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第9話

 森の中を一人で歩いていると、まるで別の世界にでも迷い込んでしまったかのような気持ちになった。

 だんだんと私の現実が曖昧になっていくような気がした。

 私は『なにをするためにこんな遠くにある森の中にまでやってきた』のだろう?

 その答えはもうわかっている。

 それはあの日、秋の絵『森秋』を見た、あのときに私の心を、魂を揺さぶった『なにか』を探すためだった。

 それが私が秋の絵のモデルを引き受けたことの代わりに、私に与えられる対価だった。

 私は今もあの日のことを夢に見る。あの日、あのときに、『森秋』という一枚の絵画を見たときに私の人生は今までとはまったく違ったものに変わってしまったのだ。私の人生はあの日を境にして二つにわかれてしまった。前と後ろに。もうあの日より前の時間に生きていた私とは別の私になってしまったかのようだった。(もっといえば、私は一度、あの日、あの場所で跡形もなく消えてしまったのかもしれないと思った。あるいはもしかしたら私はあのとき半分なくなってしまって、今の私はその残り半分しか存在していないのかもしれないと思った)

 秋は『森秋』のような絵画をこれからの人生で何枚も描いていくのだろうか? もしそれができるのだとしたら、……そう考えると私は少しだけ秋のことが怖くなった。

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