
口から出かけた一言に被せる様に聞けば沈黙が返って来た。間違いない。所謂腐れ縁だった武崎圭祐や友人と呼べた風見蓮と比較しても特段要と心身の距離を近く置いていたあの長身の女生徒。姉の隣の置物とは違う在り方を図らずとも彼に与えた女。束縛から逃れる術を吹き込んだ喋る毒蛇。
「親身になってに話を聞いてくれて、僕でも出来そうだからって教えてくれたんだ。こんなチャンス中々無いと思う。折角だからやってみたいんだ」
「そっか……」
帰宅してからも弟は背を曲げ、藍でも塗ったかのような隈を湛えた眼元の穴に収まった眼球をぐるぐる動かして周囲の様子を伺い続けていたが、何処か得るべき物を得て落ち着きを取り戻しつつある様な雰囲気を放っていた。違和感の正体はこれか。今まで通り少なくとも現時点では甘言に傾きはすまい。だが、何をさせようが嘗てに比べ腑抜けも腑抜けに落ちぶれたこの子がいきなり世間に出た所で一月と持ちはしなかろう。再びその意思が揺らいだ時に揺さぶりを掛ければ良い。目の前に正座して視線を逸らしながらぶつぶつと語る彼の背後に、身を屈めて胸元に腕を回し身を寄せ、何時かの様に計算高そうな笑みを浮かべながら何かを吹き込む奴の姿を幻視しつつ、僅かな苛立ちを抑えつつも鈴乃はそう考えた。即ち、現状打つ手は無い。取り敢えずは経過観察だと判断する。
「じゃあやってみなよ。何でも挑戦だからね。でも無理はしない様に、何より一番君が大事なんだから。……そうそう、今日は肉じゃが作って来たから。明日鍋取りに行くから洗っといてね」
「有り難う、やってみるよ。あと夕飯も。いっつも迷惑掛けて」
「ここ台所も無いんだし、まともに食事も用意できないでしょう。気にしないで良いんだから、少しは素直に頼ってよ。ほら、座ってないで風呂場洗いに行きなよ。どーせ未だじゃないの?」
ほら、と強く促され慌て気味に立ち上がり、風呂場へドタドタと小走りで向かった要の様子を視線で追った後、鈴乃は傍らに鞄と共に置いていたビニール袋から古い小さな鍋を取り出す。それを机に置き、添えた手で滑らかな表面を撫でた。
「そう。……ずっと頼って欲しい」
誰にも唾を付けられない、惨めな君で居て欲しい。そうすれば嘗ての最も近い二人の間柄は取り戻され、永遠の物となる。目を塞ぐ彼と手を引く彼女。姉弟だけの世界。誰に褒められようが嬉しくもない、どうでもいい。神崎要の心だけが欲しい。彼の殻に入り込んで穴を塞いでしまいたい。しかしそれも暫くは無理だろう。折角膠で固め直した殻を、破って中身ごと吞み込もうとする奴がいる。
風呂場から漏れる水音をバックグラウンドに、向かい側の弟の鞄をそっと引き寄せ中身を漁る。中から安っぽいスマートフォンを引っ張り出し手慣れた手付きでロックを外し、メッセージアプリを開いた。
『テステス。これから宜しくな』
間の抜けたメッセージが届いている。東屋だ。トークルームを開くと入力モードを携帯式入力からQWERTYボードタイプへと切り替えてメッセージを打ち込んだ。
『家庭の問題に土足で踏み込むヒトは良い友人として扱いたくないわ。貴女が何か吹き込む度に彼を説得するのは骨が折れるの。放っておいて欲しいのだけれど』
すぐに既読が付き、
『あんたがどれだけアイツの理解者ぶろうが無駄なこった。もう痕は付け終わってる。これからはこっちの好きにやらせてもらうからそっちもせいぜい頑張りな』
と返信。
鈴野は予想通りの返答に舌打ちし、送信内容を削除してからスマートフォンを鞄に突っ込んだ。まともに取り合わずに相手をせせら笑う、要が見ていない時にだけ見せるある種の悪辣な素顔が垣間見えた気がして、行き場の無い苛つきを押さえつけるように手を捏ねた。
「はははは」
自室のベッドの上で壁にもたれかかりながら腹を抑えて東屋雅美は笑う。手にはスマートフォン。要から返信が来たと思ったらあの「世話焼き」で「弟思い」な姉様乃至将来の義姉様が覗き見した挙句手を出すな等と送信してきた上に適当に返事してやれば証拠を消して即退散と来た。意図を図りかねる。オカシイ。あんまりにも無様に見えたのか彼女はやたらと可笑そうに笑い、そしてすぐに表情は冷え切ったモノに変わった。
「やってくれるねえこのクソアマ」
拘りは持ち過ぎると宜しくないが、ある程度のラインは保つべきだ。この遣り取りは記念すべき二人のトークルームの第一声が、邪魔者に遮られたとも解釈できる。以前から神崎要の大体のハジメテは邪魔者に掠め取られてきた。だからこそ残された分は全部自分が貰う積もりで考えていたのにこれでは困る。予定を狂わされた事に対する不快感が込み上げて来る一方で、彼女は同時に次に貰えるとしたらどれが手頃だろうかと再思考を始めてもいた。
〇〇は彼奴に取られた、XXは其奴に取られた。でも………なら手に入れられる筈だ。だって要は良い奴で、同じ良い奴そうな奴には色んな感情をくれるのだから。そうやって本当は悪い連中にハジメテを投げ売りしたのだから、これからはあたしが彼奴の中心になれば全部くれる筈だ。もっとお前の落ち着いた所がみたい。もっとお前の深い所が見たい。一番近くで、独りだけで見たい。本当はどんな奴かなんて知られなきゃオッケーさ。優しくしたげる。良い事したげる。その代わり、お前の全部を貰う。そういう事にする。でもその為にはお前を引き留める奴が邪魔だ。
だから、その為に、
「お前ェの隣からその女、ひっ剥がしてやるよ」
彼女は神崎鈴乃に対する敵意を新たにした。
東屋は策士というより腹の内で考えこねくり回すだけで実際パワー系。支配というより腕の中に収めて他の連中と変わらない下劣な衝動を隠しつつ好意を勝ち取り同時に衝動を抑圧しつつ大事に相手を弄り回す感覚すら楽しみたいと思ってる系。
鈴乃は家族としての関係を隠れ蓑に微かな暴力と外界との繋がりが薄い要の特徴と苦境に漬け込んで束縛し独立的な思考能力を放棄させて(即ち言いなりにする)付かずとも離れない関係を正当化したい系。
他にもいるよ。いつ書くか知らんけど