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第32話

「人生には、やがて乗り越えなくてはならない大きな悲しみがやってくる。海の波のように、ずっと穏やかなままとはいかないんだ。そのとき、僕は秋のそばにいてあげることはできないかもしれない。もしよかったらそのときは秋のそばにいてあげて欲しい。友達として。姉妹として。あるいは母親として。秋を抱きしめてあげて欲しいんだ。お願いできるかな?」

 楽しい(おもに小さな子供のころの秋のことについて)会話の最後にそんなことを秋のお父さんは言った。

「はい。もちろんです」と自信を持って私は言った。

「どうもありがとう。秋は友達に恵まれているね」本当に優しい声で秋のお父さんは言った。


 森の中にある秋のアトリエで一週間を過ごした。

 秋が描いてくれた私の自画像は本当によく描けていた。その小さな絵画は私の宝物になった。

「よかった。私は自分のことが嫌いなままじゃなくなった。私のことが好きになれた。ありがとう、秋」(秋の描いてくれた自分の絵を見て、泣きながら)

 私がそう言うと秋は恥ずかしそうにしながら、照れくさそうな顔をして笑った。


 空を見ると、そこには鳥が飛んでいた。

 白い小鳥。

 その小鳥を見て私は久しぶりに秋のことを思い出した。


 いつまでも子供のままの秋。なんだか(秋の代表作である)『森秋』の絵の中にいる十五歳の秋のほうがずっと大人っぽくみえる。

 私の部屋には一枚の小さな絵が飾ってある。

 その絵の中にはもう一人の永遠に十六歳のままの私がいる。

 その絵を見ても私の心は、魂は(初めて『森秋』をみたときのように)震えない。

 でも、気に入っている。

 すごく、気に入っているのだ。


 森秋 終わり

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